魔女になる。 ビッテ&ガータ



「あ、ビッテ。昨日はどこ行ってたの?遊びに行ったら家に居ないし、どこを探しても見つからないし」
「そうなんだ、ごめんねシャット。昨日は……ガータと公園の芝生で、寝ちゃったみたいなの」
「そっか……天気、良かったしね。公園かぁ、何で探しに行かなかったんだろ、ワタシ」
「一番居そうなのにね。シャットもうっかりさんだね。ふふふ」

・・・

エウリの街における魔法格差。
使えない者にとっては、使う事で生まれる利益の実態すら、想像が及ばないだろう。
五行の魔法など初歩中の初歩に過ぎず、本当の意味で不可能を可能にするのが魔法なのだ。
それは、誰もが欲する欲望を叶える力そのものであり、その意味を知る者の間で囲われた特権である。

娯楽の少ないエウリの住人、特に男性にとってセックスが楽しみのひとつになったのは、勿論魔法の所為である。
とは言っても、それは愛情や合意の存在するようなものではない。
魅了、混乱、誘淫……精神に作用する魔法に、破瓜すら無かった事にする治癒魔法。
一定時間の記憶を操作、置き換える魔法、街のどんな場所でも人を寄せ付けなくなる、結界の魔法。
事実を隠蔽しながら任意の街娘を犯す……この欲望のために、効果的な魔法の組み合わせが練られた。
複数人によるこの術系を受ければ、どんな処女でも淫婦のように豹変した。
そして結界により行為は誰にも気付かれず、犯された本人も、記憶改竄に治癒という荒業で、身に起きた事を知り得なかった。
これらの魔法と行為は、アップタウンの中でもさらに限られた裕福層たちの娯楽として、長い間秘匿され続けた。

だが数年前、アップタウンの女性が処女受胎をした……という事件が起き、裕福層の面々は噂のもみ消しに奔走する事になる。
行為を楽しんだ後は、転移魔法で体内精液の除去を行う事で避妊としていたはずなのだが、魔法の使い方が不完全だったのか。
もしくは、治癒魔法は排卵を促進するという説もあり、とにかく魔法による避妊は完全ではない事が発覚した。
これを機に、一部の後ろめたさを感じていた者たちは、このような行為の終了を訴え、距離をとっていった。

だが、この快楽を覚えてしまい、それを実現する魔法を手放し難い者達の一人が、ひとつの提案を口にした。
「要するに……元より孕む可能性が無い娘を、相手にすれば良い……幸い、ダウンタウンには沢山いるだろう?」
最初は誰もがその非常識とも思える言葉に、眉をひそめた。
だが……魔法の力があれば、なんとかなる、誰にもバレない、なら……試し、そう、あくまで試しで。
そんなどす黒い欲望が、いずれの眼にも渦巻き始めていた。

・・・

休日のうららかな昼下がり。
本来ならお弁当を広げ、歌でも歌うのが似合いそうな、柔らかな日差しと鳥のさえずりが心地良い芝生の上で。
ビッテとガータは、数人の男に囲まれ、その幼い身体を夢中で弄ばれ続けていた。
普段の子供らしさとはかけ離れた、雌の声で嬌声を上げ、そのギャップがまた男達の興奮を高める。
ここには魔法の力がなければ、有り得ないであろう世界があった。
無邪気に、本能のままに、快楽を要求し続けるビッテやガータを見ながら、ふと彼らは思う。
本当は、魔法に掛けられているのは自分達ではないのか、と。
だとしたら、それは誰の欲望を叶えているのだろうか。

セリフ無し

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