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株式会社アイエヌエイチ
株式会社ウェーブマスター
2009.06.17
 
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●細野さんも持ってたOMY
   
安部: OMYの時期はこのころでしたっけ?
   
佐野: いつでしたっけ。
   
安部: トルバの1枚目が94年です。
   
安藤: 3枚、トルバドールレコード(※細江さんのインディーズ・レーベル)でリリースされていて、その後、再販という形でポニーキャニオンから出しました。きっかけは細江さんがナムコを退職された時、『Escape Goat』を企画して、一緒にやりませんかということで、僕と細江さんとの 新たなパイプができて、それからトルバ系のCDをメジャーで売り出したんです。
   
佐野: なるほどなるほど!
   
大野: 細江さんはナムコ辞めてそのままアリカに?
   
佐野: そうです。すぐアリカ。
   
安藤: それで「OMYって面白いけど、これ、発売できるの?」っていう流れになって。とりあえず念のためYMOの方々にお伺いたてないと筋が通らないだろうということで、大野さん経由でお願いして。
   
大野: アルファ経由で許可をお願いしたら、細野さんがすでにOMYのアルバムを持って いて知ってたよって言われて驚いた記憶がありますね。
   
佐野: ええええええっ。
   
安藤: で、結果的にOKということになって。トルバから出ていた3枚をポニーキャニオンから出して、そのあとに完全新作ということで『テクノデリュック』を作りましたね。ちょうど自分がサイトロンを辞めるときだったんで、『TAISHOKU』がピッタリマッチしちゃって(笑)。そういえばOMYって、レコーディング当日にビックリしたんだけど、歌詞とか全くできてないんですよね(笑)
   
佐野: そうですよ(笑)
テクノデリュック
YMOYMOと言い続けて30年、言ってるうちにホントにYMOに近づいちゃった! 雰囲気を踏襲しつつ完成度の高いオリジナル曲から、単に上げ下げをひっくり返しただけだが期待を裏切る感じがたまらないOMYの4thアルバム。本家でも一番オイシイとされる中期YMOを参考に作られた。インタビュー中の『退職』もこのアルバムに収録。
   
  (一同笑)
   
安部: そうなんだ(笑)
   
安藤: レコーディングの歌入れ直前に「さあどうしようか」って(笑)。ロビーで「ここはじゃあこれ」ってやるの。
   
安部: 元歌の置き換えならなんとかなりそうですが……。
   
安藤: 右分け右、とか。
   
佐野: あれはまさにそうでしたよね。
   
安藤: リストラでー……あと会社やめるきっかけって何がある? って。
   
佐野: そのわりにはいい歌詞でしたよね(笑)
   
大野: ブラックなんだけど、誰かを傷付けたりしない感じがうまいなあと。
   
安藤: 「社長の娘に手を出して 退職の勧告」って(笑)
   
佐野: 懐かしい。よくやってたなあ。
   
大野: それぞれ役割があったよね。
   
佐野: 佐野本龍一、細野江晴臣、相原隆幸広に佐々武秀樹ね。そのころは本物の松武さんとお仕事をご一緒するとは思ってもみませんでした(松武秀樹氏はKORG DS-10のデモ曲及びプリセット音監修を担当) 。
   
安部: OMYは雑誌『SPA!』にも掲載されるほどでしたけど、セールス的にはどうでした?
   
安藤: 最初に出した3枚はゲーム・ミュージックじゃない分野で結構注目されましたよ。当時のプロモーターの松本さん(現マーベラス取締役)という方で、テクノ系にも強くて。
   
大野: とりあえず、レコード屋のYMOの棚に入れてもらうという作戦(笑)。ON AIR EAST(現O-EAST)でのライブとかもあったねえ。
   
佐野: やりましたねえ。
   
安藤: 佐々木さんが松武さんのマネをするの。
   
佐野: シンセじゃない「タンス」の前で(笑)
   
安部: 『リッジ』にしろOMYにしろ、結構世間の反応とは関係なく楽しんでいた感じですね。
   
佐野: まあでも……昔って、今ほど反応がビビッドにわかんないですよね。当事者が一番喜んでやってる感じ。
   
安部: ON AIR EASTでのライブは成功でした?
   
