2010年06月21日
新たな基地造らせない
[安保50年と沖縄]
「主権深化」が先決では
「独立しても米軍基地は持っていてください。申し訳ありませんが…」
県庁に関西在住の市民から電話が入った。中日新聞6月10日付に掲載された「再燃『沖縄独立論』の現実味」を読んで電話したらしい。
その現実的な反応に驚く。県内で独立論はごく一部の主張にとどまっている。仮に実現しても日米両政府と基地撤去を交渉するのは困難を極めるだろう。
元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は方法論としての可能性を論じながら、「米中日という大国に囲まれ、その環境で生き残るには、外交に相当なエネルギーが必要。そのコストを考えれば安易に独立論は語れない」とコメントしている。
米海兵隊基地が残るキューバのように、居ついてしまった外国軍を撤退に導く交渉は容易でない。
ここで指摘したいのは独立論の可否ではない。独立しても基地を引き受けてほしいという本土側のメンタリティーのあり様だ。
本土側には別の視点もある。菅直人首相は鳩山内閣の副総理だった昨年、喜納昌吉参院議員との面談で、「基地問題はどうにもならない」「独立したほうがいい」などと発言したという。喜納氏が近著で紹介した。
この国で安全保障の当事者はいったい誰なのだろうか。
米軍普天間問題が混迷してから、本土側から「沖縄は独立した方がいいのでは」という話を耳にする。軽々しく沖縄独立論を説くよりも、自らの独立を考えるべきだ。
50年前の1月19日に日米両政府が署名した現在の安保条約は、6月23日に批准書が交換され、発効した。
くしくも慰霊の日だ。戦没者慰霊祭に出席予定の菅首相は、基地負担の軽減に取り組む上で、「式典に参加し、(中略)長年の過重な負担に対する感謝の念を深めることから始めたい」(所信表明演説)という。
「謝罪」ならまだしも「感謝」という論理のすり替えには閉口する。鳩山由紀夫前首相が普天間の移設問題で「最低でも県外」と公約した負担軽減は、菅首相によって振興策に衣替えしていくのではないか。自民党政権がそうしてきた。
安保を正面から論じることなく負担を沖縄に封印する構図は変わらない。それでいて政府は安保50年を契機に日米同盟を深化させるという。
投げやりに沖縄独立を口にする首相に米側と本気で向き合う覚悟はあるのだろうか。
民主党が昨夏の衆院選で公約した「対等な日米関係」は、普天間をめぐる対米交渉でもろくも崩れた。
「地域主権」を推進することも重要だが、安保50年の節目にいま一度「安保下の従属」を問い直すべきではないか。
首都東京上空の一部空域の管制権を米軍に握られている現状を政治は論じようとしない。基地内で環境汚染があっても現地基地司令官は行政の立ち入りをめったに認めない。文民統制は破綻(はたん)している。
主権について冷静に論じられる節目にしたいものだ。(沖縄タイムス6/21社説)
きのうの日曜日、鳩山由紀夫前首相の置き土産になった「日米共同声明」で、普天間飛行場の移設先として明記された辺野古地区を抱える名護市の市民会館で、沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会の主催によるシンポジウムが開かれた。
(沖縄タイムス6/21、記事全文はコチラ)
(琉球新報6/21、記事全文はコチラ)
シンポジウムには市内外から約400人が参加。宮城篤実嘉手納町長、新崎盛暉沖縄大名誉教授が基調報告したほか、民主党鹿児島県連の川内博史代表、ヘリ基地いらない二見以北十区の会の浦島悦子さんが登壇。民主党沖縄県連の喜納昌吉代表、大田昌秀元知事らがメッセージを寄せた。
(琉球新報6/21)
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