「ここは感染地域と離れていると思っていたが…」。17日、家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の症状を示す牛がいることが分かった宮崎県新富町。被害が集中する都農(つの)、川南(かわみなみ)両町との間には高鍋町を挟んでおり、それが安心感にもつながっていただけに、感染を疑わせる報は新富町に衝撃を与えた。
隣の高鍋町にある県家畜改良事業団、県立農業大学校で相次ぎ、感染疑いの牛が確認されたとはいえ、両施設は川南町側に近接しており、口蹄疫の症状を示す牛が見つかった酪農場とは約10キロも離れていた。新富町の富田次男総務課長は「都農、川南から相当離れているので、とにかく驚いている」と動揺をあらわにした。
町側は警戒を緩めていたわけではない。4月下旬に対策本部を設置、町内に2カ所の消毒ポイントを設け、防衛策を講じてきた。それでも16日、「口蹄疫の症状を示す牛が見つかった」と役場に情報が入った。町は消毒ポイントを急きょ3カ所増設し、町職員はその作業に追われた。「これが見えない敵との戦いか」と富田総務課長。
口蹄疫の症状を示す牛が見つかった酪農場の牛約20頭は、感染疑いの有無が分かる前に殺処分された。この酪農場の周辺一帯には、100戸を超す畜産農場があるという。「一刻の猶予も許されない。拡大を早く止めなければ」。町関係者はうめくように言った。
=2010/05/18付 西日本新聞朝刊=