農林水産省は18日未明、宮崎県で発生した家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)の感染確定・疑い例は計126例で、殺処分対象の家畜が計11万4177頭になったと発表した。これを受け平野博文官房長官は閣議後の記者会見で、一定区域内の家畜全頭を殺処分するための措置を検討する考えを明らかにした。
全頭殺処分には、感染の疑いが出た農場の家畜に殺処分を限定している家畜伝染病予防法を改正するか、特別措置法を制定する必要がある。平野氏は全頭殺処分について「ひとつの考え方だ。封じ込めるためにはあらゆる検討をしなければならないと思っている。現行法でできるのか、法改正がいるのかを含めて検討した上で判断しなければならない」と述べ、早急に検討を進める考えを示した。
全頭殺処分について赤松広隆農林水産相は、感染の疑いのある家畜の発生が集中している地域の場合は「所有者の了解を得ながらやるのは、今の法律でも読めないことはない」と会見で語り、現行法の枠内で健康な牛も含めて殺処分を行う可能性を示唆した。ただ、宮崎県全域など対象範囲が広い場合は、現状でも殺処分した家畜を埋める土地を探すのが困難な状況にあるため、「物理的にも無理がある」との認識を示した。
また、原口一博総務相は、殺処分による農家の損害を軽減するため、農家の自己負担分(5分の1)を宮崎県が肩代わりした場合については特別交付税で全額支払う方針を記者団に明らかにした。亀井静香金融相は会見で「畜産農家などに(融資などの面で)対応を積極的にやってくれと緊急のお願いをするつもりだ」と述べ、金融機関に通知を出す方針を明らかにした。
鳩山由紀夫首相はこれに先立ち、政府や宮崎県の一連の対応に問題はなかったかとの記者団の質問に対し、「一定の部分はあると思う」との見方を示した。
一方、自民党は口蹄疫対策本部の会合を開き、政府の関与を強める家畜伝染病予防法改正案を今国会に提出することを決めた。感染が疑われる家畜の殺処分や埋める場所の確保について国の責任を強め、被害農家への補償割合を引き上げることが柱だ。会合では感染拡大防止のため全頭殺処分をすべきだとの意見も出たため、法案に加えるかどうか検討する。谷垣禎一総裁は「政府の対応は極めて不十分だ。きちっと追及する」と述べ、赤松農水相の不信任決議案の提出も検討している。