待ちに待った瞬間だ。1万2000人の視線が1点に集まる。大歓声の後押しを受けて、主役のシルエットが浮かび上がった。
まばゆいばかりのライトに照らされ、沢尻が真っ赤なフラッグを振りながら姿を見せる。シルバーのミニスカートの奥からは、プリプリに盛り上がったヒップがあらわに。左胸には、今にも飛び立ちそうな黒の孔雀の羽根を装着。心機一転をはかり、復活への意欲を服装に込めた。
晴れ舞台に合わせて用意した新曲は、軽快なダンスミュージック「Treasure」。4人の女性ダンサーを従えて歌い、踊った。同曲は、ハウスミュージック界で人気のユニット「スタジオアパートメント」に制作を依頼し、23日に結婚する実兄(29)への思いを英語詞で自らしたためた。
21日のリハーサルから気持ちは高ぶる一方だった。他の出演アーティストが1時間程度で切り上げるところを、2時間にわたって入念に確認。リハの途中でヘッドマイクに不具合が生じたため、ハンドマイクで歌うプランも浮上したが、ダンスへの影響を考慮。本番では両手に何も持たず、歌入りの音源を流した上で地声を張り上げた。
ファンの前に登場するのは2007年9月、映画「クローズド・ノート」の初日舞台あいさつ以来。不機嫌な表情で腕を組み、司会者の質問に「別に…」と発言し、物議を醸した。それをきっかけに芸能界の一線から離れ、自身を取り巻く環境は次々と変化した。
身の周りで次々と騒動がわき起こる中、高城氏と離婚する意思を表明。エイベックスのサポートを受け、歌手と女優を両立させていくことを決めた。現在、海外渡航中の高城氏と離婚に向けた話し合いは膠着状態が続いているが、その一方でボーカルレッスンに通い美声に磨きをかけてきた。
この日は「別に…」発言の2年8カ月前とはうって変わり、弾けるような笑顔でステージに立ち続けた。最後にハンドマイクを強く握り締め「みんなありがとうッ!!」とだけ叫んだ。多くの言葉はいらない。心から感謝の気持ちを伝え、再出発の幕をこじ開けた。