きょうの社説 2010年6月23日

◎県議会基本条例 議員の「本気度」が試される
 石川県議会基本条例案がきょう23日、成立の見通しである。議会の基本理念や役割を 明文化したもので、「議会の憲法」に位置づけられる。基本条例のめざす議会改革が実を挙げるかどうかは、ひとえに各議員の「本気度」にかかっている。

 地方分権時代に対応し、開かれた議会運営と活発な政策審議をめざして基本条例を制定 する地方議会が近年、全国的に増えている。県議会の条例案は21条からなり、知事との二元代表制の下、執行部の監視、政策立案、議決による県の意思決定といった役割を果たすことが明記されている。

 議員の政治倫理や県民に対する情報公開の規定なども盛り込まれているが、条例の内容 は議会として当然のことばかりであり、肝要なことは条例に魂を入れる議員の意志と行動である。

 全国に先駆けて基本条例を制定し、議会改革のお手本とされる北海道栗山町議会は、例 えば「まちづくり基本構想」の執行部提案に対して、議会側が対案を出し、議会側案を大幅に取り入れた修正案をまとめたという。事前の根回しで議会では追認するだけといった状況から抜け出し、執行部と真剣勝負をする意欲が議会側にあってこそできたことである。

 県議会基本条例案で注目されるのは、「政策調査会」の設置と知事らの逆質問を認めて いる点である。これが本当に機能すれば、議会は格段に活性化しよう。

 政策調査会は、政策づくりの調査・研究や有識者との意見交換、県民からの意見聴取な どを行うことになっているが、最も重要なことは、住民自治の理念に立ち「県益・県民益」を真摯(しんし)に考える態度である。条例は一方で、会派の結成を認めている。会派同士の切磋琢磨(せっさたくま)はよいが、会派の利害関係や政治的な思惑が先走るようでは、政策調査会の先行きが思いやられることになる。

 また、執行部側の逆質問を認めるとなれば、質問に立つ議員は執行部の考えをただすだ けでなく、議員自身の案を考えておく必要も出てこよう。もし、議会が筋書きのない真剣な議論の場となれば、さぞ聞き応えがあろう。

◎一括交付金 補助金並みの総額が前提
 政府が閣議決定した地域主権戦略大綱でくぎを刺しておきたいのは、補助金の一括交付 金化に際して、地方に渡す総額を削減しないことである。国が使い道を決める「ひも付き補助金」を、地方が自由に使える交付金に改めることは、国と地方の関係を変える大きな一歩であり、本格的な財源移譲への布石となる。だが、かつての三位一体改革で地方交付税が減額されたように、各省の抵抗が強ければ、結果的に地方が損をする懸念もぬぐえない。改革が進んだように見えて、地方が割を食うのは二度とご免である。

 地域主権戦略大綱の決定は参院選後に先送りされる予定だったが、地方の反発もあり、 急きょ閣議にかけられた。選挙前に地方重視の姿勢をアピールするため取りまとめを優先した側面があり、具体的な道筋はこれからである。

 菅政権が財政再建を錦の御旗にすれば、官僚はさまざまな手を使って交付金化の骨抜き を狙ってくるだろう。地方にとって一番困るのは、必要な事業に予算が手当てされないことである。一括交付金の制度設計では、補助金並みの総額確保を前提にしてもらいたい。

 一括交付金は、国出先機関の原則廃止と並ぶ戦略大綱の柱である。各省庁の補助金を大 まかな分野ごとの交付金に再編・統合し、自治体の事業計画や人口など客観的指標をもとに配分される。2011年度に交付金化する補助金は、今年末の予算編成で決まる。

 事務権限の移譲は徐々に進んだとはいえ、国が金で地方を統制する仕組みを変えない限 り、分権は本物とはいえない。だが、各省の縦割りを排し、交付金の対象範囲をどこまで広げるのか。配分の物差しを含め、課題は山積である。国の事前関与が強まれば単なる看板の付け替えにすぎない。自治体が使い勝手のよい仕組みにするために、制度設計の段階から地方の代表が議論に加わる必要がある。

 地方の側も不正経理に象徴されるずさんな公金管理が続けば、財源移譲論議に水を差す ことになる。国の仕事をどこまで担うかも含め、地域主権改革では自治体の受け皿能力も問われている。