佐野: ON AIRは……客席、オールシッティングでね(笑)
   
安藤: オールシッティング(笑)。YMOのお客さんもそうだしね。
   

 
●『バーチャファイター』みたいな曲がいいと思います!
   
安部: そして『鉄拳』ですか。
   
佐野: だんだん暗黒期になってきましたね(笑)
   
安部: CD用のアレンジ仕事ですね。これはご自身でやりたい、ということで参加したんですか?
   
佐野: それまでアレンジは外の方に頼んでいたのを、細江さんとかと社内でやりたいって騒いで。
   
安部: 『鉄拳』って、これまでの佐野さんの作風とはまた全然違う感じの曲調かと思いますが、難しくはなかったですか?
鉄拳タッグトーナメント
ダイレクト・オーディオ

『鉄拳』関連のCDは異常にリリースされているが、中でも外伝的な『TT』のサントラはハズレなしのかっこよさ。アレンジも4曲収録されていて、『YOSHIMITSU VS SANODG』のように参加コンポーザー4名がそれぞれリミックスを担当している点にも注目。一方で『鉄拳3』系CDは結構な数がリリースされていて、チョイスが難しいので予習して購入したい。まずは『arcade soundtrack』から。
   
佐野: その時のはアレンジというよりはリミックスなんで、それほどではなかったです。
   
安部: 『ゾルギア』のLDも同時期です。キャラ紹介シーンの曲を書き下ろしで。
   
佐野: なぜか書き下ろしましたねー。
   
安部: ライナーノーツがお嫌いとサノウィキに書いてますけど。
   
佐野: 当時のゲームサントラ系のライナーノーツが苦手で。「どーもー、ナントカでーす」ってヤツ。じゃなくて、ストイックにしたかった。輸入盤のCDってライナーないじゃないですか、あれぐらいに。『リッジレーザー』のときはそうしてもらいました。
   
安部: 「口出しをした」とあります。
   
佐野: ものすごかったですね、口出しの仕方が。
   
安部: 具体的には? 上がってきたもの(ジャケットなどのデザイン)に対してダメ出しをしたということですか?
   
佐野: 上がってくる前から。こういうのヤダ、子どもっぽいのヤダ、と。
   
安部: ゲーム画面を使うとどうしてもデザインに制限が出てしまいますよね。『リッジレーザー』はのちにCD化されています。
   
佐野: あ、口出ししたのはLD版じゃなくて、そのCDのときですね。『レーザー』は異常に売れたんですよね。
   
安部: この製品自体は『ゾルギア』のLDの流れで製品化されたんですか?
   
佐野: 当時、ゲームのLDってコンスタントにリリースされていたので。
   
安部: あ、LD自体のタイトルは『リッジレーサーLD』なんですね。
   
佐野: それのサウンドトラックだから、名前を『リッジレーザー』にしたら、プレイステーションの『リッジレーサー』の発売時期とタイミングが合っちゃって、初代『リッジ』のサントラと間違えて買う人がいっぱいいて……という。
   
安部: ジャズアレンジと「GRIP」のアレンジを担当されていますね。
   
佐野: そう、こういうクラブジャズっぽいのが好きになったころです。
   
安部: でもこれ、初代『リッジ』の純粋なサントラだと思って買った人はショックだったろうなあ(笑)。テクノからジャズ系に流れますが、作風の変化の原因は。
   
佐野: ホント、当時、いろいろな音楽を聴いていたので……結構ジャンル偏ってますけど。なんでジャズにしたんだっけ……。US3(アス・スリー、UKのジャズ・ラップ)とか、UFO(United Future Organization)みたいなジャズをネタにした感じの曲がやりたかった。
   
安部: この頃に限らず、佐野さんって周囲の評判を気にするタイプすか? それとも、気にせず我が道を行く?
   
