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社説:ネット選挙解禁 政治を変える突破口に

 遅ればせながら、政治を大きく変える一歩だ。インターネットを利用した選挙運動を解禁するための公職選挙法の今国会改正で与野党が合意した。順調に審議が進めば夏の参院選から実施される見通しだ。

 これまでネット選挙を一切解禁しなかったこと自体、著しい政治の怠慢だった。解禁に賛否両論があった簡易投稿サイト「ツイッター」による運動は「自粛」となったが、さらなる自由化に向け、問題点の整理を急ぐ必要がある。今回の改正を突破口に、公選法全体の見直しにつなげるべきである。

 ネットによる選挙運動は公選法の解釈上、法定外の「文書図画」とされ、公示後の更新は制限されてきた。総務省の研究会は02年にホームページ(HP)に限定し解禁を提言したが、国会議員の一部に強硬な反対論があり、黙殺されていた。

 与野党合意では候補を擁立する政党と候補本人が選挙期間中にHPとブログを更新することを認めた。これに対し、第三者による「なりすまし」が起きやすいと懸念されたメールは禁止した。同様の指摘がある「ツイッター」は法律上はHPと同じ扱いとするものの、与野党でまとめるガイドラインに基づき、自粛を申し合わせる。国政選挙だけでなく、地方選も解禁の対象とした。

 参院選が6月24日に公示される場合、周知期間確保のため6月4日までに改正法を成立、公布しなければならない。国会の行方は波乱含みだが、解禁見送りはもはや許されない。その一方で無用の混乱を避けるため、公布後は運用について選挙管理委員会などを通じ、迅速でていねいな啓発活動を進めることが必要だ。

 さらに、今回の解禁はあくまで一里塚と位置づけるべきだ。特にツイッターの自粛をどこまで徹底できるか、疑問がつきまとう。あくまで暫定措置とし、解禁に向けさまざまな課題への対応策の検討を急ぐべきだ。政党や候補以外の一般の人のネット活用の自由化に向けた議論も避けては通れまい。

 すでに各政党はサイトで動画の活用を活発化するなど、解禁を想定した準備を進めている。政党のHPや候補のブログが選挙期間中にかなり頻繁に更新されることは確実だ。そのことが選挙カーからの名前の連呼に象徴される選挙の風景を変え、政策本位の論戦を加速することを期待したい。

 公選法はネットに限らずさまざまな規制に主眼が置かれ「べからず集」と呼ばれている。そもそも「選挙運動期間」をもうけて戸別訪問などを厳しく制限する国はほとんどない。今回の改正を契機に、与野党は公選法の抜本見直しに踏みこまねばならない。

毎日新聞 2010年5月28日 東京朝刊

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