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株式会社アイエヌエイチ
株式会社ウェーブマスター
2009.05.20
 
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●カプコン退職、スクウェアへ
   
安部: カプコン退職のお話を伺います。率直に、退職の理由などは……?
   
下村: 一番大きい理由は、私が制作から外れることになったことです。
   
安部: 入社、5年目くらいですよね。
   
下村: そうなんですよね。
   
安部: 早い(笑)。
   
下村: 「RPGが作りたかった」という理由もあります。だから、絶対RPGの会社に行きたくて。ここだったら確実にRPGの曲を書かせてくれるだろうって会社に行こうと思っていたので、そうなると、スクウェアしかなくて。
   
安部: これはスクウェア大阪だったんですか?
   
下村: いや、東京でしたね。
   
安部: 東京に行っちゃった?(笑)
   
下村: いや、あの。スクウェア大阪も募集してると思って、応募したら「大阪は作曲の人足りてるんですよ」っていわれてしまって!
   
安部: この頃のスクウェア大阪って、何をしていたんでしょう。92~3年?
   
下村: なんだっけかな? うーん、ちょっと当時のタイトルはわからないですね。「それで、よろしければ、東京に一度面接にいらっしゃいませんか?」って言われて、新幹線代を出して下さるというお話で「わー、ラッキー!」って。
   
  (一同笑)
   
下村: 「じゃあ、別に落ちても、東京観光できるからいいや」と(笑)。それで、スクウェア受けたら、幸運なことに採用になりました。
   
安部: じゃあ、結構普通に転職された感じなんですね。
   
下村: もう、普通ですよ、普通に……当時アスキーから出ていた、『ログイン』っていう雑誌があって、その雑誌に連載で「スクウェアはこんなにいい会社です」って、社員がインタビューに答えてるのがあって。それを見て「うわ、なんか、いい会社じゃない?」って(笑)
   
安部: まんまと罠に(笑)。
   
下村: 罠じゃないですよー(笑)それを見て「RPGも作らせてもらえるし……デモテープを送って、不採用になれば、もう才能無いってことだから諦めようかな」って思ってたんですけど、もしこれで採用されたら、もうちょっと、あと、何年かは曲を作らせてもらえるかな、みたいな。だから、「引き抜きじゃないか」とか、「コネじゃないか」とか、すごい言われたんですけど、ぜんぜん、本当に『ログイン』を見て、「応募希望者はこちらへ」っていう、ところにデモテープ送っただけなんですよ。
   
  (一同笑)
   
大野: そのときは赤坂のスクウェア?
   
下村: もう恵比寿ですね、そのときは。
   
安部: ちょっと前後しますけど、退社直前にカプコンで『ブレスオブファイア』を一部担当されていますね。念願のRPGですが。
ブレス オブ ファイア I~V オリジナル・サウンドトラック スペシャルボックス
長らく単体で音源化されなかった『ブレスオブファイア~竜の騎士~』と最新作『V』を含む、11枚組307トラックの大作BOX。作曲陣も藤田靖明、下村陽子ほか(『竜の騎士』)、竹原裕子(『II』)、海田明里(『III』)、青木佳乃(『III』、『IV』)、崎元仁(『V』)と間違いない。通販限定2000セット。
   
下村: そうですね、初めてカプコンがRPGを出すというので……先ほどもお話したんですけど、カプコンのサウンド・チームは、基本的にアーケードはアーケードの曲しか担当しないし、コンシューマはコンシューマの曲で担当が分かれていたんです。私はアーケードだったので(『ブレス』を担当するのが)ダメだったんですけど、「どーーーしてもRPGがやりたいから、1曲だけ、お願いだからやらせてーー」ってコンシューマーのチーフだった人に泣きついて……。
   
安部: じゃあ、1曲だけなんですか?
   
下村: 1曲だけですね。どこの曲かももうちょっと覚えてないんですけど(笑)
   
安部: 覚えてないんですか!(笑) 『ブレス』はサントラがセルピュータのボックスしか存在しないようですね。長い間音源化されなかった『1』も収録されていますね。
   

 
●大阪から東京へ
   
安部: そんなこんなでスクウェアに移籍したのが1993年。
   
下村: 『ライブ・ア・ライブ』ですね。
ライブ・ア・ライブ
オリジナルサウンドトラック

記念すべきスクウェア移籍1作目。『ストII』のように多様な世界観と主人公を持つRPGで、印象的なメロディによる個性付けは下村氏の真骨頂。長らくプレミア価格が付いていたが、昨年iTunes Storeでの配信が始まったので音源が欲しい下村ファンはマスト。
   
安部: 制作環境含め、ガラッと変わった感じですか? それとも『ストII』の延長線上のような環境でしょうか?
   
