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ふ、ウフフフ。天罰の精霊さんったらお茶目なんだから♪
危うく……危うく死ぬところだっただろオオオオ!?
この精霊は何度僕を死にかけにすれば気がすむの!?
武器を掲げていたらダメとか、使用上の注意がありすぎるよ!
ちなみに、「天罰招来」、「祈り」、ともに精霊さんと会話が出来るわけではないようだ。
こっちが願い、あっちが答える。
基本的に、言って帰ってくるだけで終了だ。
文句なんか聞いてないんだろうなぁ……
ギチギチギチ!
お、ヤオザミが再起動したみたいだ。
そりゃあ行き成り自分に雷を落とす奴なんて「少し様子見るか」ってなるよね。
しかしヤオザミはもうこちらの行動は虚仮脅しと見切った! とばかりに攻撃してくるようだ。
シャカシャカと足を動かし、弓なりの軌跡を描いて詰め寄ってくるヤオザミ。
いくら痺れていると言っても、この程度避けれないほどではないんだよ!
サッと避けると、ヤオザミは地面を鋏で穿っていた。
敏捷高くなったから分かるけど、こいつの動きってとても直線的だよね。しかも振り向きとか極端に遅いし。
付け込む隙はたくさんあるな。
流石不器用モンスター。
という訳で、
「てい!」
ザクーン! とヤドを攻撃する。
ビーナスオブキャットの切れ味が凄いのか、僕の筋力が大きいのか、ヤドは一発で砕けた。
「ギィ!?」
そしてそのまま返す刃で弱点部位であろうコブをズバーンと攻撃。
「ギィイイイイ………」
ヤオザミはあっさり崩れ落ちる。
こんなに弱いのか……
≪魔物を撃退したことにより、経験値を10取得しました。≫
前倒した時と比べて、4分の一の経験値になっている。
こっちのレベルが高くなるたびに2分の一になってるのかな?
ブランゴ戦とか思い出しても、正しいような気がする。
これってレベル上げるには上のレベルの敵を倒すのが手っ取り早いってことだよね。
まぁその分だけ強いんだから、手っ取り早く行くかは分からないけど。
ところで、ヤオザミの死体の後には、今度は鋏(ハサミ)と金貨が残された。
鋏は50センチほどの腕も付いている。
あ、そうだ。
金貨はもう観察できるかも。
「観察眼」Lv5、発動!
と言っても手にとってよく見てるだけなんだけど。
≪対象の情報を取得することに成功しました。
【神金貨】:神様のダンジョンの中だけで使える、女神の顔を浮き彫りにした美しい金貨。持っておくと役に立つ。純金製。≫
ほほぅ。
集めておいて、損は無いってことだね?
純金製って、集めて現世に持って帰ったら左団扇で暮らせそうだ。
まぁ現世で暮らせるわけでもないから意味のない仮定だけど。
そして鋏。
持って行って武器に使ってもいいんだけど(その場合、鈍器扱い)、僕お腹空いてきてるんだよね。
この体ってエネルギー使うのか、やたらお腹が減るんだよね。
食べれるかな?
カニの鋏に拳落として割ってから、中にびっちり詰まっている身を取り出す。
薄茶色い身だ。
食欲がちょっぴり無くなるが、とりあえず一口。
うーむ。微妙。不味くはないかな。決して美味しいわけでもないけど。
でもまぁお腹は膨れるでしょう!
こんなに大きい(ハルマサの胴体くらいある)し。
ムシャームシャー! と食べてから、まだ少し湿っている服を着て、場所を移動することにした。
何時までも留まっているわけにはいかないんだ!
で、雪山に向けて、行軍を再開します。
サクサクと短い草原を踏み歩きながら、僕はこれからの敵について考える。
僕が今まで会った中で、一番強いのは(閻魔様除いて)恐らくイャンクックだ。
「観察眼」で名前を確認できるようになるのが、「観察眼」のレベルが対象のレベルマイナス2以上の時だということには気付いている。
詳しい情報が見れるのは、対象のレベルと同じ時だ。
という訳で、ヤオザミはレベル5。ランポスもレベル5。
ブランゴはレベル4で、ドスランポスやドスファンゴはレベル7。
イヤンクックは≪レベル7の「観察眼」もってこい≫って言われたから、レベル9だと予想できる。
レベルアップのシステムから、ドスランポスはランポスたちの4倍強い。
クック先生はなんと16倍。
実はクック先生がボスなのかな。あんなフラフラと飛び回ってたからそれはないか。
閻魔様は雑魚に比べて5レベル強いとおっしゃってたけど、どっちから5高いのか。
イャンクックからだと、もう絶望するしかないよ。
短期のクリアは諦めて、ドス系を狩りまくるしかないだろうね。
いずれにしても、これからの方針は、会うモンスター会うモンスター、倒して倒して倒しまくる!
