漢陽大教授が金日成主席にあてた手紙

【新刊】林志弦著『新しい世代のための世界史の手紙』(ヒューマニスト)

 「党と国家を巨大な発展機械と見なすあなたは、農民や労働者たちのことを常に、ためらうことなく、“歯車”と呼びました。…彼らを歯車と呼んだ瞬間、ドネツの炭鉱地帯で起こった炭鉱夫のストライキに対し、すでに戦車まで動員し残忍に鎮圧する心の準備ができていたのですよ」

 林志弦(イム・ジヒョン)漢陽大教授は、スターリンにあてた手紙で、社会主義という労働者の天国を作るという名分を掲げつつも、労働者を裏切ったスターリンの正体を暴露した。2000年代に「大衆独裁論」を提起し、韓国国内の知識人社会に熱い論争を呼び起こした林教授が、エドワード・サイード、ムッソリーニ、チェ・ゲバラ、ローザ・ルクセンブルク、ハンナ・アーレントなど、歴史上の人物や同時代の知識人にあてた手紙形式で歴史エッセーを書いた。

 著者が長年抱いてきた問題意識の一つは、民族主義に閉じ込められた南北の現実だ。韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領に対しては、「1970年代に義務教育を通じ原理主義的な民族主義の洗礼を受けた人々が、(北朝鮮の)主体思想の追従者になったのは、一つもおかしなことではない。これらの時代錯誤的な金将軍(金日成〈キム・イルソン〉主席)の追従者たちは、あなたの思想的私生児だ」と責め立てた。また北朝鮮の故・金日成主席に関しては、当事者だけでなく、北朝鮮の住民以上に「金将軍」に追従した韓国の「愛国青年学生」を厳しく批判している。「あなたを尊敬し慕ってきた韓国の“愛国青年学生”の一部がかつて信じていたように、あなたが縮地法(道術の一種。長い距離を短時間で移動する)を利用し、木の葉に乗って鴨緑江を渡ったという話を信じることは、もはやない」と述べ、「反戦反核・環境運動には熱心なのに“北朝鮮の核兵器は自衛用であるため正当だ”という強弁や、韓国の国家保安法には青筋を立てて怒るのに“北朝鮮の思想弾圧は米国帝国主義から民族と社会主義を守るためのものだ”という詭弁(きべん)をまき散らす。そして結局はあなたにそもそもの責任がある北朝鮮住民の飢餓と強制収容所を正当化している、あなたのその愛国青年学生」を俎上(そじょう)に載せた、エッセー集だ。392ページ、1万7000ウォン(約1285円)。

金基哲(キム・ギチョル)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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