嬉野市の井手酒造、限定品販売も検討
約60億キロの長旅を終え、帰還した宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」のプロジェクトチームに、嬉野市嬉野町の井手酒造(井手洋子社長)が祝い酒を贈った。7年前の打ち上げの際、主力銘柄「虎之児(とらのこ)」のラベルがはやぶさの性能計算書の表紙に〝採用〟されたのがきっかけ。同社ではオリジナルラベルを張った祝い酒の限定販売を検討している。
ロケットや衛星の打ち上げは巨額を投じるビッグプロジェクト。失敗は許されず、チームは成功を祈り、験担ぎで軌道計画などをまとめた性能計算書の表紙に清酒のラベルをもじって使う〝伝統〟があるという。
宇宙を60億キロも旅して太陽系誕生の秘密を探る試みは「まさに『虎穴に入って虎児を得る』挑戦」-。打ち上げ時、性能計算書を作成した的川泰宣名誉教授が、全国の数ある銘柄の中から「虎之児」を選んだ。
ラベルは「此君名聲 走千里」とする本来のキャッチコピーを「此機宇宙 翔百億里」に、醸造元をプロジェクトマネジャーの川口淳一郎教授にちなみ「川口酒造」、電話番号代わりに小惑星「イトカワ」を示す識別番号「1998SF36」を記すなど、遊び心もちりばめられている。
井手酒造では、チームから贈られてきた打ち上げ時のパネル写真と祝い酒を手にする川口教授の写真を展示。井手社長(76)は「無事を祈り続けていたのでうれしい。数々の困難を乗り越え、とら年に帰ってきたことに運命を感じる」と喜んでいる。
【写真】「はやぶさ」のプロジェクトチームが改変し、性能計算書の表紙にした「虎之児」のラベル
■性能計算書 宇宙科学研究所の人工衛星・探査機の打上げの度にオペレーション班が作成する書類。ロケットの飛翔計画や衛星・探査機の初期軌道計画をまとめたもので、関係する一部の実験班にしか配られない。日本初の赤外線天文衛星「あかり」の時は島根県の清酒「初陣」、太陽観測衛星「ひので」の際は沖縄県の泡盛「炎(ほむら)」のラベルが採用された。
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