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ダム計画がゆらいでいる/3 取りまく環境の変化

 ◇水の利用は頭打ちになっている

 ダムが、みんなの暮らしや経済の成長に役立ってきたのは間違いないよ。でも、日本の人口は減り始めているし、経済成長のスピードも落ちてきた。2055年の人口は今より1400万人も少ない約9000万人になるといわれているんだ。国が作った資料(「日本の水資源・2008年版」)でも、飲み水の減少などで水の利用は50年後には今の約9割に減るとみている。時代の変化とともに、ダムの必要性も変わってきているようだね。

(国土交通省「日本の水資源2008年版」より)
(国土交通省「日本の水資源2008年版」より)

■生活用水

 1人が1日に使う水の量は、水を節約する電気製品の普及などで2000年ごろから減っている。人口の減少に節水機器の広がりが加わり、50年後には現在の約6割に減ると予想される。

■農業用水

 水田の減少などでわずかだが減りつつある。食料生産量が変わらないとすると、50年後の水使用量も今より増えることはない。食料自給率が下がるか上向くかでも変わりそうだ。

※食料自給率……わたしたちが食べている食料のうち、どれくらいが国内で作られているかという割合。

■工業用水

 50年後にどんな産業が日本経済の中心になっているかを予想するのは難しい。使用状況がほぼ変わらないとしても、水の節約技術の進歩などで必要量は今の9割ぐらいになりそう。

 ◇大型の公共事業に厳しい目

 国や地方の財政が厳しいことから、公共事業の支出をおさえる動きが強まっている。ダムの中には工事が決まってもなかなか始まらないものもあり、1996年以降、大小合わせ100をこすダム計画が中止になった。国が建設予定のダムは全国に50近くあり、総事業費は6兆円をこす。多くは戦後の経済成長期に計画されたもので、見直しを求める声が少なくない。

 ◇クリーンな水力発電に期待も

 水力発電は戦後、石油を燃やす火力発電におされ、1960年代に主役交代。今は国内発電量の約9%をしめるにすぎない。水力発電には、地球温暖化をもたらす二酸化炭素(CO2)排出が火力発電より格段に少ないという長所がある。クリーンなエネルギーとして、ダムとは別に、中小の川や農業用水の流れを利用した小規模な水力発電が注目されている。

 ◇過去に起きた主なダムなど反対の運動

ダム反対の拠点となった「蜂ノ巣城」=1964年6月23日
ダム反対の拠点となった「蜂ノ巣城」=1964年6月23日

■下筌(しもうけ)ダム(大分県・熊本県)

 筑後川上流に1950年代に計画されたが、ダム予定地の地主が「蜂ノ巣城」というとりでを築き、激しく建設に反対した。国が地元に十分な説明をせず、強引に建設を進めようとしたことへの怒りからだった。ダムで生活が激変する地元への配慮を国にうながすことになった。ダムは73年に完成。

■長良川(ながらがわ)河口堰(三重県)

 長良川の河口近くに建設された長さ660メートルの開閉式の堰。1968年に建設が決まったが、川の自然や漁業への悪影響が心配され、反対運動がおきた。95年に完成。この問題をきっかけに97年に河川法が改正され、ダム建設では環境に注意をはらうことや、住民の意見を反映させることが盛りこまれた。

長良川河口堰
長良川河口堰
「脱ダム宣言」をした田中康夫・長野県知事
「脱ダム宣言」をした田中康夫・長野県知事

■長野の「脱ダム宣言」

 政治家で作家の田中康夫さんが長野県知事だった2001年に発表した。川や湖は大切な財産であり、ダムは環境に良くないとして「コンクリートのダムはいらない」と宣言。七つの県営ダムの建設を中止した。公共事業が本当に必要なものかどうかを問い直す動きが全国的に広がった。

ニュースがわかる 2009年6月号

2009年5月29日

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