佐野: このころはそんなに気にしてなかったんですけど、このあと、ホラ、2ちゃんねるっていう恐ろしい……批評文化がやってくるじゃないですか。徹底的に飲み込まれましたね……。『ドラッグオンドラグーン』のときはホントひどかった。まさにボコボコという(笑)
   
安部: 一方でこのころ機材方面では変化あります?
   
佐野: Roland JD-800、JD-990を軸に。CubaseのAudioが始まったころ……CubaseVST。オーディオはそんなに積極的には使えなかったけど。あと、SampleCellっていうのがあって、Mac自体をサンプラーにする、ボード込みのサンプラー。それでいろいろ作ってたころですね。AKAI S-1100の後、Macでやったほうが楽になってきた時代です。全部普通にミキサーに立ち上げて。ミキサーも最初はProMix01というヤマハのデジタルミキサーの初期のモデルを使ってて。
   
安部: なるほど。このころの曲に限らず、佐野さんってメロディから作る曲が少ない印象ですけど。
   
佐野: そのとおりですね。絶対コードから。歌モノやるとコードに合わせてメロが無理やりになるから必ず怒られますね。
   
安部: ということで『鉄拳』のアレンジ仕事を経て……『ゼビウス3D/G』まで、いろいろなタイプの仕事が入ってきますけど。
   
佐野: (笑)
   
安部: サノウィキによると、毎回いろいろ何かチャレンジしている感じがあります。
   
佐野: いやー、企む、って感じですが。
   
安部: コンポーザーさんって、単純に曲を作ることに専念する方もいれば、音楽という枠組み自体をどうこうするタイプの方もいらっしゃる。
   
佐野: ちょっと、批判めいてるかもしれないんですけど、当時、何にも考えないである意味自動的に曲を書いてる人が多いと感じたんで……なんとなくですけど、それに対するアンチテーゼといいますか。何も考えずに曲を書くのが好きじゃなかった。一人で小規模なゲームを担当しているうちはよかったですけど、大きなゲームをたくさんの人数でやってると、ごった煮になってきちゃうんですよね。そういうのが大嫌いで。「書けばそれでいいのか?」ということに対する疑問が。あと、縛りが好きだったんで。
   
安部: 制限のあるなかでの作曲ですね。古きよきゲーム・ミュージック的な。この頃の佐野さんの曲は必ず枠組みを攻めている感じがします。それが「縛り」?
   
佐野: 縛るってのはグッと来ますよね(笑)
   
安部: グッと来ますね(笑)。他の方と共作になることもあるわけですが。『プロップサイクル』とか。
   
佐野: あれは音自体は決まっていて。なんとなくの雰囲気もすでにできていたのでやりやすかったですね。
   
安部: あと、佐野さんの中にルーツがなさそうなゲーム。『ダンクマニア』とか。あ、中学の時バスケ部でしたっけ。
   
佐野: あー『ダンクマニア』。これはいい曲多いんですけどね。
   
安部: 未音源化ですね。
   
佐野: 音源化されてないですね。曲がクラブ・ジャズ。
   
安部: バスケなのに。バスケの曲って何だってのもありますが。
   
佐野: 当時ね、NBAが日本上陸したときの宣伝で、バックにUS3がかかってたヤツがあって、それがイメージにぴったりだったんで、これいいなあって。ナイキかなんかも似たようなアプローチをしているCMをやってて。そこからですね。
   
安部: そういう……「いただきパターン」の作曲も多いですよね(笑)。「あ、これいいな」で決めちゃう感じ。
   
佐野: そうです。多いです。方向性を頂くの。でも、このころから一部の関係者が自分からみると遅れに遅れて「やっぱりテクノがいいよね」とか言い始めて、衝突するんです。「今頃何言ってんの? あんたまず服から変えなよ!」って(笑)
   
