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kojitakenの日記

2010-06-19 「強い財政」と「財政健全化」と「財政再建」と「財政均衡」

日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠

民主党自民党消費税増税合戦をすることになって、もはや動かしがたい流れとなった税制論議だが、当ブログが何度も繰り返し主張するように、日本の税収で一番不足しているのは所得税である。

財務省ウェブページに、租税負担率の内訳の国際比較が出ている。

租税負担率の内訳の国際比較:財務省


リンクを張っただけでは、読者の多くはリンクに飛んでご覧いただくことをしないと思うので、下記にリンク先に掲載されているグラフを示す。欧米諸国と比較して、日本の個人所得税負担率が低いことは一目瞭然である。


http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/files/%E7%A7%9F%E7%A8%8E%E8%B2%A0%E6%8B%85%E7%8E%87%E3%81%AE%E5%86%85%E8%A8%B3%E3%81%AE%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%AF%94%E8%BC%83.jpg?d=.jpg


そして、なぜ日本の所得税収が少ないかというと、それは超高所得者が応分の負担をしていないからである。それを示すのが、同じく財務省ウェブページに掲載されている、平成19年度の申告納税者所得税負担率のグラフである。

平成22年度税制改正の大綱 参考資料(6/6):財務省


これも同ページからグラフを借用して貼り付ける。


http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/files/%E7%94%B3%E5%91%8A%E7%B4%8D%E7%A8%8E%E8%80%85%E3%81%AE%E6%89%80%E5%BE%97%E7%A8%8E%E8%B2%A0%E6%8B%85%E7%8E%87%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%9019%E5%B9%B4%E5%88%86%EF%BC%89_small.jpg?d=.jpg


一目瞭然、1億円を超える超高所得者の税負担が軽くなっている。

これが、日本の税制がいかに超高所得者を優遇しているかの動かぬ証拠である。

高所得者が、分離課税だらけの所得課税の恩恵を受けていることはいうまでもない。

この財務省ウェブページには、他にも面白いグラフがたくさん載っているので、是非ご覧いただきたい。


[追記1]

id:statsreadさんからいただいたコメントを以下に紹介します。


元の統計の方もざっくりと読ませていただきましたが、

「超高所得者が、分離課税だらけの所得課税の恩恵を受けていることはいうまでもない。」

というところが重要なんでしょうね。

所得階級が5000万円を超えたあたりから「株式等の譲渡所得等」の割合が急上昇しています。

譲渡所得は申告分離課税で税率が総合課税の税率よりも低いので、結果として実効税率が下がってしまいます。

このあたりのことは、多分意外に知られていないことではないかと思うのですが、過去の記事で既出かもしれませんが、本記事からのリンクがないようでしたので、ちゃんと説明しておかないと誤解を招いてしまうのではないかという気がします。

逆に言えば、分離課税の問題を解決しないで、総合課税の税率のみを上げると、ここで指摘される問題がより深刻化してしまう危険性があります。


ご指摘の通りで、その点がこのエントリで私が主張したかったことです。そしてこれは、菅首相のブレーンの一人といわれ、税調専門家委員会の委員長を務める神野直彦氏が、著書『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)で特に強調していた事項の一つで、その傍証となるグラフを紹介したというのがこのエントリの本意です。要は、菅首相のブレーンの学者は、何も消費税増税菅首相に進言しているのではなく、税制の抜本改正は所得税から行えと主張しているわけです。


[追記2]

このエントリに言及した記事を、別ブログ「きまぐれな日々」に公開しましたので、よろしければあわせてご覧下さい。

きまぐれな日々 「金持ち天国」の日本 ─ 「やせ我慢根性」から脱却せよ

hayaton117hayaton117 2010/06/20 08:51 私もご意見に賛成です。
ただ、なぜ上げないのか、と考えたときに資産流出の懸念は無いのだろうか?とも思います。資産家の周りには税回避のアドバイザーのような人もおり、シンガポールなどは政府からしてそうです。そして彼らにとっては海外に資産を持ち出すことへの敷居が低い。

日本から出て行く輩はさっさと出て行けという論もあろうかと思いますが、タバコ税のように上げた結果、トータルでは税収が減ってしまう可能性は無いのだろうかと単純に思ってしまいます。

kojitakenkojitaken 2010/06/20 09:47 hayaton117さん、単純に考えて、これほどまでにも超富裕層が極端に優遇されている国で、多少「金持ち増税」されたところで「日本から出て行く輩」など出現しようがないと思うのですが、いかがでしょうか?

kata-katakata-kata 2010/06/20 10:58 むしろ、このグラフを見ると、1千万円から2億円くらいを稼いでいる人の所得税を下げてあげるといいんじゃないかな。海外に逃げたくなるのってこのあたりの収入の方が多いように思いますし、このグラフを見ると不公平感が強いですね。

