宮崎県の口蹄疫(こうていえき)問題は28日、鹿児島県でも移動制限区域が10年ぶりに設定された。豚が全国1位、牛が同2位の飼育数を誇るだけに、関係者の間には「このままでは県の基幹産業が崩壊する」と不安が高まった。
「先手先手で対策を打たないと、食っていけなくなる」
同日午後、県庁であった県口蹄疫緊急防疫対策会議。北野良夫畜産課長は「県内1万5千の農家や牧場のうち既に73%で異常がないことを確認した」と冷静な対応を求めたが、約70人の畜産業者や食肉業者、運輸関係者は「消毒薬が足りない」「制限区域からこっそり家畜を移動させ、売り抜けようとする農家がいる」「県はもっと強い態度で移動禁止を求めるべきだ」と口々に不安を訴えた。ある業者の男性は「問題のえびの市は感染が確認された都農町から70キロも離れている。鹿児島が巻き込まれるのも時間の問題」と危機感を隠さなかった。
一方、移動制限区域の設定へと警戒レベルが上がる中、現場の動きも慌ただしさを増した。
鹿児島県曽於市末吉町のJA選果場では同日、家畜の生産者向けに消毒薬を無料で配ったが、感染力が強い口蹄疫は衣服も感染拡大の原因になりかねない。市やJAの担当者は万一に備え、生産者の車のタイヤに消毒液を吹き掛けたり、車内に乗ってもらったまま消毒薬を手渡したり、万全の策を取った。
家畜市場の競りが中止になるなど、農家は打撃を受けている。同市で子牛を生産する男性(53)は「2頭を市場に出す予定だったが、いつ出荷できるか見えない。今は蓄えでしのぐほかない」と困惑していた。
=2010/04/29付 西日本新聞朝刊=