これだね。
ボスに向かって少しでも自分を鍛えなきゃ。
殲滅者に、僕はなる!
という訳で「聞き耳」でモンスターを探索。強襲or待ち伏せ。殲滅!
出来る! 今、強くなった僕ならできる!
でもクック先生だけは勘弁な! 死んじゃうから!
と、その前に回復できるかな。
「祈り」を使ってみる。
(可愛らしい女神様! 回復していただけませんか!?)
【ふふ、貴様分かっておるのぅ! よかろう! 聞き届けてやる!】
女の子の声がとても上機嫌に答えてくれた。
【癒しよ、あれ!】
声と同時に、周りの草とかが一瞬にしてゴソッと枯れ果てて、僕の周囲はまるで放射能でも撒き散らされたみたいになった。
相変わらず自然に優しくない能力である。
【服の乾燥はサービスなのじゃ。】
(うぉおおおおお! 風が!)
ついでにまわりから風が吹き付けてきて、服が瞬く間に乾いていく。
この女の子多芸だなァ……。
≪――――――スキルの熟練度が180.0を越えました。レベルが上がりました。熟練に伴い精神力が上昇します。≫
なんかさっきより熟練度の上がり方が大きい。いや、減るよりはいいんだけど、不思議だな……。
そして精神力が500を越えてしまった。恐ろしい成長。
チートとかそういう次元を超えていない?
精神力を使う……魔法とかあったら威力高いだろうになぁ……
いや、待てよ! 精神力って集中力とかにも関係してるんじゃないだろうか。
集中しまくれば、思考が加速したりしないかな。
例えば……クロックアップとかかっこいいよね!
オメガトライブ読んでから憧れが半端なかったんだ。
なんか仮面ライダーも使える人がいるみたいだし!
超人的な精神力を持つ僕なら、出来てもおかしくないぜ!
正直何に集中すればいいか分からないけど、取りあえず叫んでみるよ!
「クロックア―――ップ!」
≪ポーン! 特技「加速」を使うには、耐久力が159,748足りません。持久力が159,698足りません。精神力が159,447足りません。スキル「風操作」Lv15「雷操作」Lv15を習得する必要があります。≫
(絶対無理だ――――――ッ!)
前の時はこんな露骨な言い方ではなかった。
「全然足りない」。そう言ってくれていたはずだ。だが今回の露骨な発言。
きっとシステムはこう言いたいのだろう。精神力500くらいで調子のんな、と。
マジでごめんなさい。
しかし、あと15万以上必要って、凄いな!
いつかそんなに高くなるのかな! 僕のステータス!
あと、やっぱり空気抵抗とかあるんだろうね。「風操作」がいるみたいだ。でも、レベル15って……。
これもまた最近分かったんだけど、スキルレベルって、僕の体自体のレベルと同じように、レベルが一つ上がると、レベルアップに必要な熟練度(経験値)が2倍になるんだよね。
すなわちレベル15ってすごく時間がかかると思われるわけですよ。数値とか計算したくないくらい。
「風操作」Lv1すら習得できていない僕には遠い話しすぎて、鬼が笑うどころか屁で茶が沸くよ。あ、違うヘソだ。
仕方ない、今はおいておこう。
取りあえず、今は目の前に出てきたモンスターを倒すだけだ!
むむッ! あっちにモンスターの、ランポスの反応ハケーン!
早速殲滅任務に移ります!
ハルマサは調子に乗りまくりながらモンスターの群れへと走った。
<つづけ>
レベル:6
耐久力:252
持久力:302
魔力 :178
筋力 :337→338
敏捷 :479
器用さ:217
精神力:453→554
経験値:338 あと300
スキル
両手剣術Lv4:87 →88
祈りLv5 :80 →180 ……Level up!
戦術思考Lv4:69 →70 ……Level up!
観察眼Lv5 :161→163