安部: 本人否定(笑)
   
佐野: この頃からかなり、暗黒期に入ってきます……。
   
安部: それは何のせいなんでしょうね。変えたい、変えたい、という感じ。
   
佐野: 変えたいし……縛る……というか、色を付けたい。ナントカっていうゲームがあったらこんな感じの曲。『リッジ』とかみたいに。で、とにかく曲を付ければいいや、というのが無責任に思えて。でも、ちょうどその頃、ゲームの規模も大きくなってきて。それまでは自然とコンセプトが確定されて、仕様書とか無くても進められていたものが、うまくいかなくなってきた時代。それでも、当時は「あれ、何か変だ」ってぼんやり思ってたぐらいのレベルなんです。
   
安部: 体系的にゲームを作っていたわけではなかった。
   
佐野: そうですね。まあある意味職人的というか。
   
安部: とっくにプレステ時代ですよね。
   
佐野: だけど、「あれ?」って気がつき始めたころ。
   
安部: 佐野さんって、家庭用デビューらしきものは無いんですか? アーケードの移植だから家庭用も、という流れですかね。
   
佐野: あー、そうですね。あと、その時代って、ちょうど業務用と家庭用のヒエラルキーが逆転する時代で。
   
安部: 業務用のプレステ基板が出て。
   
安藤: アーケードからの移植が前提だったのが、コンシューマーオリジナルが前提に変わった時代。
   
佐野: 家庭用も予算が付きはじめて。制作環境が変わった時代です。
   
安部: このころのお仕事に『ゼビウス3D/G』があります。どうでしょう、『ビデオ・ゲーム・ミュージック』を聴いていた自分が、『ゼビウス』に関わることなった感想は。
   
佐野: あー、それ、思いました。まあでも、『ソルバルウ』ぐらい新しい感じだったらもっとうれしかったなと思った記憶があります。だから、楽しい仕事でしたけど、昔の『ゼビウス』に関われて感無量、という感じではなかったですね。ただ、面の進み方というかゲームのグルーヴが、スピードでガーッと見せるタイプでもないし、殴り合いのような感じでもないから、ちょっといいな、と。
   
安部: アンビエント系の。
   
佐野: そう、そんなに早くなくて、キックは4つ打ちで、っていうのができるのがよかった。
   
安部: 続く『鉄拳3』で急に、テクノからデジロックになりますけど。
   
佐野: もう……とにかく、やりたくてね。
   
安部: やりたかった(笑)。それは、何かに影響を受けて……?
   
佐野: Chemical Brothersですねえ。
   
安部: わかりやすい(笑)。
   
佐野: でも、担当のゲームディレクターの方ひとり以外からは、全く反応なかったですね。
   
安部: この辺の曲から、佐野さんの曲ってリズムが複雑になってきますね。
   
佐野: そうですね。で、『鉄拳3』では曲調に加えて、曲の構成にも強烈な縛りを設定したんで、一緒にやってた岡部(啓一)が体調崩しました!
   
安部: それでも、『鉄拳』シリーズはその後もデジロック色は残りますよね。『鉄拳4』なんかは参加されてないんですか? サノウィキには記述がないんですが……。
   
佐野: あ、そのころはもうサノウィキ更新してなくて(笑)。なんかやらしてもらったような……書いとかないと忘れますね。
   
安部: 書きましょうよ(笑) 『鉄拳T.T.』は参加されてますね。
   
佐野: 『T.T.』はBOOM BOOM SATELLITESのビートをいかに再現するかにかけてましたね。みんなして。楽しかった!
   
