030318 地獄への道は善意で舗装されている | |
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盛んに引用される言葉です。いったい誰の言葉でしょう。二羽和彦氏(高岡法科大学法学部教授)のホームページによれば、あの『資本
論』のカール・マルクスが作出したもののようです。該ページより引用します。
(この言葉の源に関する部分だけを抜き出したので,二羽和彦氏の論旨を伝えるものとはなっていません。右のイラストにリンクを張り
ましたので,クリックして是非全文をお読み下さい。)
東京裁判で被告人側の特別弁護人となった高柳賢三氏(東京帝国大学教授)が冒頭陳述として提出した文書のなかで引用した、「地獄へ
の道は善意で舗装されている」という言葉の源をたどりつつ、この文書に含まれている驚くべき逆説を読み取ってみたいと思います。
高柳賢三氏は、サミュエル・ジョンソン(1709〜1784)の箴言として引用しているのだが、はたしてジョンソンはそう言ってい
るのでしょうか。
ジョンソンの弟子であるボスウェルが著した『ジョンソン伝』第2巻によれば、ジョンソンはこの弟子に対して、よく用いられる諺を引
用する形で「『地獄は』善意で舗装されている」と言ってはいますが(1775)、「『地獄への道は』善意で舗装されている」とは言っていま
せん。
倉田卓次氏が調べたところによると、ドナルド・アダムズ編『重要引用句集成』(1960)では初出・カール・マルクス著『資本論』
(1867)と記されているとのことです。
「地獄への道は、種々の良き意図で舗装されているのであって…。」
向坂逸郎訳(1969、岩波文庫)31頁。
マルクスが激しく批判した帝国主義の道(つまり地獄への道)をひた走った、日本の政府当局者を弁護するために、皮肉にも、高柳賢三
氏はマルクスが作出したとされる言葉を用いたというわけです。
調べてみたところ、この言葉が出てくるのは向坂逸郎訳『資本論』第2巻(1969、岩波文庫)の31頁でした。多く
の人に引用され続けているというのは、言葉の意味が本当には理解されず、同じ過ちが何度も繰り返され続けているからでしょう。
アメリカでは「圧政に苦しむイラク国民を救うため」と言えば、イラク攻撃に対する十分説得力のある理由付けになると
も聞きました。
茨城県ではこの4月から、「児童生徒や職員の受動喫煙を防ぐため」、すべての公立学校を敷地内完全禁煙に
するそうです。本校では「喫煙室」が設置され、完全に分煙がはかられてきたのですが。
愛煙家の私としては大変困ったことです。私の身近なところも「善意で舗装」され始めました。
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