大相撲:野球賭博 恐喝容疑の元力士、夢破れ転落

2010年6月23日 15時1分

 野球賭博に絡み大関・琴光喜関(34)=佐渡ケ嶽部屋=から約350万円を脅し取ったとして、警視庁が恐喝容疑で逮捕状を取った元力士(38)。引退後は風俗店の経営にかかわり、自ら暴力団組員を名乗るなど、次第に裏社会とかかわるようになっていったという。恐喝容疑が発覚後、母親に「報道されていることは事実と違う」と電話で伝えたまま行方が分からなくなっている。警視庁は元力士の行方を追い、恐喝事件の全容解明を目指す。【伊澤拓也、太田誠一】

 元力士は大阪府出身。父親が約30年前に開いた相撲道場は、相撲界では「ボランティアの名門道場」として知られ、大阪場所中に有名力士が訪問するほどだった。元力士と阿武松(おうのまつ)部屋に所属する弟の現役力士(34)も父の下で相撲を学んだ。1日4時間の厳しい練習で、学生相撲や角界に力士を輩出した。今回の賭博問題で、野球賭博をしていたことを認めた幕内・豪栄道関(24)=境川部屋=もその一人だ。

 元力士は中学生ながら身長は170センチ台後半と体格に恵まれ、卒業後すぐに押尾川部屋(05年3月に閉鎖)に入門した。88年に大阪場所で初土俵を踏み、93年の大阪場所で幕下に昇進。だがその後は伸び悩み、97年5月場所限りで引退した。

 関係者によると、郷里に戻った元力士は実家近くでちゃんこ屋を開業したが経営は軌道に乗らず、間もなく店をたたんだ。その後知人のつてで九州に渡ると01年ごろから、福岡市で風俗店の経営にかかわるなど生活は一変した。髪を金色に染め、博多の街では、自らある指定暴力団の下部組織名を口に出すこともあったという。九州場所の際には、現役の親方と繁華街・中洲のクラブで飲食をともにすることもあった。今回の事件で琴光喜関に口止め料を要求する際にも、暴力団関係者の疑いがある男を連れて交渉していた。

 元力士の母親は取材に「父親に厳しく育てられた。まじめな子だった」と話す。「息子は電話で『報道されていることは事実と違う』と言っていたが、私らには分からない。『時期が来たらちゃんと警察に話す』と言っていた」と声を絞った。

 弟が大学時代に師事した相撲部監督は子供のころから元力士と顔見知り。2年前に学生相撲で審判を務める元力士を見かけ、あいさつしたのが最後という。監督は「何があったかきちんと説明すべきだ。まじめに頑張っている力士たちがかわいそうだ」と力を込めた。

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