昨年まで与党だった自民党を国政選挙の舞台裏で支えてきた県内の業界団体が参院選公示を24日に控え、足並みが乱れている。従来通り自民を応援するところ、民主党に乗り換えたところ、候補推薦を見送るところ……政権交代から間もない参院選で、与野党の間を旧来からの「集票マシン」が漂流している。【斎藤有香】
「失礼します」。千葉市中央区のホテル一室に4月22日、立候補予定者の1人が入ってきた。部屋では県医師会の政治組織「県医師連盟」の常任執行委員会が開かれ、役員20人がロの字形に座っている。その一角に予定者が座り、20対1の面接が始まった。
この日、県選挙区の民主、自民両党の立候補予定者4人が互いに顔を合わせぬよう30分間隔で呼び出された。面接は約10分間。「医療をどう考えているのか」「自分の専門と医療をどう結びつけて医師会の要求を実現してもらえるのか」。矢継ぎ早に飛ぶ。4人はやや緊張しながら、選挙への抱負を語った。
「『踏み絵』的なこともやったよ」と、県医師連盟の幹部は言う。「政党から医師会と違う政策を持ってこられた時にあなたはどうするか。そういう質問をぶつけて、それ(政党の方針)を乗り越えてやるのかやらないのか、と迫った」
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面接を踏まえ、県医師連盟は推薦候補を民主の道あゆみ氏、小西洋之氏、自民党の椎名一保氏の3人に絞った。幹部は「改選数は3。4人推薦する団体もあるらしいが、それでは節操がない。人柄が悪いわけではない。仕方なく選んだ」と話す。
1人だけ推薦から外された猪口邦子氏は、医療費を削減した小泉政権で少子化担当相だった。幹部によると、役員から「当時の大臣として(削減を)進めた」と厳しい指摘も出たという。幹部は「それだけが(推薦しない)原因ではないが、医師会の政策に同意できるかどうかが基本だから」と言う。
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これまで県医師連盟は自民候補を推薦してきた。今回は民主候補2人を推薦する。上部団体の日本医師連盟がこの4月から、自民候補を「支援」に格下げし、民主候補を推薦としたことにならった。ただし、椎名氏は長年の付き合いを踏まえて推薦とした。
「でも、県内に23支部ある。ある地域では椎名さんをやり、民主をやらないかもしれない」と幹部は話す。「長年、自民党を支えて政策を実現した。今後は自分たちの政策を実現してくれる候補を推す。政党との付き合いを考えなければいけない時期に来た」
毎日新聞 2010年6月23日 地方版