安部: 人間ドラムVSゲームミュージック(笑)
   
佐野: で、自分の場合256分か512分音符をスネア連打のオカズを、「バグ」って言われたんですよね……。
   
安部: 前にもバグって言われたんですか? バグってるといわれた曲といえば『F/A』が有名ですが。
   
佐野: 僕だと『ダンクマニア』のときに、アナログ(レコード)のトレース音のノイズ入れたんですよ。ジャーってヤツを、発音数が少ないのに1本専用で使って。で、コンティニュー勧誘の曲で、「針が跳んで曲が繰り返される」というネタを入れといたら、バグって言われましたね。
   
  (一同笑)
   
佐野: まあ、それはおっしゃるとおりで。『鉄拳3』のときは、「こういう曲じゃなくて、『バーチャファイター』みたいな曲がいいと思います」って、バグリスト(レポート)に書いてあって。俺の曲はバグかと。ものすごい怒った記憶があります(笑)
   
安部: それは、QA(品質保証=バグチェック)が書いてくるバグリストですか。
   
佐野: そう。バグリスト書いたヤツも書いたヤツですけど、これを俺のところまで通したヤツも通したヤツだと!
   
安部: そうですよね(笑)。抜いとけよと。
   
佐野: もう、すべてがムカついて。曲がわかんねえならわかんねえでいいからほっといてって。しっかし全然理解されませんでしたね。
   
安部: 佐野さんって、いつも、3、4年、早いですよね。ゲーム・ミュージックとして落とし込むには(笑)
   
佐野: そうかー。でもなーやりたいしなあ。
   
安部: このころにはターゲットマシンがプレイステーション2ベースになりますが、開発環境としてはもうあまり変化がない感じですか。
   
佐野: 基本的には。『鉄拳3』のときは、業務用ではステージが変わるとシームレスに曲が変わるというのを仕掛けたんですけど、PSでは難しかったですね。
   
安部: 結構、音楽的アプローチをいろいろ試行錯誤して提案するけども、他のスタッフに理解されずに、というのも多々ありそうです。
   
佐野: 全くその通りです(笑)。そういう意味では暗黒期だなあ。
   
安部: でも、ナムコ入社直後は楽しかったと発言されてます。楽しかった状態から、暗黒面に落ちた瞬間ってのは、どこだったんでしょう。
   
佐野: それはまさに、音楽に意見を言う人が出てきた……時代というかタイミングがあって。最初は音なんか入っていればいいや、という時代だったのが、だんだんモノを言う人が増えてきて、そこに呑み込まれていった。
   
安部: 今なんか、国民総評論家時代ですもんね。そりゃ『バーチャファイター』みたいなのがいいって言われますね……。厳しい世の中だな……。
   
佐野: でもね、そこから10年ぐらい経つと、「僕は好きでした」って言ってくれる人が出てくるんですけどね。やっと最近、『ドラッグオンドラグーン』も「僕は好きでした」と言ってくれる人を飲み会で見つけたりして(笑)
   
安部: 飲み会でですか(笑)。
   

 
●疲れ気味? リストラ? TAISHOKU!
   
安部: そろそろ、ナムコ退社の時期にさしかかりますが、ストレートに、なんで退職しちゃったんでしょう? やっぱり、社長の娘に手を出して?
   
佐野: あはははは。あ、単純に、『エースコンバット3』のディレクターで、先にキャビアに行ってた岩崎さん、彼から誘われたから。それだけです。
   
安部: ナムコに未練はなかった?
   
佐野: 未練というか、さんざんいろいろやらせてもらいましたし……。それよりも「佐野さん、やりましょうよ」って言ってくれる人と仕事をやりたかったんですよね。自動的に仕事が来る感じが嫌になってきちゃったんでしょうか。誰が書いてもいいじゃん、みたいな。
   
安部: 昔はそうじゃなかった?
   
佐野: 昔は……なんだろうな……。昔は書いてるだけで楽しかったけど。
   
安部: 細江さんたちはもう独立していました?
   
佐野: そうですね。
   
安藤: 細江さん、佐宗さん、相原さんは同時に辞めたんでしたっけ?一緒に誘われました?
   
