デイリーポータルZロゴ
検索天気地図路線このサイトについて無間地獄無間地獄
@niftyロゴ


ひらめきの月曜日
 
電子書籍がわからない!

ノートパソコン画面を見て、欲しい電子書籍をチェックし、自分のメアドを入れる(Gmailなどのフリーアドレスでも可)。そうするとダウンロードURL が送られてくるので、そのままダウンロードして、読むだけ。

 

「300円です。」

――はい、50円玉も混ざってますけど、すいません…。でもパソコンで何か買うのに、直に小銭を渡すのって、新鮮ですね。これ、複製は出来ないんですか?

「出来ます。でも一応、送信したファイルにメアドが埋め込まれてしまうので、このままネットにアップすると、この人がアップしたんだな、というのはバレま す(笑)。
著作権が変わっても、著者へのリスペクトってなくならないと思うんですよね。

理想は、コピーが出来てもいいから、そのかわり著者にいくらか入るようになればいいな、と思うんです。例えば僕が電書を買って、いいなと思う本を人にコ ピーしてあげると、その時点で著者にもいくらかお金が入るといいなあって。勝手に売れていくといいなあって。」

――ねずみ算で電書売買(笑)。そうなったら、スゴいですね。


私の過去記事、『謎の黒猫を探せ!』を、電子書籍部技術班が変換してくれました。素材はテキストデータと画像だけ。変換プログラムの作動している画面は、 何だかさっぱりよく分からなかったけど、完成はあっというま。

うひゃー、電書対応のPDFになった! 「やってみると、何も難しいこと、ないでしょ?」(米光さん談)

――今現在は、書き手が『電子書籍部』にテキストと画像を送って、電子書籍の形式にしてもらっているんですよね。

「プログラム出来る人に、楽しい部があるから入らない? って誘って(笑)、変換プラグラムを作ってもらいました。」

――iPad用の電子書籍のファイル形式、EPUB(イーパブ)に書き出せるソフトって、高価なデザインソフトしかないですよね。海外にはフリーソフト や、変換サイトもあるようですけど、よく分からなくて…。
『ホームページビルダー』のような、そんなに高くない、自分で簡単に電子書籍が作れる日本語ソフトがあったらいいのになあ、と思っているんですけども。

「それは出てくるんじゃないかなー。電子書籍部の構想として、いま使ってる変換をオープンにしたいというのもあります。テキストと画像をアップしたら、電 子書籍用のファイルに変換してくれる日本語サイトを作ろうって、技術班と相談してます。」

――すごい!!!!! それはいつ頃、実現されるんですか?

「目標は、秋以降ですね。」

――秋って、あと3ケ月くらいで秋になっちゃいますよ。

ええと、秋『以降』なので、秋より遅くなっちゃうかもしれませんけど(笑)。今は自分たちでやってるから、プログラムの欠けてるところも分かるんだけ ど、オープンなものにすると、いろんな要望やトラブルがあったりするので、その辺は固めて、きちんとやりたいんですよね。」

 

電子書籍は、恐ろしい革命なのか、既に身近なものなのか?

――実は、キンドルが出た時は、私は全然ピンと来なかったんです。iPadが出て、カラーが見れる、っていうのにすごく魅力を感じて。

「僕、実はまだiPad買ってないんだけど(笑)。なんだか、みんな買ってますよねぇ。」

――それで、電子書籍にワクワクしてたんですけど、ずっと考えてるうちにブルーになってきちゃったんです。なんだか怖いというか…。全然違う回路がいきな り出来ちゃうんじゃないかって。
『著者→出版社(編集者)→印刷会社→取次(配本会社)→本屋さん→読者』
っていう流れが、
『著者→読者』とか『著者→編集者→配信会社→読者』
っていうふうに、すごくショートカットされて、流通が変わってしまう革命なのかなあ、と思って。
米光さんも、個人でも本が出版出来る、っていうことを、人に知らしめてるわけですし…。

「ほっといても流通の構造は変わっていきますよ。でも、人と人を結ぶ人が必要なことには変わりないんです。
そもそも、電子書籍って昔からあった。電子書籍部に入ってもらっている平林久和さん(ゲームジャーナリスト)が、カーナビも地図に特化した電子書籍なん じゃ? って言うんですよ。電子辞書もあるし。何年も前から、電子書籍ってみんな使ってるんですよ。」

――居酒屋の、タッチパネルで注文するやつとか。

「そうですね。なんだかんだでみんな使ってるじゃん、って。
僕がいまやりたいのは、ライターの人は分かると思うけど、本にならない原稿って、たくさんあるじゃないですか。」

――いっぱいあります。

「それ、電子書籍なら出せるんです。僕も雑誌に書いたやつとか、たくさんあるんですけど、それを本にするとなると、トーンをそろえるとか、一冊分にすると か、まず3000部とか5000部とか売れないといけないとか、大変になっちゃう。紙だと制約があるけど、電書には全然ないんです。

