オランダ人社会とイスラム系移民の亀裂
2010/04/14 11:50更新
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【外国人参政権 欧米の実相】(3)
第二次大戦後、トルコやモロッコなど地中海沿岸諸国から出稼ぎ移民を受け入れたオランダでは、イスラム系移民とオランダ人社会の亀裂が広がっている。
アフガニスタンへの派兵延長をめぐりバルケネンデ政権が崩壊し、6月9日に下院(150議席)の総選挙が行われる。その行方を占う3月3日の統一地方選では、イスラム移民排斥を訴えるヘルト・ウィルダース党首の極右政党、自由党が、干拓地にできた人工都市アルメレや主要都市ハーグで第一、二党に躍進した。総選挙では現在の9議席を24~27議席に伸ばし、次期政権樹立のカギを握りそうな勢いだ。
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記事本文の続き 「自由党が連立政権に加わる現実味が増してきたことに戦慄(せんりつ)を覚える。オランダ人と移民の間に溝が広がっている」と、アムステルダムでイスラム系移民支援活動を行うレーマー・バン・オード氏は表情を曇らせた。
ウィルダース氏は「イスラムは民主主義と相いれない」として、イスラム系移民の帰国、モスクの建設禁止、定住外国人からの地方参政権剥奪(はくだつ)を政策に掲げる。2008年には反イスラム映画「フィトナ」をネット上で公開して世界中の非難を浴びた。そのウィルダース氏が攻撃の矛先を向けるのが、オランダ第2の都市ロッテルダムのアハメド・アブタレプ市長である。
市長はモロッコ生まれのイスラム教徒。15歳のとき家族とオランダに移住した。昨年1月、政府が推薦した3候補から、ベアトリックス女王がアブタレプ氏を市長に任命。同国で「移民市長」が誕生するのは初めてとあり、あるコラムニストはオバマ米大統領にひっかけ「(オランダを流れる)マース川のオバマ」と祝福した。だが、ウィルダース氏は、市長がオランダとモロッコの二重国籍をもつことを非難している。
ロッテルダムでは2020年までに人口60万の半数以上が、移民背景をもつ住民になると予測されている。モロッコ系の第2世代が街で頻繁にトラブルを起こすため、02年3月の市議会議員選では、移民排斥を唱えたピム・フォルトゥイン氏率いる地域政党「住みよいロッテルダム」が第一党に躍進した。
氏は国政でも右派政党、フォルトゥイン党を結成したが、同年5月に動物愛護活動家に射殺された。04年11月には、氏を描いた映画を制作中だったテオ・バン・ゴッホ監督がモロッコ系青年に殺害された。「住みよいロッテルダム」のロナルド・ソレンセン現党首は「裸の王様と同じで、フォルトゥイン氏は誰もが思っていたが口に出せなかったことを言っただけだ」と振り返る。
中学校の歴史の教師だったソレンセン氏が、ホロコースト(ナチスによるユダヤ人虐殺)を教室で教えているときのことだった。イスラム系生徒が突然、笑い出しホロコーストを否定した。氏はそのあとイスラム教の聖典コーランを読み、「これはファシズムと同じだと信じるようになった」という。アブタレプ市長を批判し、市長公選制の導入を求めてもいる。
ロッテルダムでは1979年に、アムステルダムでも81年に、市議会の権限が区議会に一部移譲されたのに伴い、外国人に区議会議員選への参政権が認められた。そして85年には、5年以上の居住を条件に、外国人の地方参政権が全国的に認められる。移民背景をもつ地方議員は94年に73人だったが、2006年には302人に増加した。
アブタレプ市長は「民主主義は統合ではなく多様性を保障するもので、すべての地域社会が声をもつことが重要だ」と語る。
移民の投票傾向を調査しているアムステルダム大学のアンヤ・バン・ヒールサム研究員によると、移民の投票率は1990年代に低下していた。だが、移民排斥を唱える政党に反対するため2002~06年にかけて反転し、上昇した。移民は出身国が同じ候補者に投票する傾向が強く、政党別では移民に寛容な政策をとる中道左派の労働党に集中的に投票していた。
同研究員は「移民がどの政党に投票するかは、オランダ人と同じように市場原理重視の政党か福祉重視なのか-が一番大きな判断材料になる。地方選では民族や宗教は争点にならない。イスラム政党も出現しているが、ほとんど機能していない」と語る。(ロッテルダム 木村正人)
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