Tear Down

XPERIAを分解、基板はスッキリした北欧風デザイン(3)

 「XPERIAを分解、基板はスッキリした北欧風デザイン(2)」からの続き。

 タッチセンサー制御ICはタッチパネルに付属するフレキシブル基板に搭載されていた(図5)。制御ICを覆い隠すように、粘着テープで銅箔が貼り付けてあった。銅箔をはがしてみると、タッチセンサー制御ICは米Cypress Semiconductor社の品種だった。静電容量方式のタッチセンサー制御ICは一部の例外を除き、同社と米Synaptics社がシェアをほぼ二分している。

図5
図5 タッチパネルと制御用IC
タッチパネル下部にあるフレキシブル基板を覆う銅箔をはがすと、米Cypress Semiconductor社のタッチセンサー制御IC(型番不明)が見つかる。

本当に使いやすいのか

 XPERIAは810万画素のCMOSカメラを搭載し、デザインの見た目が良く、タッチパネルも使いやすい。しかも、世界中で使える。すでにスマートフォンを使っている人はもちろんのこと、はじめてスマートフォンを使ってみようと考える人にも魅力的な1台だろう。しかし世の中に完全な製品は存在しない。XPERIAも完全ではない。改善の余地はある。

 ある会合で半導体業界および広告代理店の方々にお願いし、XPERIAを手にとって操作していただいた。試用してもらった人の中には、すでにスマートフォンを使っている人が多かったが、スマートフォンにはじめて触れるという携帯電話機ユーザーもいた。

 XPERIAを手に取って操作していた人から次々に聞こえて来たのは、「ん」「あれ」「こうするのかな…」など、疑問を感じながら操作していることが分かる言葉だった。本体を振っている人もいた(振って操作できる携帯電話機もある)。そこで、試用してもらった人に、それぞれが感じた疑問について尋ねてみた。

 「ドコモマーケットって何」Android搭載スマートフォンでおなじみのGoogleの検索ボックスを期待していたユーザーの一言である。XPERIAのホーム画面にはGoogleの検索ボックスはない。そして、標準画面の下にある「ブラウザ」ボタンをタッチするとGoogleのWebページではなく「ドコモマーケット」のWebページが現れる。しかもほかのWebページになかなか移動できない。

 実は、ホーム画面を左にスクロールすると、おなじみのGoogleの検索ボックスが表示され、ほかのAndroid搭載スマートフォンと同じように使える。XPERIAブランドならではのグラフィカルユーザーインターフェイスへのこだわりと思われるが、Googleの検索ボックスが一般化していることを考えると、ユーザーを戸惑わせる要因になっているかもしれない。

 「ファイルが大きすぎるのか?」XPERIAのディスプレイは約4インチ型と、決して大きいとはいえない。Webページや写真を表示すると、一部しか表示できないことがある。ディスプレイに映っていない部分、いわばディスプレイからはみ出した部分を表示させようと、指で画面をタッチしてスクロールさせると、画面が滑らかにスクロールせず、コマ送りのようにカタカタとスクロールする。高性能なSnapdragonプロセッサを搭載していることを考えると、スムーズに動いて欲しいところだ。

 「戻るには?」XPERIAの「戻る」ボタンは本体前面下部にある。しかし「どこまで戻るか」が、ユーザーの感覚と違う場面があるようだ。このボタンを押すことで正確に1つ前の画面に戻ることも多いが、幾つかモード設定を変更する前の「状態」に戻ってしまう場合もある。どこまで戻すのか、一貫させる必要があるだろう。またXPERIAは、タッチパネルで操作する場面がほとんどだ。「戻る」ボタンを常に画面上に表示しておいてほしいところだが、「戻る」ボタンが表示されない画面もあった。

 「ゲームは?」ソニーは世界に誇るPlayStationを開発した。世界中にいるPlayStationファンにとって、XPERIAが「エンターテインメント」機でありながら、PlayStationとの連携がないのは残念という声が何度か出た。ゲーム機本体と同様に使うことは難しいだろうが、PSP(プレイステーションポータブル)との連携や家庭用のPlayStationシリーズのリモコンとして使用できれば、より魅力的になるだろう。

 「電話はどうやってかける?」これは大問題だ。電話機なのに、どうやって電話をかけるかが一見しただけでは分からないのだ。ホーム画面を見ると電話機能を呼び出すアイコンが見当たらない。先ほどと同じくホーム画面を左にスクロールするとGoogleの検索ボックスの下に電話機能を呼び出すアイコンが現れるようになっているのだ。

 もちろん設定を変更することでホーム画面に電話アイコンを配置できるが、XPERIAは何よりも先に「電話機」である。ユーザーに設定変更を求めるのではなく、電話機能を呼び出すアイコンは、ほかのアイコンよりも分かりやすい位置にあらかじめ配置しておくべきではないだろうか。電話機には、電話機の機能を何よりも優先させたユーザーインターフェイスが必要だ。スマートフォンでも一般的な携帯電話機でも、最も大切なのは電話機能なのである。

スマートフォンの将来像を 垣間見せてくれたXPERIA

 日本の携帯電話機は、世界で標準といえるスマートフォンと比べると、はるかに多くの機能を備えている。スマートフォンに切り替えると、切り替え前にできていたことができなくなるということも多い。

 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは、このような日本市場にXPERIAという世界モデルを投入した。機能満載を良しとする日本の携帯電話機市場に、デザインは洗練されているが、日本の一般的な携帯電話機と比べると明らかに機能が少ない製品を投入したのだ。

 XPERIAは、PCと携帯電話機の間で行き場を探しているスマートフォンに1つの道筋を示していると筆者は感じる。機能設計やデザインを改善することで、スマートフォンはまだまだ改良できると思う。前述の会合で得られたXPERIAに対する疑問に満ちたコメントは、スマートフォンへの期待そのものといえるだろう。スマートフォンにはまだまだ大きな可能性があるということだ。会合に参加した、スマートフォンに触れたことのない携帯電話機ユーザーの一言がそれを物語る。

 「なんだか、ワクワクしますね」

 XPERIAが初日に5万台を売り上げた理由は、これなのかもしれない。


■訂正のお知らせ

 記事掲載に当たり、1点誤りがございました。本文中で「ドコモゲート」と記述しているWebページは、正しくは「ドコモマーケット」です。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みの内容に書き換えました。

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