電子書籍の仕組みなんか、よく知らない人が読むべきだ!
――あのう、あと電子書籍で気になってるのは、エッチなものは、どこまで売っていいのかなあ、という基準が…、よく分からないんですけども。
「配信元があると基準があるのかもしれないけど、個人で売ってる場合は、すごいのが現れるかもしれないですね。」
――コミケも、どうなるのかなあと。
「お祭りでモノをたくさん買う! という達成感は紙の本として物体があったほうが楽しいかもしれない。
前回の文学フリマで思ったんですけど、知り合いが終了時間前に歩いてたので、どうしたの? って訊いたら、『完売した』って言うんですよ。『こっちはまだ
完売しないんだよー』って言うと嫌味だって笑ってたけど、でも、やっぱり『完売する』っていうのはひとつの喜びだから。電子書籍は完売しないって、いいこ
とではあるけれど、ひとつの喜びは減ってるかもしれない(笑)。」
――あえて100部限定でしか売らないとか、やろうと思えば出来ますよね。
「それも考えたんだけど、単なるいじわるになっちゃう気もして(笑)。
みんな、どんどん自分で電子書籍、作ればいいんですよ。みんな勝手にやって勝手に売ればいいんだよ〜(笑)。」
――しかし、あのう、お話を聞いていくと、米光さんの儲かりどころが、まったくない気がするんですけど…。
「ないですよ! 部活ですから! もっと地味にやっていきたい。」
――でも、電子書籍が盛り上がって、なんだか大変なことに(笑)。
「あ、でも自分たちのコンテンツを出せるので、それが売れれば、そこで少し、儲かります。
『いま電子書籍がアツい!』とか言って、電子書籍マニアの人だけが集まる、っていうふうには、したくないんですよ。中身が読みたい人に来てほしい。『紙の
本で出してよ〜、でも電子書籍しかないんだからしょうがないか〜』って言われるぐらいがいいなーと思う。
敷居をなくしたいんですよ。読む人は、PDFとかEPUBとか、ファイルの仕組みを知らなくていい、読めればいいんです。私はiPhoneだからこれをダ
ウンロードすればいいのね、っていうくらいで。
電子書籍って、こんなことも出来る、あんなことも出来るっていうのがあるから、どんどん複雑になっていっちゃう。このフォーマットで、このデバイスで、こ
うやらなきゃダメみたいに。読む側に、いきなり複雑なことを要求しちゃうのは違うかなあと思って、気を付けてます。」
――音が出るのかなとか、絵が動くのかなとか、やっぱり期待しちゃいます。妄想がふくらむというか…。
「その妄想のふくらんだものを、どうやってスムーズに楽しんでもらうかってところが大切だと思っています。そこはインターフェイスデザインの問題なので、
ゲームデザイナーとしては本職ですから。いろんな面白いことを、じょじょにやっていければいいと思う。」
――みんな、いろんな無茶なものを作って、気持ち良く読めるものが残って、淘汰されていくんでしょうね。
つまりその、まだ色んなことが決まってなくて、大手出版社も自費出版も含め、全員、試行錯誤中、ということでしょうか。
「そうですねえ。本当、いろんなことが出来る。イベントの時に電子書籍を出すとか、服を買った時に、タグにQRコードが突いててピッと読み取ると電子書籍
が出てきて、デザイナーからのコメントとか設計図が出て来るとか。インディーズでやってることが、インディーズっぽくなくなるんじゃないかなあと思うんで
す。電子書籍が、いろんなもののハブというか軸になればいい。」
――ええと、何というか、いろんなことが決まってない、ということは分かりました。
「決まってないとイヤっていう人もいるけど、決まってないからこそ楽しいっていう人もいるでしょ。僕は決まってないことが楽しい(笑)。可能性がたくさん
あって、自分がやれる。変わっていくこと自体が面白いんですよね、今。」 |