今までは著者がいて出版社があって、っていうのがありましたけど、それが一体化するのかなと思ってます。出版社がなくても、フリーの編集者さんが、気に いった著者さんとやるとか、もっといろんなやり方、選択肢が増えてくる。でっかい出版社じゃなくてもいい、編集さんがフリーだったり小さな会社だったりす ることの利点がうまれてくる。」

――編集の方が著者をケアしつつ、デザイナーさんやプログラマーさんと組んで、配信出来る形にまでする、っていう感じでしょうか。最少形態ですね。

「あと、電子書籍部やって思ったのは、日本語の版組みのすごさですね。長嶋有さんの俳句の電書を作った時、まず縦書き。でも章タイトルは英文で横書きなん ですよ。縦書きと横書きが混在する。あと俳句って文字数が違っても、文章の高さが同じだっていうルールがあるんですね。」

――文字間が違ったりするんですね。それは結局、どうしたんですか。

「画像にしました。日本語は難しいですよ、書き手は欲張りで日本語は貪欲なので、いろんな書き方が出来るから、難しいんです。日本語の電書の普及は、時間 がかかるかもしんない。」

――電子書籍に特化した、デザイナーさんが必要かもしれないですね。新しい職種っていうのが出て来るような気がします。

 

本じゃなくて、『回覧板』の感覚で

「でも、デザインにこだわらなければ、PDFって本当に簡単に出来ますから。『Word』でも書き出せますよね。
勝手な未来像が頭の中にあるんですけど…。みんなそれぞれ端末を持っていて、自分で文章を書いて、電書に変換して、会った友達に『読んでよ』って送りつけ るのがいいかなって思うんです。メールだと何だコイツって思われるような長い文章でも、電書ならだいじょうぶ。」

――手紙を回し読みするような感じでしょうか。

「回覧板に近いのかなあ。子供が作る『オレ新聞』みたいな感じかな。僕も小さい頃、『オレ新聞』を作ってましたけど、あれが大人になっても出来る感じがす るんですよ。
こないだワークショップやった時、自分だったらどんな本を作るかって課題を出したんですよ。そしたら、紙の本だったら出て来ないような発想が出てきたんで す。大道芸をやってる人が『大道芸の差別と笑い』っていうものを書きたいとか、工事現場好きな人が『旬の工事現場』を出したいとか、そんな案が。」

――出版をする機会がなかった人が、何かを発表するいい場なのかもしれないですね。

「出版って思わなくてもいいのかもしれない。やっぱり回覧板くらいのイメージで。僕は電子書籍を『電書』って呼んでるんですけど、なんか『書籍』って言 葉、重いじゃない? とくに『籍』が。戸籍の籍の字って、重いですよ。

紙の本は紙の本でいいと思うんです。紙で本作る人は、2年くらいかけて、山に籠もる勢いで作るんですよ。そういう人が紙の本を出すべき人なんです。そこに はきっと、いいこと書いてあるもん。」

――紙にするには、それ位の気合いが必要なのかもしれないですね…。

「最近、メディアの重い軽いを、考えてたんですよ。一番重いのは紙で、いちばん軽いのはツイッターじゃないかと思うんです。ツイッターって誰も読んでない 可能性があるじゃないですか。

<重い← 紙―電子書籍―ブログ―雑談(リアル対話)―ツイッター →軽い>
こんな感じじゃないかと。

コミュニケーションの選択肢が増えたから、それぞれ住み分けが出来るといいと思うんですよね。

ネットだと、顔の見えない人も読むから、バッシングされないように『私の意見でしかありませんが』とか、前置きしちゃうじゃないですか。でも電子書籍で、 直に渡せば、そういう前置きなくても、感じを汲み取ってもらえる。そうすると表現する気楽さって増しますよ。」

――ネットは、怒られやすいですよね。

「『デイリーポータルZ』でも、怒られること、ないですか?」

――(笑)。

「ネットでは怒られるかもしれないけど、電子書籍は怒られないと思うんです。

ネットは、ひょいとトーンを理解しない人が読む可能性があるけど、電子書籍はある程度ハードルがあるから、面白いと思える人のところに面白いものが広まっ ていくし、つまらないところには広がらない、そういう自浄作用が起こる。

ネットは誰でも読めてしまうというのが、いいところでもあり、悪いところだと思うので。

ツイッターやってて思うんですけど、『どこどこで飲んでるなう』ってクズ情報ですよ。でも自分の友達が書いてて、それが近所だったら、有用な情報になった りする。電子書籍も同じ。甥っ子の書いた小説は、他人にはクズ小説でも、伯父さんは嬉しく読むんですよ。」


< もどる ▽この記事のトップへ つぎへ >
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
アット・ニフティトップページへアット・ニフティ会員に登録 個人情報保護ポリシー
Copyright(c) NIFTY 2002 All Rights Reserved.