飛び火予断許さず 疑い確認2カ月

(2010年6月20日付)

 口蹄疫の感染疑いが確認され、20日で2カ月が過ぎた。国内初のワクチン接種に踏み切ったものの、封じ込めに至らず。感染は都城市や宮崎市などに飛び火し、予断を許さない状況が続く。県内経済の幅広い業種が受ける打撃も深刻化し、参院選への影響も避けられそうにない。最近1カ月の動きを振り返る。

■殺処分・埋却■

 ワクチン接種後、感染疑いは減少傾向だったが、9日に畜産王国・都城市に飛び火。立て続けに宮崎、日向、西都市や国富町などでも感染疑いが見つかり同時多発の様相となった。一方で、共同埋却も進み始めたことで、国と県は今月末までの殺処分と埋却完了を目標に。しかし、12日には九州南部が梅雨入りし作業に支障も。国は7月上旬へと目標を修正した。

 種雄牛問題では主力6頭のうち1頭に感染疑いが確認され殺処分。県家畜改良事業団(高鍋町)に残っていた種雄牛49頭も殺処分された。主力5頭は6日までに遺伝子、抗体検査で陰性が確認された。

■防疫・補償■

 国と県は国内初のワクチン接種に踏み切った。当初、補償内容が示されていないとして、関係自治体が国に異を唱える事態も。接種は5月22日から始まり、5月末までに大部分で完了した。国は、搬出制限区域のすべての牛や豚を食肉処理し、家畜をゼロにする「緩衝地帯」を設ける方針も示していたが、食肉処理施設の能力が追い付かないなどの理由で断念した。

 殺処分で損失が生じた農家に対する補償や、地域経済再建のための基金創設などを盛り込んだ口蹄疫対策特別措置法が5月28日成立。今月18日には特措法に伴う費用を国が全額負担する政令が閣議決定された。県は2日、殺処分される家畜の時価評価算定基準を公表した。

■政府の動き■

 口蹄疫対策で鳩山由紀夫前首相が1日、来県した。生活再建策などに「万全を期す」と約束したが、本県滞在時間はわずか2時間。翌日には退陣を表明した。12日には、就任直後の菅直人首相が来県。ワクチン接種農家を訪れ意見交換。また、北沢俊美防衛相も17日に来県し、自衛隊の増派などを伝えた。

■影響■

 県が14日に公表した、西都・児湯地区の商工業者を対象にした調査では、85%が売り上げ減少など「影響がある」と回答。また、感染疑い1例目が確認された4月20日から5月31日までに、ホテルや旅館で1万8千人分の宿泊キャンセルがあるなど、被害のすそ野が着実に広がっている状況が明らかになった。

 間近に迫った参院選への影響も。県選管は18日、立候補予定者や政党に対し、選挙期間中、畜産農家に演説会の出席要請をしないことなどを求めた。