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help リーダーに追加 RSS 「日本をここまで壊したのは誰か」西尾幹二著 読書メモ1

<<   作成日時 : 2010/06/17 00:00   >>

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 「日本をここまで壊したのは誰か」西尾幹二著(草思社2010年)を読んでいます。

 この本は、西尾幹二さんが雑誌に掲載した論考を整理してまとめた本です。
 今回は、第T部最後に収めてある
「外国人地方参政権 世界全図 ―なかでもオランダとドイツの惨状」
を紹介します。

 前半では、「OECD加盟30ヵ国で、外国人に参政権を全く付与せずかつ二重国籍を認めないのは日本だけだ」(朝日新聞2010年1月27日)という指摘が地理的条件や歴史的経緯をとばしていっさいを見ない、非現実的で乱暴な結論だ、としながら、東西諸国と日本社会との違いを具体的に比較しながら、外国をマネする前提が欠けていることを指摘しています。
 EUを真似して「東アジア共同体」という観念を設定し、そこからEU同様に外国人参政権を日中韓で認めよう、という主張があるが、EUは参政権付与に警戒的・限定的であり、イスラムやアジア人にはそれを与えない。
 他方で、韓国が永住外国人に地方参政権を与えているといっても、韓国への投資額や年収を厳しい条件にしており、オープンな相互主義をとっていない。中国に至っては、人民に選挙権はない(民主主義の国ではないので当たり前である)。EUの実態も、東アジア共同体の観念も、外国人の地方参政権を認める根拠にはならない。


サブタイトルにあるように、オランダとドイツの紹介が克明です。

 オランダは地方参政権付与の条件を「5年以上在住の者に認める」とした。EU諸国で唯一、移民をEU国民に限定しなかった。そのため、イスラム教徒などの宗教的に不寛容な移民が大量に流入した。他のEU諸国が10%弱に対して、オランダの移民率は20%である。
 これらの移民居住区では、オランダ人の生活習慣や価値観を嫌い、敵意を示し、祖国のやり方にオランダを変えようとすらしながら、オランダの社会システムを作り替えている。「国連」「世界市民」「共生」という政治的理想のなれの果てだ。

 ドイツは、EUが誕生する前からトルコ移民が流入し、80年代にはトルコ人をネオ・ナチが襲撃するなどのトラブルが続いたことが報じられていたが、最近では報道すらされない。
 それは、トラブルが解決したのではなく、ドイツが移民政策の破綻に沈黙し始めたからである。
 労働力目当てに外国人移民を受け容れたドイツは、そのために起きたトルコ人問題を解決するために、トルコへの帰国者をお金を払って募り、それをって実行した。しかし、同数のトルコ人が新たに入国してくるという。それは、ドイツ社会にトルコ人就労者を必要とする需要が生じ、それなしではやっていけなくなってしまったからだ。
 雇用数が国内で2番目に多い教会関係労働者も、イスラムの移民を安く雇い入れたいので、移民受け入れを推進している。キリスト教がイスラム教徒を雇うのである。また、ドイツ人には徴兵忌避が緩やかに認められているので、軍に入隊する多くは移民である。経済はもちろん軍も教会も移民に依存している以上、移民反対とは言えなくなってしまっている。

 ベルリンのノイケルンという、トルコ・レバノン・ユーゴからの移民が9割を占める居住区の学校では、ドイツ人の子が差別されている。
 ドイツ人の子は、取材カメラの前で押され、蹴られ、唾をかけらながら、「おまえはドイツ人か、トルコ人か?」と問いつめられ「ドイツ人だ。神様なんか信じない」と言うといきなり殴られる。移民同化政策の担当者は「われわれは学校をサポートし、子どもたちにとって魅力ある学校にしていきたいと願っています」と言うだけだ。これを避けるには街から逃避するしかない。それはまさに「共生」という名の移民政策の破綻を意味しているのである。
 にもかかわらず、ドイツ最大のタブーは、移民政策の破綻を口に出して言うことだ。それにより差別者のレッテルを貼られて排除されてしまう。これが「共生」の現実なのである。



 西尾さんは「アンチ鳩山」として「共生」を叩いているのでしょうが、「共生」の理念自体は谷垣の言う「絆社会」と同じく、日本社会で私人同士が助け合う社会を目指す限りでは間違ってはいないと思います。
 ただ、国内の共生すら手つかずの状況で、外国人を受け容れて「共生」を目指そうというのは、国民生活にダメージを与えるリスクが大きいでしょう。ドイツの例を見れば、後戻りできないのが移民受け入れ政策だからです。
 自民党の一部にも、安い労働力目当てに移民受け入れを促進する財界の走狗がいますけど(中川秀直)、財界は、移民受け容れにともなう治安の悪化、暮らしにくさ、アイデンティティの弱体化について責任ある立場ではありません。財界人に踊らされるのは、政治家としてはアウト。労働力が安いのはせいぜい移民一代目限りです。

 さすがに西尾先生だけあって、「憲法15条で外国人参政権は禁止されている」みたいな、ネットでよく見る説得力も何もない「論拠」をあげていなかったのは、当然ですが、安心して読めました(それは理由付けが必要な解釈の結論であって、論拠ではありません)。

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