辺野古継承に県冷淡 新内閣スタート

前原氏の再任は期待

2010年6月9日 09時39分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 菅内閣では、米軍普天間飛行場を担当する岡田克也外相、北沢俊美防衛相、沖縄振興を所管する前原誠司沖縄担当相がそろって再任された。日米両政府が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を決めた共同声明を継承するとしており、県は冷めた目で船出を見守っている。一方、沖縄振興の観点からは前原氏の再任を歓迎する声が相次いだ。仲井真弘多知事もかねて前原氏を「一級品の政治家」と評価しており、ポスト沖縄振興計画を見据えたパイプの強化に取り組むことになりそうだ。

 仲井真知事は「地元の了解や合意がある程度ないと進められない。ブルドーザーと銃剣でやるつもりか」と日米合意の下で辺野古移設を推し進める方針を批判した。

 県首脳は「ホワイトビーチも含めてこの8カ月は一体何だったのか。米国と交渉した形跡すらない」と指摘。岡田、北沢両氏が再任することに「鳩山さんが辞めてチャラにはならない。とにかくまず、説明責任だ」と述べ、県外・国外がなぜ実現していないのか、検証過程を明らかにするよう求める姿勢を示した。

 一方、沖縄振興を担当する県幹部は前原氏について「那覇空港の燃料税や着陸料などの減免措置に関する要望も聞き入れてもらった。ポスト振計を策定する重要な時期でもあり、再任は歓迎する」と前向きにとらえる。

 別の幹部は、前原氏が国土交通相を兼任していることに着目。「那覇空港の第二滑走路建設など県の課題は国土交通省に関連する分野が多い。観光立県として観光庁を抱える役所であることも重要だ」と指摘し、前原氏の立ち位置の良さを強調した。

「地元だけで決まらない」
普天間移設で岡田外相 負担減の実現意欲

 岡田克也外相は8日夜、首相官邸で記者会見し、米軍普天間飛行場を名護市辺野古崎と隣接水域へ県内移設するとした日米合意に、沖縄側で反発が拡大していることに対し「政治には国民の命を守る責任がある。地元だけで決まるわけではない」と述べた。地元の合意を得られなくても日米合意の実現を目指す考えを示した発言だ。

 同時に「沖縄の負担軽減との両立が問われている」と指摘し、引き続き沖縄に理解を求めていくとした。

 北沢俊美防衛相は9日未明の就任会見で、米軍普天間飛行場移設に関して菅直人首相が述べた「一つの方向性」について、「5月の日米合意を守り、普天間を返還して危険除去する第1段階と、将来の安全保障環境をにらみ、(沖縄の)基地偏重を解消すること」と説明した。

 移設を進める上での沖縄の理解を求めるために「防衛省の知見を基に丁寧に説明したい」と努力する意向を示した。

 前原誠司沖縄担当相は8日夜の就任会見で、普天間飛行場移設問題について、菅首相が政府内で同問題の新たなタクスフォースの設置に言及したことを明らかにした上で、「(政府内で)しっかり沖縄にコミットメントするチームをもう一度つくり直し、責任者を決めて取り組むことが重要だ」との認識を示した。

 鳩山由紀夫前首相が2009年衆院選で発言した「少なくとも県外(移設)」が実現できなかったことを県民に謝罪することが必要との考えを示し、「普天間の返還を含め、沖縄全体にとって着実に負担軽減につながることを沖縄にしっかりとご理解いただき、日米合意を着実に進めていくことが必要だ」と述べた。

沖縄との関係薄く 仙谷官房長官

 【東京】米軍普天間飛行場移設問題をめぐる関係閣僚のかじ取り役となる官房長官に就任した仙谷由人氏は、2004年8月の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落直後、民主党の国会議員でつくる「米軍ヘリ墜落事故現場調査団」の団長を務めた以外、沖縄とのかかわりは薄い。

 新政権は名護市辺野古周辺への移設を盛り込んだ鳩山政権下での日米共同声明、政府方針の踏襲が予想される。仙谷氏は「熟議の民主主義」を信条に掲げており、県内からは世論の大半が反対する県内移設の実情に耳を傾けてほしいとの期待の声も上がった。

 1998年から2年間、仙谷氏の秘書を務めた上里直司県議(民主)は、金融や医療問題、憲法論議など幅広く政策に精通しているとして仙谷氏の活躍に期待する。

 基地問題では04年に党のヘリ事故調査団長として沖縄入りした後、沖縄関連の問題と直接かかわる機会は多くなかった。しかし、上里氏は自らが提言する「地域主権」の問題に仙谷氏が関心を示していたことに触れ、「沖縄の基地問題は合意のないような押しつけが進み、民主主義が機能していない。仙谷氏のキャッチフレーズは『熟議の民主主義』だ。聞く耳を持ち、提言した政策を受け止める度量はあると思う」と述べ、あらためて同県連、県民との対話に期待した。

 一方で、社民党の照屋寛徳国対委員長は仙谷氏と自治労協力国会議員団で一緒だったころを「彼は弁護士として私の1期先輩。筋を通す性格で、堅物という印象」と振り返る。「旧社会党出身だが、取り立てて沖縄へ思い入れがあるかは分からない。鳩山政権で沖縄との交渉役だった平野博文官房長官よりも、厳しい対応かもしれない」と述べ、沖縄との距離感を計りかねている。

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