北海道周辺などが主な漁場になっているニシンが、ここ数年、山陰沖でしばしば取れるようになった。5月には鳥取県の漁港で1日500キロ近くが水揚げされた。南下の原因はなぞで、独立行政法人・水産総合研究センター(横浜市)が調査に乗り出した。
鳥取県漁連などによると、ニシンを取るのは沖合底引き網漁船で、昨年9月〜今年5月、鳥取港(鳥取市)に計約8.5トン、網代港(鳥取県岩美町)でも今年3〜5月に約2.5トンが水揚げされた。島根県浜田市でも3月に計4トン以上、兵庫県の沖合でもわずかだが取れたという。
山陰沖でニシンが取れるようになったのは、2005年ごろから。鳥取県水産試験場によると、07年から漁獲高が増え、1日数百キロ水揚げされることもある。農林水産省の統計でも06年に突然、島根県で3トンの漁獲が記録され、08年には鳥取県9トン、島根県13トン、09年は鳥取11トン、島根44トンと増えてきている。
水産総合研究センターなどが山陰沖ニシンのDNAを解析したところ、北海道沖で取れるニシンの近縁と分かった。ニシンは水深100〜200メートルの冷水域に生息する。水産試験場によると、5月の山陰沖の水深200メートルの水温は低いところで約3度。「温暖化で海面の温度は上がっているが、海の底には冷たい流れがあるのでは」とみる。
センターは、ニシンが取れた時期や海域、魚齢などを漁業関係者に聞き取り、山陰沖のニシンの実態を調べる。
鳥取県内の市場でも、ニシンが競りにかけられるようにもなった。しかし、5キロで千円以下の安値になることもある。氷代やパック代を含めると採算が合わず、海に捨てざるを得ないこともある。水産試験場は、ニシンそばの本場・京都の業者から「買いたい」と相談を受けたが、水揚げ量が安定せず、目玉商品にはなりにくいという。(西村圭史)