大手衛生陶器メーカー「TOTO」と直接雇用関係にない男性が同社滋賀工場(滋賀県湖南市)で死亡した労災事故をめぐり、遺族が「事故はTOTOの指揮下で働く偽装請負状態で起き、同社にも安全配慮義務があった」などとして約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、大津地裁であった。石原稚也(ちがや)裁判長はTOTOの責任を認め、同社と製造ラインの操業を任されていた下請け会社などに計6140万円の賠償を命じた。
訴状などによると、男性は西野尾(にしのお)茂信さん(当時39)。2007年5月14日夜、水洗トイレのタンクの製造ラインが動かなくなったため、再起動させようと機械の後ろに入り込んだ際、機械と支柱との間に頭を挟まれて死亡した。
西野尾さんはTOTOに製造ラインを委託された下請け会社の傘下の従業員として働いていたが、遺族側は、下請け会社の現場責任者は実際はTOTOから指揮命令を受けていたと指摘。「TOTOは機械内部に人が立ち入るのを防ぐフェンスの設置や現場での指導・監督を怠った」と主張していた。
東近江労働基準監督署も同年9月、西野尾さんの雇用形態を偽装請負と判断し、法人としてのTOTOを労働安全衛生法違反容疑で書類送検。TOTO側は罰金50万円の略式命令を受けたが、訴訟では「以前から労働局の指導を受けて請負の適正化を図っていた」などとして偽装請負を否定し、安全配慮義務は下請け会社側にあると主張していた。