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「殺人事件被害者数ランキング」から考える、幸せな国作りのあり方

6月22日21時0分配信 Business Media 誠

「殺人事件被害者数ランキング」から考える、幸せな国作りのあり方
殺人事件被害者数(出典:新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン])
 「新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]」というWebサイトが面白い。お暇なときに、閲覧されることをお薦めしたい。

【拡大画像や他の調査結果を含む記事】

 中でも興味深いデータが「殺人事件被害者数ランキング」である。人口動態調査の死因分類の「他殺」という項目を抜き出し、1998年から2007年までの10年間を整理して、都道府県別の他殺率を算出して図表にしているのだ。

 1998年から2007年までの10年間での殺人事件被害者は、全国合わせて6765人。1998年に793人だったものが、2007年には509人に減っている。報道から日々流れる殺人事件のニュースで得ている体感値とは少し違う。日本は、確実に殺人事件による被害者が減少しているのだ。

 その殺人事件被害者数を、人口10万人あたりで算出したのが「他殺率」で、それを47都道府県別にランキングした図表を見ると、殺人事件に巻き込まれやすい上位5県は以下の通り。

1位 大阪府→0.791人
2位 沖縄県→0.771人
3位 香川県→0.741人
4位 福岡県→0.707人
5位 栃木県→0.650人

 全体に西高東低の傾向がある。逆に殺人事件が滅多に起こらない下位の都道府県は、以下の通り。

43位 鳥取県→0.362人
44位 長野県→0.360人
45位 福井県→0.353人
46位 富山県→0.351人
47位 石川県→0.290人

 大阪府の住民は、石川県の住民の約2.7倍他殺される率が高いことになっている。そして、下位の3県を注目していただきたい。北陸3県が、仲良く並んでいるのだ。

●北陸3県はなぜ殺人事件が起こりにくいのか

 北陸3県には、殺人事件が起こりにくい風土があるのだろうか?

 そういう視点で調べてみると、NHK文化放送研究所「現代の県民気質」より抜粋された「都道府県民の信仰」というデータが見つかった。都道府県民がどのような宗教・宗派を信じているか、またその合計値として信仰をもっている人の比率を示したもので、信仰を有している者の全国平均(都道府県の値を人口比で加重平均したもの)は31.2%とある。

 その中で特筆すべきなのは、都道府県別他殺率ランキングで下位を占めていた北陸3県が突出して信仰率が高いことである。全国1位は福井県の58.0%。富山県は49.3%、石川県も43.7%と軒並み高い。ほかに広島県や長崎県の信仰を持っている比率が高いのも特徴的だが、被爆という特殊な体験を経た上での結果であるとも考えられるので、日本の一般的な歴史の中で一番深く信仰が根付いているのが北陸3県と言えるだろう。

 一方、一番信仰が薄い都道府県は沖縄県の7.8%。信仰と他殺率を直接的に結びつける論拠を持ち合わせてはいないが、このデータを比較する限り、突出して信仰の厚い地域では、殺人事件が起こる率が低い。

 民主党政権下で、「GDP(国内総生産)より、GNH(Gross National Happiness=国民総幸福量)を指標に、国作りをしよう」という動きが浮き彫りになってきている。人口も減少する。消費が伸びる予測は難しいから成長戦略は描けない。だから、経済的な指標よりも、国作りを「幸せ」という指標に置き換えて、成長しなくても豊かな社会だと感じる「幸せの知恵」を身につけた国民になろうということである。

 このGNHを測る上で参考になる国が「世界でいちばん急がない国=ブータン」と言われている。中国とインドに挟まれた大ヒマラヤ山脈の南麓にある王国である。その第4代国王がGNHを発案し、国家理念に生かしていることが、今、世界中から注目されているのだ。

 2008年度のGDPランキングが世界158位であるブータンは、農業以外に産業らしいものはない。資本主義に背を向けてきた国である。GDPで見ればブータンは世界最貧国だが、GNHで見ると9割以上の国民が「幸福」だという。

●ブータンより北陸3県に学ぼう

 しかし、その意識を支えているブータンの風土の根底にあるのは、チベット仏教への「信仰」である。その国を参考に、日本は、ポスト資本主義の社会を生きようというのである。

 元ソニー上席常務の天外伺朗氏は著作『GNHへーポスト資本主義の生き方とニッポンー』の中で、「宗教色を一切排除した中で、国民の大多数が深い精神性に目覚めていくことが起きない限り、なかなかGNHが向上するものではない。これは、今の日本に課せられた、とてつもない難問だ」と指摘している。

 宗教の機能は大きく2つあると言われる。「受容と安定機能」と「自立と創造機能」である。今を受け入れて心穏やかに、自分を見つめて明日を力強く歩む。目に見えない「幸せ感」を国家の指標にしたいというなら、「信仰」や「宗教」に頼らない、「受容と安定機能」と「自立と創造機能」をもたらす教育の道を示すべきだと思う。「政教分離」という原則を守りながらもポスト資本主義を歩む覚悟があると言うなら、もっと豊かな国会運営があるのではないだろうか。今の日本のままで、GNHを国作りの指標にするなんて議論は、ちゃんちゃらおかしい。

 2010年現在の日本のブータンは北陸3県である。その風土は議会制民主主義の政治が主導で創ったものでも、資本主義の波に飲まれて経済が優先でつちかわれたものでもない。きっと、顔見知りの人たちが、農作業を共同でやることで知恵を出し合い助け合う、綿々とつながる小さな組織間の信頼が積み重なった結果が、その風土を作り上げたのだと考える。ポスト資本主義の日本の生き方は、遠いブータンより、近くの北陸3県に学ぶべきである。

追記データ

 ちなみに、都道府県他殺率のデータに相似しているものがある。2009年度の「衆議院比例代表:公明党得票率」である。

 他殺率が高い都道府県ほど、公明党得票率が高いのが面白い。得票率全国1位は沖縄県。他殺率で上位にあった大阪府や福岡県も、ベスト10に入っている。そして反対に、47位は富山県であるなど、北陸3県は、予想通り下位を占めている。(中村修治)

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最終更新:6月22日21時0分

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