- 荒川弘さん (あらかわ・ひろむ)
- 5月8日生まれ。北海道出身。マンガ家。1999年、『STRAY DOG』で「第9回エニックス21世紀マンガ大賞」大賞を受賞し、デビュー。初連載作品となる『鋼の錬金術師』(スクウェアアニックス刊「月刊少年ガンガン」にて連載中)が大ヒットし、二度に渡りアニメ化されている。同作で04年、「第49回小学館漫画賞」を、06年「第5回東京アニメアワード原作賞」を受賞。
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応募期間:2010年3月18日(木)10:00〜2010年4月1日(木)9:59
当選者発表:当選者の発表は発送をもって替えさせていただきます。
インタビュー
- −−“農家エッセイ”は今までにないタイプのエッセイマンガかと思いますが、描かれることになった経緯について教えてください。
- 荒川さん担当編集さんと「小学館漫画賞」授賞式のときにご挨拶させていただいて以来、特に一緒に仕事をすることもなく、会ってマンガの話ばかりしていたんですね。あるとき、「そういえば、農家エッセイってないよね」みたいな話になりまして。私自身も実家が農家で、手伝いをしていましたし、マンガ形式の農業エッセイが存在しないのなら描いちゃえ!という感じで描き始めました。完全にスキマ産業です(笑)
- −−読者の方から、どんな反響がありますか?
- 荒川さん農業関係者の方にも読んでいただいているみたいで、「普段はマンガを読まないけど、これは面白かった!」みたいな、ありがたい意見をいただいております。2006年に行われた牛乳の生産調整に触れているところがあるんですけど、「よく描いてくれた!」「現場の気持ちをわかってる!」みたいな意見をいただきました。
- −−荒川先生のご実家は、酪農と畑作、両方を行っているそうですね。本の冒頭に農家の一日のスケジュールが描かれていますが、この忙しさは衝撃的でした……。
- 荒川さん自分の中では普通だと思っていたんですけど、みんなに言われます(笑)。最初、担当編集さんにも驚愕されました。
- −−まだご実家にいたときも、もちろんマンガは描かれていたんですよね?
- 荒川さん はい。三国志が好きだったので、仲間内で同人誌を作ったりしていましたね。少しでも技術を貯めておきたかったので、常に何かしら描いていました。
- −−この鬼のようなスケジュールをこなしながら、いったいいつ描かれていたんですか!?
- 荒川さん夜です。寝る時間を削ればいいんですよ(きっぱり)。睡眠にあてられる時間も十分とは言えませんけど、たとえ夜しっかり寝てなくても、作業の隙をみて寝られれば体はもちます。たとえば食後とか、畑に出てちょっとヒマだったらそのままゴロゴロして5〜10分寝るとか。そうやって細々睡眠をとるんです。
- −−しかしこんなに多忙だと、1日の作業量が限られると思います。作品が完成するまでに時間がかかったのでは?
- 荒川さん畑仕事がない冬季は時間ができるので、投稿作などはその時期に集中して描いていました。でも農作業ってわりとルーティンワークが多いので、肉体作業をしながら、頭では別のことを考えられるんですよね。だから手を動かしながら脳内でネームを切る…なんてこともできちゃうんですよ。
- −−なるほど。長年農作業をしてきて、マンガを描くうえで役に立った部分はありましたか?
- 荒川さんマンガ家向きの体が作り上げられたことでしょうか(笑)。季節によって作業の忙しさが変わることや年中無休で作業してきたことは、今の仕事をするうえでかなり強みになっていると思います。生活サイクルの変化にすぐ順応できる体は、まさにマンガ家向きですよね(笑)。
- −−確かに(笑)。先生はご自分のことを牛のイラストで描かれているように、牛好きだそうですが、ズバリ牛の魅力とは?
- 荒川さんいっぱいありますね。辛抱強いし優しいし、懐いてくれるとかわいいですし。牛にもちゃんと表情があるんですよ。仔牛の頃からかわいがっていると、同じペースで歩いてくれるようになりますし、人懐こくなります。あと、好奇心もすごく旺盛ですね。
- −−そんなかわいがっている牛でも、利益に結びつかなくなってしまったら処分しなければなりませんよね。本の中でもそういった部分に触れられていますが、やはり農業をしていると死生観について考える機会が多いかと思います。
- 荒川さんそうですね。農業って、常に動物の「生き・死に」の判断を迫られる職業なんですよね。慈善で動物を育てているのではなく、一企業として、ビジネスで飼育しているわけですから。死生観については永遠にモヤモヤしたままじゃないかと思います。
正直なところ、実家の牛たちを見て、「この子たちは幸せなんだろうか」と考えることもありました。大自然の中で野生生活をしていれば、自らエサを見つけなければならず、病気になっても助けてくれる人間はいない。でも、人間が飼育していれば首輪はされるし、乳が出なくなったら殺されてしまいますけど、常に食と安全は与えられる。動物の視点で考えると、どちらが幸せなんでしょうね?これは永遠にわかりません。 - −−複雑ですね。牛以外にも、変わった特技を持った猫や、鹿、鮭…など、北海道にいる様々な動物が登場しています。これを読んで北海道に行きたくなる方も多いのではと思いますが、もし先生が北海道の観光大使になったら、何をお薦めしますか?
- 荒川さんやっぱり農業体験ですかね、長期の。最低でも1年はやらないと、面白さがわかりませんから。
- −−この本で、農業人口を増やそうという目論見が?
- 荒川さんいえ、ぜんぜんないです(笑)。“百姓の仕事をマンガで描いてみたら、おかしいことになってるよね”という部分で、笑ってもらえたらいいなというスタンスで描いているので。老若男女問わず、いろんな人に読んで楽しんでいただきたいです。近所のラーメン屋さんとかに転がっていればいいなと思います(笑)。
- −−2巻ではどんな“トンデモ話”が出てくるのか、楽しみです!本日は、どうもありがとうございました。
- ★あまり期待せず購入したのですが、読んでみたら大満足です。食育とか食糧自給率向上とかいう前に農業の現場に行って欲しいよね、と再認識させられる本なのでした。
- ★疲れることがあっても、これ読むとまっ、いいか。と思え、元気が出てきます。はまりますわぁ。鋼の錬金術師の作品中に漂う、死に対するあきらめの良さって、農家育ちから来るのだと妙に納得しました。