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【社会】

『ヤード』 一斉立ち入り 『犯罪の温床』 一部自動車解体場

2010年6月22日 夕刊

 全国の警察は二十二日、「ヤード」と呼ばれる自動車解体作業場への一斉立ち入り調査に着手した。一部のヤードでは盗難車の解体や不法滞在外国人が関与するなど犯罪の温床になっている疑いがあるとされる。一部では、盗品等有償譲り受けや入管難民法違反(不法残留)の疑いなどで令状を取り、捜索を実施している。

 捜索は、神奈川県警や埼玉県警など十一都府県警が十五カ所で実施。ほかに全国の約四百四十カ所で、古物営業法に基づく立ち入り調査をする。

 警察庁によると、ヤードは、人里離れた山奥や郊外の農地などの敷地を高い鉄板などで囲って、外部から見えないように設営。内部には作業員が寝泊まりするコンテナや自動車を解体する作業場、資材置き場などを設置している。全国で約千四百カ所が確認されており、うち約千百カ所で外国人が関与しているとみられるという。

 ヤードに持ち込まれた盗難車は、部品別に解体された後、主に中東やアフリカなどに不正輸出される。現地で再び組み立てられ、高値で取引されているという。

◆盗難車や薬物扱う例 外国人多数、暴力団関与も

 全国の警察が実態解明に乗り出したヤード。警察当局は、外国人に加え、国内の暴力団も関与、盗難車だけではなく違法薬物や銃器なども扱っているとみている。十一月に横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)を前に、国際テロ組織との結び付きも警戒している。

 「よくもここまでというぐらいに細かく解体。再び組み上がると新車のようによみがえる」。捜査関係者はヤードで行われている自動車解体の“技術力”に舌を巻いた。全国の税関が輸出自動車の検査に力を入れた結果、盗難車をそのまま国外に持ち出すことが困難となり、数年前から、各地にヤードがつくられ始めたという。解体された部品だと、盗難車かどうかの確認が難しいという。

 ヤードでは、ナイジェリア、ブラジル、スリランカ、パキスタン、カメルーン、ウガンダ、ロシアなどさまざまな国籍の外国人が経営や作業に従事。自動車盗事件では、窃盗役、ヤード運営役、搬出先がそれぞれ分かれ、日本の暴力団と結託していた例もあり、多国籍の犯罪組織になっているという。

 ヤード内から違法薬物や銃器類が押収されたこともあり、「外国人犯罪の温床になっている」(警察庁幹部)という指摘もある。

 警察庁幹部は「ヤードで得た利益がテロ組織の活動資金になっていたり、テロリストが日本国内の潜伏先として活用したりする可能性もある」として警戒を強めている。

 

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