●「グラディウスII」作曲時のエピソード |
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第1回目のインタビューでは、ゲームミュージックデビュー作がMSX2版「キングコング2 甦る伝説」だったという意外過ぎる(?)エピソードを披露した古川氏。今回は代表作「グラディウスII」にまつわるエピソードなどをお伝えしよう。 |
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鴫原: |
古川さんがコナミに入社された(1986年)頃は、アーケードゲームでは主としてFM音源を使用してBGMを作っていたかと思います。率直にお尋ねしますが、当時の基板に搭載されていた音源は使いやすかったですか? |
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古川: |
私の場合は入社前から「DX7」(※)を使い慣れていましたので、FM音源はとても使いやすかったですよ。表現力も豊かでとても便利でしたね。
※「DX7」:1983年にヤマハから発売された、当時としては珍しくFM音源を搭載していたデジタルシンセサイザー。 |
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鴫原: |
一方、家庭用ソフトではMSX版の「グラディウス2」や、ファミコン版の「悪魔城伝説」などのように、ROMカセットに特殊な音源チップを搭載して通常では出せない音色を作ったりパート数を増やしたりしていたものがありました。当時、家庭用ソフトで音源用のチップをわざわざ乗せてまで音にこだわったメーカーはコナミだけだったように思いますが、チップを乗せたいと最初にお考えになったのは古川さんなのでしょうか? |
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古川: |
「SCC」(※「グラディウス2」などに内蔵された音源チップで"Sound Creative Chip"の略)のことですね。これは私の発案ではなく、サウンド担当部署の上の方が乗せようと決めたもので、私はただそれを使って作曲をしていたという感じですね。 |
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鴫原: |
「SCC」のおかげで、曲のクオリティが従来のPSGのみで作ったときに比べて飛躍的に高まったと思われますが、ご自身ではどう思われますか? |
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古川: |
そうですね、従来のPSGだけで作った曲に比べてクオリティは格段にレベルアップをしていたのではないでしょうか。「SCC」はある意味、マルチシンセみたいなものですからね。 |
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鴫原: |
古川さんの作品といえば、やはり往年の名作『グラディウスII』に触れないわけにはまいりません。私が特に面白いなと思ったのが5面のモアイステージで、途中でモアイの攻撃が激しくなる「怒りモアイ」地帯に突入すると、BGMのテンポが急に速くなって3拍子に転調しますよね?この演出に恐怖感をあおる演出が が、これは古川さんのアイデアだったのでしょうか? |
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古川: |
いえ、これは私ではなくてディレクターからの指示があったのであのような曲にしたかと記憶しています。もちろん、私自身もこのアイデアに賛成したうえで作曲をしましたけどね。 |
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鴫原: |
7面のボスラッシュステージでは、ゴーレムとテトランの出現時は旧「沙羅曼蛇」のBGMのアレンジ版なのに、イントルーダが出現するときだけは別のオリジナル曲へと変わりますが、これには何か理由があるのですか? |
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古川: |
ゴメンナサイ、それはちょっと記憶にないですね……。多分、他のディレクターやサウンドスタッフの意見を反映させた結果、あのような構成になったのではないかと思います。 |
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鴫原: |
そういえば「グラII」が人気の頃に、「ゲーメスト」や「マイコンBASICマガジン」などの専門誌にBGMの楽譜が掲載されたことがありましたよね? そもそもBGMの楽譜が複数の雑誌に、それも数ヶ月間にわたり掲載されるということ自体かなり異例のことだったと思いますが、やはりこれも編集部および読者からの要望・人気が高かったからだと考えてよろしいですか? |
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古川: |
はい。「グラII」は自慢ではありませんが、音楽の評判も当時たいへんによかったように記憶しております(笑)。後にいろいろな形でアレンジされたりCD化されたりしたのが、その何よりの表れではないでしょうか。 |
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●ゲームミュージックCD制作への道 |
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鴫原: |
1989年になると、古川さんはゲームミュージックCDを作るための部署に異動されていますよね。差し支えなければ、異動が決まるまでの経緯を教えていただけますか? |
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古川: |