それから、50億とか100億とか稼いでいるのって極端に少ないと思いますが、どうなんでしょう。

kojitakenkojitaken 2010/06/20 11:19 kata-kataさん、50億から100億稼いでいる人なんてほとんどいないでしょうけれど、1 人で中所得者の100人分くらいの所得があるから、寄与は大きいでしょう。鳩山家や麻生家などが該当するのではないでしょうか。鳩山前首相のお母さんは、息子に月1500万円の「子ども手当」を遣ってたらしいですから。

そして、低所得層から高所得層までの寄与をすべて足し合わせると、他国に比べて著しく低い日本の個人所得課税ということになるわけですから、「日本では超富裕層が(分離課税によって)極端に優遇された税制になっているから、個人所得課税が税収に占める割合が小さくなっている」と私は主張するわけです。

「1千万円から2億円くらいを稼いでいる人」というと、大手マスコミの正社員を私などは連想しますが(彼らは管理職になりたてでも2千万くらいもらってるんじゃない?)、彼らこそ勝手に海外に出て行けば良いと思います。総合課税だけではなく、累進課税も強化しなければ、他国並みの個人所得課税にはならないのではないでしょうか。

Gl17Gl17 2010/06/20 11:24 ブコメでは超高額所得層は人数が少ないから税収に繋がらないというものが多いですね。
ただ、昨今の趨勢としては総所得に占める割合は、高額所得層が際立って多いといった統計は何度か見た覚えがありますが・・・。
(人数は少ないが金額的な比率は高い)
低所得層の場合は、生活で占有される所得の額・率が大半で、法律をどういじろうが担税できませんし。

海外に逃げる論はしょっちゅう出てきますが、そもそも経済基盤が国内にある場合そう簡単なものですかね。
バブル時代には企業が盛んに日本へ進出してきましたが、不況が常態化して以降はカイカクどうこう言ってても撤退ばかり目立ちます。
そういう総合的な繁栄度が実態を決めるのでは。
税率の多寡で動けるのは一部の書類上決裁機能みたいなものくらいではないですか。
(先日、法人税下げを主張する学者も、逃げるのは"本社機能"が、といった言い方で表現していました)
そういうものの場合も、行き先になり得るのはタックスヘイブン的な特殊な小国限定でしょう。
一種の脱法ですから法的に抜け道を塞ぐこともできるはず。
個人が生活丸ごと移動するのは容易ではないですよ、EUや一部東南アジアみたいに域内の文化・地理的敷居が低い地域はまだしも。

ryuunengumiryuunengumi 2010/06/20 11:25 素朴な疑問。このグラフから察するに横軸は年収×該当人口だと思うが、所得1億を越えるような人間は圧倒的少数になって、全体から見れば税負担が少ないように見えるだけなのではないか。このグラフを持って高所得者の税負担が軽いと断言するのは不可能であるように思うのだが、識者の方々はどう認識されているのだろうか。

kojitakenkojitaken 2010/06/20 11:31 ryuunengumiさん、「負担率」ですよ。財務省のウェブページにリンクを張ってありますから、よく見て確認して下さい。

kojitakenkojitaken 2010/06/20 11:36 Gl17さん、
> ブコメでは超高額所得層は人数が少ないから税収に繋がらないというものが多いですね。
はてブで人気エントリになる時は毎回同じパターンなのですが、普段当ブログの読者でない方々に読まれるようになると、新自由主義の宣伝にたっぷり浸って疑問を持たない方々からのネガコメが急増します。
そういうことを書かれる方々は、所得税の累進度合いも緩和して、消費税30%とか40%にしてほしいんでしょうかね。そもそも、そういうことを書かれる方の大半が中所得層以下だと思うんですが、なぜ自分たちの利益にならないことを声高に主張されるのか理解できません。

hgleehglee 2010/06/20 12:20 面白く読ませていただきました。

読ませていただいて、素朴に2点疑問があります。
1. 2つめのグラフは絶対額ではなく負担率を表わしているので、ここから次の結論を引き出すのは厳しくありませんか?
「一目瞭然、1億円を超える超高所得者の税負担が軽くなっている。」
(たとえば、負担率がもっとも高い〜1億円の人の場合、26.5%なので、〜2,650万円。
その横の〜2億円の人の場合、25.2%なので、〜5,040万円。税負担が軽くはなっていませんし。。。)

2. また、「逆進課税かどうか」という視点で言えば、「2千万円〜1億円の層」と「1億円〜の層」を比較すると確かに「1億円〜の層」の方が負担率が低くなっていますが、一般に最も人数が多い「0〜2千万円の層」と「1億円〜の層」を比較すると、「1億円〜の層」の方が負担率が高いのですが、それでも、「超高所得者が優遇されている」と言えるのでしょうか?

