家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の拡大を受け、宮崎県は13日、家畜伝染病予防法で家畜の移動が禁止された区域内にある県家畜改良事業団(高鍋町)で飼っている県産ブランド牛の「宮崎牛」などの種牛となっている6頭を域外に避難させた、と発表した。12日になって約2キロ離れた川南(かわみなみ)町の農場で感染疑いのある牛が見つかり、感染回避のため移動を決めた。国も特例措置として認めた。
県によると、同事業団は県が所有する種牛55頭を一元管理し、人工授精用の冷凍精液を供給している。移動させた6頭は、供給している精液全体の9割を賄っていることから選ばれた。県は13日までに遺伝子検査で口蹄疫の感染疑いがないことを確認した上で、同日正午に移動を開始。6頭はトラックに載せられ、パトカーに警護されて移動した。
ただ、当初予定していた、約40キロ離れた西米良村の村有地が、半径5キロ圏内に3カ所の牛飼育農場があることが移動後に判明。県は畜産農場のない地域を選び直し、事業団から約20キロ離れた西都市内の簡易牛舎に移動先を変えた。
種牛の避難をめぐっては東国原英夫知事が、10日に宮崎入りした赤松広隆農相に「宮崎の宝を守る必要がある」として、特例措置として移動を認めるよう訴えていた。
宮崎県では、口蹄疫に感染、もしくはその疑いのある牛や豚が12日までに76カ所で見つかり、計7万8800頭が処分対象。このうち、牛の処分対象は6272頭となっている。
■宮崎牛
宮崎県内で種付け、肥育され、日本食肉格付協会が定める格付け基準の肉質等級(2-5等級)のうち上位2等級以上の黒毛和牛。5年に1度開かれる和牛品評会「全国和牛能力共進会」(2007年)で主要9部門のうち7部門で首席(1位)を獲得、最高級の黒毛和牛として評価を得ている。年間約1万3千頭を出荷。県家畜改良事業団が父牛となる種牛の精液を一元管理し、ブランド保護に努めている。
=2010/05/14付 西日本新聞朝刊=