佐野: そんな記憶もあるんですけど……なんかその時は逆にここは辞めどきじゃないかなって(笑)。細江さんたちのいないナムコサウンドチームに興味もありましたし。
   
安部: 忠誠度はどんなもんでした? 細江さんに対する……。
   
佐野: 忠誠度! 忠誠度というよりも……どう寝首をかいてやろうかとばかり(笑)。絶対的ですからね、業界的にも。いかに自分の居所をさし込むか、というのはすごい考えていましたね。
   
安部: 佐野さんが入社した時代って、細江さんの時代ですしね。
   
佐野: ダントツで細江さんでしょう。でも、僕、細江さんが有名な人って全然知らなかったんで……。「だからよかった」って言われますけどね。
   
安部: そうじゃないと寝首はかけないですね(笑)
   
佐野: でもまあ繰り返しになりますが、入った時は「これはえらいことになった」と思いました。打ち込みの技術だけ見てもすごいんです、あの3人。こっそりデータを見て、苦悩してましたよ。スクロールしてもスクロールしても、曲が進んでいかないんです。データが多すぎて。
   
安部: 数字が変わっていくだけ(笑)
   
佐野: あのころ、PC-9801で、1画面で見て、どれくらい曲が進むかって、128分音符ぶんしかない。つまりほとんど進んでないんですけど、そこにすごいいろいろ書いてある。同じ楽音なのに、途中からエンベロープのカーブが変わってるとか。すごかったですね。曲が途中でハングしてましたからね。データ数多くて。
   
安藤: 相原さんは通常のオーディオベースの楽曲制作でもトラック数がめちゃくちゃ多かったですよ。音色ごとにわけていくと48トラックじゃ足りなくてエンジニアさんもやりくりして苦労していたのを覚えています(笑)
   
佐野: 考えてみると今っぽい使い方なんですよね。今なら無限に持てますから。
   
安部: ナムコ最後の仕事になりますが、未発売の『スターブレード オペレーションブループラネット』がありますね。
   
佐野: いやー楽しかったですねー、あれは楽しかった。卒業制作としてはホントによかった。これをやったときに、「仕事ってのは、一緒にやる人によって全然違うんだな」って実感しました。
   
安部: メンバーがよかった。
   
佐野: そう。ホント面白かった。いいメンツでした。
   
安部: 製品化されなかったのが残念ですが。
   
佐野: 製品化どうこうが吹っ飛ぶぐらい面白かったですね。
   
安部: これ、曲って付いてるんですか?
   
佐野: 曲はあります。前の『スターブレード』と同じで、最後だけ曲が出るってやつで。
   
安部: 基本前作同様SEだけなんですね。
   
佐野: そんな最後だけの曲で、しかも自分が好きだった『スターブレード』なんで逆に自分は絶対無理だって思ったんで、リンダ(石川哲彦氏。『X-DAY2』など)にオファーして。「オマエ書け」って。オマエぐらい『スターブレード』と距離感があるやつのほうがいいからって。
   
安藤: なんか、四文字の。
   
安部: O.R.B.S.ですね。『戦場の絆』で量産型のpodが使われています。
   
佐野: オーブス。The ORBみたいでいいですねえって、デザインの指田さんに言ったらヤヤウケでちょっと寂しかった記憶があります(笑)。懐かしいなあ。あのノリでゲーム作りたいんですよねえ。
   
安部: そうですね、最近はそういうノリで作れるのって、大きいプロジェクトじゃ、ありえないでしょうしね。
   
佐野: ……っていう話がですね、僕の最新の話につながるんですよ! これ、伏線ね(笑)
   
安部: というわけでまたもや伏線です、読者の皆様、4回目のインタビューまで覚えておいてください。
   
  
 

次回は、いよいよ引っ張った伏線の謎と、DS-10についてのお話です!





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★次回 佐野電磁インタビュー 4/4 は、2009.06.26公開です
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