「これが、日本の税制がいかに超高所得者を優遇しているかの動かぬ証拠である。」
という結論に持ってくるのは無理があるかもなと思いました。

kojitakenkojitaken 2010/06/20 12:36 hgleeさん、「税負担が軽くなっている」というのは、もちろん「税負担率が軽くなる」という意味です。「税負担額が貧乏人も大富豪も同じ」税制は「人頭税」と呼ばれ、実際にイギリスのサッチャー元首相が導入したことがありますが、猛烈な英国民の不評を買って、サッチャーは退陣しました。人頭税は、アダム・スミスが「最悪の税制」として厳しく批判した税制です。
「0〜2千万円の層」と「1億円〜の層」を比較すると、「1億円〜の層」の方が負担率が高いのに、「超高所得者が優遇されている」と言えるのは、租税負担能力に応じて納税するという大原則がある以上当然であって、彼ら(超高所得者)より少し所得の少ない層よりも負担率が低いことを、私は問題視しているわけです。
それを好まない金持ちたちがいるなら、彼らが集まって夜警国家の独立国でも作ればよいのです。もっとも、そんな国家なんて作りようがありませんけどね。

toriaezzztoriaezzz 2010/06/20 13:10 「総額」で考えたらいいのでは。
年収100億の人の所得税がたとえ10%だとしても、一年で10億払ってるんですよ?
年収1000万の人が100%払っても、100年分ですよ?
年収高い人がどれだけ総額的に貢献しているか…。
ちなみにkojitakenさんの年収、また年にどれくらい税金を納めてますでしょうか?
いえ、参考までに。

「率」しか見てない人は、

toriaezzztoriaezzz 2010/06/20 13:11 あらら。途中送信でした。
でもまぁ、何でもいいです。失礼に感じましたらすみません。
質問はしてますがレスは見ないかと思います。ごめんなさい。

kojitakenkojitaken 2010/06/20 13:21 toriaezzzさん、租税には「応能負担原則」というのがあるんですよ。「応能負担原則」を検索語にしてGoogle検索をかけてみて下さい。

Gl17Gl17 2010/06/20 15:24 先日某所の記事でもありましたが、年収高い人はそれだけ「社会から与えられている」とも言えるので、貢献度とかを階層違いの人と比べても無意味でしょう。
出世したのは個人の才覚かもしれませんが、しかしその収益のベースになっているのは社会一般や市場があればこそです。収入の高い人は「社会全体」に対してその分強く依存しているのです。
昨今は若者のクルマ離れとか喧伝されているように、社会のベースが衰退すれば上層も衰退せざるを得ないのだし。

kojitakenkojitaken 2010/06/20 15:41 Gl17さん、企業の中核で働いている技術系の人などで、幹部社員になっている人たちの中には、本当に尊敬すべき人たちは大勢いますが、そういう人たちが「頑張った者が報われる社会を実現させるために所得税の累進制を緩和し、法人税を減税せよ」などと口にするのを聞いたことがありません。そんなことを口にするのは、世襲経営者の御手洗某だとか、世襲三世元総理の安倍晋三など、個人の才覚以外の恵まれた環境によってのし上がっていった人物が多いように思います。

statsreadstatsread 2010/06/20 20:27 元の統計の方もざっくりと読ませていただきましたが、
「超高所得者が、分離課税だらけの所得課税の恩恵を受けていることはいうまでもない。」
というところが重要なんでしょうね。
所得階級が5000万円を超えたあたりから「株式等の譲渡所得等」の割合が急上昇しています。
譲渡所得は申告分離課税で税率が総合課税の税率よりも低いので、結果として実効税率が下がってしまいます。
このあたりのことは、多分意外に知られていないことではないかと思うのですが、
過去の記事で既出かもしれませんが、本記事からのリンクがないようでしたので、
ちゃんと説明しておかないと誤解を招いてしまうのではないかという気がします。
逆に言えば、分離課税の問題を解決しないで、総合課税の税率のみを上げると、
ここで指摘される問題がより深刻化してしまう危険性があります。

kojitakenkojitaken 2010/06/20 20:34 statsreadさん、ご指摘の通りです。「譲渡所得は申告分離課税で税率が総合課税の税率よりも低いので、結果として実効税率が下がってしまいます」という事実は、菅首相のブレーンとも言われる神野直彦氏(東京大学名誉教授、税制専門家委員会委員長)が口を酸っぱくして主張していることであって、本エントリはもともと神野氏の主張を裏付ける傍証として書いたものでした。「逆に言えば、分離課税の問題を解決しないで、総合課税の税率のみを上げると、ここで指摘される問題がより深刻化してしまう危険性があります」というご指摘もその通りだと思うので、本文に追記の形で紹介させていただきたいと思います。

totoronokitotoronoki 2010/06/21 09:50 私の大学の経済学の教授も同様のことを話していました。
「能力に応じた税負担であるべき」というのは経済のバランスを保つための大原則な訳ですが、このあたりを理解していない人が多いと思います。

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