浜松市の浜名湖で愛知県豊橋市立章南中の1年生ら20人が乗った手こぎボートがモーターボートによるえい航中に転覆し1人が死亡した事故で、モーターボートを運転していた「静岡県立三ケ日青年の家」の檀野清司所長(52)は約20年前に操縦免許を取得したものの、えい航の経験はなかったことが関係者の話で分かった。一部の専門家からは「えい航ではなく、生徒らを他の船に移す必要があったのでは」との指摘も上がっている。
県や檀野所長らの説明によると、檀野所長は18日の事故時、風に流されていた手こぎボートの船首に約20メートルのロープをつないでえい航を始めたが、5~6分で転覆。青年の家は今年4月に県から民間会社の「小学館集英社プロダクション」に移管されたばかりで、檀野所長自身もえい航は初めてだった。
19日の会見で檀野所長は「20人をモーターボートに移すのは無理で(えい航は)妥当な手段」と述べた。しかし東海大海洋学部航海学科の佐藤治夫教授は「えい航される船は左右に揺れ、引っ張られる船に、かじを切る専門家がいないと難しい。湖が荒れている場合はなおさらだ。生徒を他の船に移す必要があったのではないか」と指摘。日本海洋少年団中部地区連盟(名古屋市)の男性職員も「人を乗せたボートをえい航した経験は自分もない。なぜモーターボートに生徒を移し(岸と)往復しなかったのかと思うが、生徒を早く陸へ戻したかった気持ちは分かる。批判はできない」と話す。【山田毅、平林由梨】
毎日新聞 2010年6月21日 20時28分(最終更新 6月21日 22時46分)