下村: 環境は全然違いましたね。ただ、書く曲の内容は…、たぶん……やっぱり『ストII』であんないろいろ世界観を書ける人なんだと、うれしい誤解なのかわかんないんですけど(笑)、そういう風に思ってもらえたからか、いろんな世界観のあるゲームに向いてるんじゃないか……ということで入社第一作がこのタイトルになったんじゃないかと思うんですけど。
   
安部: ちょうど開発が始まったころの移籍ですか。
   
下村: 開発はもう始まっていたと思います。おそらく作曲する人間の手が足りない……みんな埋まっている状態で、たまたまそこの採用枠に引っかかったっていう感じですね。
   
安部: 時田さんがディレクターで。長い間プレミアの付いていたサントラでしたね。
   
下村: いまはもうiTunes Storeで配信が始まったので……。
   
安部: 環境的な変化で困ったことはないですか? 西から東へ、会社も変わって、同じなのはスーファミだけ、という状況で。
   
下村: 開発環境も全然違ったので……。困ったことというよりは、こんなに恵まれていいんでしょうか、という。あ、カプコンがちゃんとしてなかったわけじゃないです! 当時のスクウェアが、業界的に恵まれた環境を特色とした会社だったと思います。すべてにおいて「え、いいの、これで?」という感じで、部屋は個室だし、裁量労働制で自由な時間に働けるし。楽しかったですね。何気ない会話の中にゲームのアイデアが出てきたりするような、すごく自然な環境で仕事ができた職場でした。それまで私自身に余裕がなかったので、それが……すべて制作に時間を使える環境になった、という感じです。
   
安部: 『ライブ・ア・ライブ』で興味深いのは『キャプテン・スクウェア』というミニゲームがあります。ゲームインゲームという設定のせいか、いまでいうチップチューンの走りみたいな曲ですね。ローファイな音源っぽく振る舞うのは、ずいぶん時代を先取りしてる感じがありますが、どういった経緯でこうなったんでしょう?
   
下村: そうですね……単純にそれは……飲んでるときかなんかに(笑)。「未来のゲーム機だから、超イイ音源が積まれてるかもしれないけど、そこはなんか懐古主義っぽく、ファミコンの音っぽいので作ってみたら、実際に(スーファミで)鳴ってる音と差別化ができて面白いんじゃないの」ということをうっかり言ったら、「ああ、そういえばファミコン音源の仕事やったことあるんだよね? じゃあやって」みたいな。言ったもん勝ちなのか、言ったもん損なのかわかんないですけど(笑)。ホントに、普通に会話の中で「じゃあ、やろっか」という感じでしたね。
   
安部: この時代にやってるのは早いですよね。あまり例を知らないです。
   
下村: そうなんですかね……。
   
安部: 古くはアーケードからの移植モノはすべてそうだといえるかもしれませんが。チップチューンの最初って何ですかね?
   
大野: ……YMO。
YELLOW MAGIC ORCHESTRA
あまりにも有名すぎるYMOのファースト。「ほかの音源チップを再現すること」を広義のチップチューンととらえれば、『サーカス』『インベーダー』をKORG PS-3100で再現したという『COMPUTER GAMES』は、黎明期のチップチューンかもしれない。
   
安部: ああ、なるほど。確かにそうですけど、それは置いときましょう(笑)。
   
下村: あんまり、ゲームの中では再現するシチュエーションがないんで、ゲームでは例がそれほどないかもしれませんね。たまたま私の場合、ゲーム機の中のゲーム機という設定があったのと、『スーパーマリオRPG』でやったんですけど、変身して昔のマリオのドット絵になるシーンがあって、そこでやっぱりファミコンの音を耳コピして。
   
安部: 耳コピなんですか(笑)。
   
下村: 耳コピです(笑)。基本的に耳コピでやるしかないんで……。もうすぐ終わるよーってときは早くなって、最後プレイヤーアウトの音楽まで鳴るっていう。『マリオRPG』は『スーパーマリオ』の曲も鳴ってるわ『FF』の曲も鳴ってるわで(笑)。
   
安部: 『FF』も鳴ってますね。
   
下村: そうなんです。それもなぜか耳コピしました、社内の曲なのに(笑)。耳コピしたんですけど、なんか1か所ちょっと違う気がするって、でも植松さんお忙しいから聞けないなぁ……って思っていたんです。それで、光田くんに「なんかさぁ、これおかしいと思うんだけど」って相談したら「間違ってるよ!」って指摘されて、直しました(笑)
   

 
●シモムラ・パーカッション・オーケストラ
   
安部: 今日のインタビューでどうお聞きしようかな、と思っていたことに「下村節」という言葉があるんですけど。
   
下村: あぁ……。
   
安部: これが確立されたな、とご自身で感じたタイミングとかって。
   
下村: どうなんですかね? 「下村節」って言われるんですけど、自分ではわからなくて。
   
安部: 定義はよくわかんないですよね。Wikipediaには「16ビートのバトル曲」なんて書かれていますが。なんとなくわかるんですけど。とはいえどこかに「これが下村節だ!」って書いてあるわけでもないし。その一方で下村さんをインタビューしといて触れないわけにはいかず、どうしたものかと思って、とりあえず素直に聞いてみました(笑)。
   