ゲームミュージックを作曲するかたわら、徐々にCD制作の仕事も増えてひんぱんに(当初の勤務地だった)神戸から東京へ出張するようになったので、東京へ転勤してCDレーベル室に異動する話が持ち上がったのがきっかけですね。当初は神戸生まれで神戸育ちの自分にとってかなり抵抗があったのですが、最終的には当時の上司が自宅にまで来て説得されたので東京行きを決めました。 |
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鴫原: |
わざわざ上司がご自宅まで説得に来たんですか! まさにゲームミュージック業界「三顧の礼」状態ですね(笑)。では、ゲームミュージックCDとして自身の作った曲が初めて商品化されたCDのタイトルは何だったのでしょうか? |
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古川: |
確か「A-JAX」が収録された「コナミ・ゲームミュージック・スペシャル」ではなかったでしょうか。ゲームミュージックという形ですが、自分が作った曲が実際にCD化されたのでてとても嬉しかったのを覚えております。まさに夢が叶ったような気持ちでしたね。 |
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鴫原: |
「A-JAX」も軽快でノリがよく、オーケストラヒットを取り入れたりしてカッコイイ曲が多いですよね! そういえば「A-JAX」では、3DステージのBGMが途中で(2、5、8面の3ステージとも)みんな同じ曲になる演出がありましたが、これには何か理由があるのですか? |
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古川: |
これは別のスタッフからの指示で同じBGMにしたのだと思います。なぜそうしたのかまではわからないのですが、もしかしたらプログラム容量的な理由があったのかもしれませんね。 |
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鴫原: |
当時は主にサイトロンやアルファ、アポロンなどからゲームミュージックCDが発売されていましたが、発売元との契約や収録内容などの交渉も古川さんがなさっていたのでしょうか? |
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古川: |
いいえ。契約交渉などに関しては別のスタッフの担当で、私の場合は曲のアレンジやレコーディングをするのが仕事でした。 |
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鴫原: |
当時のコナミのゲームミュージックCDを見てみますと、原曲以外にもアレンジバージョンが収録されていることが多いですよね。どの曲をアレンジするのかは古川さんご自身がいつもお決めになるのでしょうか? また、これまでに古川さんがご担当された中で、最もお気に入りのアレンジ曲は何でしょう? |
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古川: |
アレンジする曲は私自身が決めることが多かったですね。一番気に入っているのは、「ゼクセクス」の「Battle cry-All Hands to Station!」(※)でしょうか。このアレンジ曲は自分で作曲した部分も多いのですが、ギターを含めトータル的に非常に気に入っています。
※「Battle cry-All Hands to Station!」:原曲はタイトルデモ画面で流れるBGMで、アレンジバージョンは1992年にキングレコードより発売された「ゼクセクス」のCDに収録されている。ライナーに掲載された古川氏のコメントによると、「『ゼクセクス』のBGMは、開発のときからライブで演奏したいという思いをこめて作曲していたので、アレンジもスタジオライブ調の音に仕上げようということで、シーケンス部分をできるだけ少なくしてノリを大切にしました」とのこと。 |
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鴫原: |
個人的な話で恐縮ですが、「サンダークロス」のCDの最終トラックに収録された「グラII」のエンディング曲「Farewell」のアレンジ曲を聴いたときにはあまりのカッコよさに感涙しました。これはご自身の中でも傑作の部類に入りますでしょうか? |
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サンダークロス
FM音源全盛時代の軽快なBGMが楽しめる一品。「サンダークロス」「ホットチェイス」の原曲に加え、古川氏がアレンジを担当した「沙羅曼蛇」の「Cross Fire」(メドレー)と「グラディウスII」の「Farewell」を収録している。 |
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古川: |
ええ、「Farewell」は過去に何度もアレンジしましたが、どのバージョンもとても気に入っていますよ。もっとも随分とたくさん作っちゃったので、もういい加減アレンジし尽した感もありますが(笑)。 |
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鴫原: |
これまでに多くの作品を手がけていらっしゃいますが、これまでに作ったゲームミュージックで最もお気に入りの曲名またはゲームのタイトルはどれになりますか? |
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古川: |
う~ん…あえて1曲となると、やっぱり「Farewell」になっちゃいますね。 |
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