米軍普天間飛行場の移転先として日米共同声明や閣議決定に明記された沖縄県名護市辺野古崎。サンゴ群はもちろん、絶滅危惧[きぐ]種の天然記念物で、人魚のモデルとも言われるジュゴンをはじめ、多種多様な野生生物が生息する貴重な海だ。
本土ではあまり知られていないが、米国文化財保護法に基づきジュゴンの保護=基地建設中止=を求め米国防総省を訴えた「ジュゴン訴訟」で、サンフランシスコ連邦地裁は2008年1月、「計画はジュゴンへの影響などを評価、検討していない」との“原告勝訴”の中間判決を出している。
訴えたのは、この海を守る運動を続けている市議の東恩納琢磨さんら。当初のV字滑走路建設計画に対し、日本の文化庁が「ジュゴンを直接殺すわけではないから、日本の文化財保護法には触れない」との姿勢だったため、03年に提訴した。
米文化財保護法は、米国が他国の文化財に影響を及ぼす行為であれば、米国で裁判できる、としていることから提訴を決断した。門前払いも覚悟していたが、中間判決は原告の主張に理解を示したかたち。同省は、日本が実施する環境アセス結果を待って対応するとしている。
今回の日米共同声明では、8月末までに新たに具体的な位置と工法を決めるとしている。同月ごろまとまるとみられるアセス結果の扱いは不透明だ。
菅直人首相は23日に沖縄入りする意向だが、東恩納さんは「首相の首が替わっただけで、事態は何も変わらない」。辺野古の白砂の浜と青い海、環礁が織りなす光景は、米国で海兵隊員募集のパンフレットに使われているという。(末廣淳)
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