東京都杉並区で07年、隣家の親子を殺害し現金約4万7000円を奪ったとして強盗殺人罪に問われた元日本大生、志村裕史被告(25)の控訴審判決で、東京高裁は17日、無期懲役とした1審を支持し、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。被害者2人の強盗殺人事件では、1審の無期懲役を見直す高裁判決が相次いでいたが、小西秀宣裁判長は「被告を極刑にするほかないとまでは断定し難い」と述べた。
東京地裁判決(09年7月)は、殺害の計画性が乏しい点や、被告が事件当時21歳8カ月と若かったことから「改善や更生の可能性がないとは言えない」として、無期懲役を言い渡した。被告の家族が遺族に賠償金8000万円を支払っている点も死刑回避の理由とした。
検察側の量刑不当の主張に対し、高裁判決は「事件は計画的ではなく、殺意も実行行為の直前に生じたものと認められる」と指摘。「被告は若年で前科もなく、家族が慰謝に努めた事情も考慮すると、無期懲役が軽すぎて不当であるとは言えない」と結論付けた。
一方で「身勝手な動機に酌量の余地はなく、結果は極めて重大。社会に与えた衝撃は大きい」と述べ、量刑不当として無期懲役からの減刑などを求めた弁護側の控訴も退けた。
1審では2回の精神鑑定が行われ、弁護側請求の鑑定では心神喪失、検察側請求の鑑定では完全責任能力があったと正反対の結果が出たが、地裁は完全責任能力を認定。弁護側は控訴審でも「責任能力はなかった」と主張したが、高裁は「原判決の判断に誤りはない」とした。
高裁判決によると、志村被告は07年1月25日未明、隣家の野元富恵さん(当時86歳)方に侵入、野元さんと長男新一郎さん(同61歳)を刺殺し、約4万7000円とクレジットカードなどを奪った。さらにカードを使いATM(現金自動受払機)から1万円を引き出そうとしたが失敗した。【伊藤直孝】
毎日新聞 2010年6月17日 10時59分(最終更新 6月17日 15時38分)