下村: 「下村節」は自分でもわからないんですよね……。なんなんでしょうかね、16ビートってわけじゃないんですけど、たぶん……。ドラムとか書けなかった人間なのに(1回目のインタビュー参照)、リズムとかにたくさんトラック使っちゃうんですよね。細かいリズムを打ち込んで……。16ビートというよりは、細かいリズムに熱い、長いメロ、みたいな感じなのかな、と思うんですけど。アツめのバトル曲。……バトル書くのイヤなんですけどね、私(笑)
   
安部: イヤなんですか!(笑)
   
下村: しんどいんですよ! バトルってホントに! いろんなところでインタビューのたびに言ってるんですけど、バトルはね……しんどいんですよ、本当に。
   
安部: しんどい……すごい根本的な質問ですが、作曲するときはどういう心構えなんですか? 「さあやるぞ!」なんですか?
   
下村: 「あぁ……やんなきゃ……」です(笑)。
   
安部: バトル3曲やんなきゃ、って。
   
下村: 本心はそれですけど(笑)、おっしゃるように、バトルのときは「おっし、やるぞ」という感じで気合いを入れることが多いですね。スルっとできるときもあるんですけど。
   
安部: 最近の担当されているゲームは大規模なものが多くてあまりバトルバトルした感じが減ってますか?
   
下村: いや、そうでもなくて……『キングダム ハーツ』なんかは半分ぐらいバトルが占めちゃうので、多いですね、バトルは。あとは……自分ひとりじゃなくて、何人かで共作となったときに、「なんであたしだけこんなバトルばっかりなの! お願いだからバトルはやめてぇぇ!」みたいな(笑)。
   
安部: 結局、何なんでしょうね、「下村節」って。
   
下村: 何なんでしょうねえ。むしろ皆さんに「下村節」ってのがどんなのか聞きたいぐらいですね(笑)
   
安部: アンケート取ればハッキリしますかね。これが下村節だって。
   
下村: みんなバラバラだったりして(笑)。
   
  ※「下村節」についてご存じの方はGA-CORE内「これが下村節だ!」宛までご一報ください。
   
下村: (インタビュー中にかかっていたBGMを聴いて)あ、この曲は……。
   
安部: 『キングダム ハーツ』ですね。
   
安藤: この辺が「下村節」なんですかね。
   
安部: ツーバス鳴ってますね。
   
安藤: 後ろで鳴ってるビートが細かめな感じですね。
   
下村: 細かいです。スネアを3種類とか入れちゃうんで……。打ち込みのループものも……必ずフラムとかロールとか入れて……。でもリズムが細かいって、特別珍しいことではないと思うんですけどね…。
   
安部: この曲、The Black Magesより早いですね(笑)。リズムがシンプルな曲ってないんですか?(笑)
   
下村: ……ケン? 8ビート。
   
安藤: ケンの曲(『Fight it Out』)もノリは16ビートだったりしますよね。
   
下村: キメだけ16だったりとか、スネアだけ16だったりとか……結局そこに行きたいのね、みたいな(笑)。
   
安藤: やっぱり、定義として16ビートってのはあるかもしれないですね。
   
下村: 細かいんですよね。ドラムとかベースが書けなかった時代に、がんばって書いたのを先輩に見てもらったら「どうしてすべてが8ビートなのに、ベースだけ16なの?」って指摘されて。今だったら恥ずかしくてお聴かせできないんですが、当時はその意味がわからなくて。「え? 何で? このベース、かっこいいじゃないですか?」って思ってたんですけど(笑)。音楽、というかポップスのセオリー的には無茶苦茶なことをしてたみたいです。今もしてますね、きっと(笑)
   
安藤: 逆にそれが味になったと。
   
下村: そう……かもしれないですね。堂々と細かいリズムとか、細かいベースとか。むしろベースは最近シンプルになってきて。ドラムはどんどんループ切り貼りして、足したり引いたり……細かく作っちゃって……楽しいんですよね(笑)。
   
安部: 楽しいんだ(笑)。
   
下村: すごいノリノリのループフレーズができたときなんか、このループだけで戦闘曲できた! って気持ちになるぐらい。『パラサイト・イヴ』をやってるときはループを入れるということがあまりできなくて、ああいう曲なのに、ほとんど打ち込みでリズムを書いてたんです。で、アメリカ人のマニピュレータが波形の落とし込みとか担当してくれてたんですけど、そのときに「ヨーコ、オマエの曲はパーカッション・オーケストラだ! 何でこんなにパーカッションにトラック使うんだ!」っていわれました(笑)。
   
  
  次回は、フリーになり、新しいチャレンジを続ける下村さんをお伝えします!




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★次回 下村陽子インタビュー 4/4 は、2009.05.27公開です
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