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株式会社アイエヌエイチ
株式会社ウェーブマスター

2009.06.03

 
闇雲に音を出してた小学生、YMOと邂逅す
お小遣いは貸しレコード屋に全部!
YMOと俺
未来がやってきた!FL管、LCD……そしてテレビゲーム
シンセ少年・佐野電磁デビュー
 


GA-COREをご覧の皆様、前回に続きましてインタビューを担当させていただく、安部理一郎と申します。小さな編集プロダクションとバーを経営しつつ、興味本位でお仕事をさせていただいております。皆様の目に触れる範囲のお仕事としては『レジェンド・オブ・ゲームミュージック』の2箱め、3箱めや、ウェーブマスターのブックレット制作なども担当しております。今回は『リッジレーサー』シリーズ、近年では『DS-10』でおなじみの佐野電磁こと佐野信義さんの登場です!
今回の収録は新宿にあるビデオゲーム・バー『16SHOTS』にて行ないました。『16SHOTS』は新旧内外問わず、ビデオゲームを愛する人たちが夜な夜な集う「真剣30代以上しゃべり場」(※もちろん20歳以上ならOKです!)。ロックバーやタイガース居酒屋のように、ゲームのお話ばかりしているお店です。なお、当店はゲームを遊ぶお店ではありません。一応各種ハードはインテリアとして設置していますが、ソフトはお客様による持ち込み制で、当店からのお貸し出しは致しておりません。あらかじめご了承の上ご来店をお願いします。 bar 16SHOTS 詳細はこちら!
 

  <出席者紹介>
佐野電磁(さのでんじ)
本名佐野信義。1992年よりナムコのサウンドに所属し、『ニューマンアスレチックス』、『リッジレーサー』シリーズ、『鉄拳3』、『ゼビウス3D/G』といったテクノやデジロックなどをいち早く取り入れた楽曲をリリース。プライベートではまにきゅあ団やO.M.Y.、nanosoundsといった活動もこなしつつ、2001年にキャビアに移籍。『ドラッグオンドラグーン』、『KORG DS-10』などの衝撃作をリリースする一方で、自らの作曲風景をblogでレポートする「作曲24」や、FM音源+GM作家コンピ『FM音源マニアックス』といった新しい試みを続ける構造改革コンポーザー。
   

 
●闇雲に音を出してた小学生、YMOと邂逅す
   
安部: 今回はキャビアの佐野電磁さんです。1ゲーム・ミュージック・コンポーザーの歴史を紐解くということで、キャビア以前のこともたくさんお聞きしますが……本日はキャビアの公務として?
   
佐野: 一応公務としてですが公務外の事もスーパーウェルカムな勢いで。
   
安部: (笑)よろしくお願いします。最近の佐野さんの活動としては『DS-10』がありますが、まずは例によってルーツからということで……お子さん時代のお話をお聞きします……ということで、ご出身は。
   
佐野: 静岡県の三島市。産まれただけですぐ引っ越しちゃいました。厚木とか、尼崎とか転々としたみたいです。で、小学校4年のときまでは、東京の中野区にある鷺宮に住んでました。小学校5年からは保谷(現・西東京市)に引っ越しました。
   
安部: 子どものころは音楽的なものとふれあっていたんですか?
   
佐野: 最初……ピアニカから始めたんです。小学校2年ぐらいかな。和音を出そうとすると、仕組み的に非常に辛い。息が続かないじゃないですか。それで、苦しくなくて和音が出るものが欲しいな……っていうのがスタートですね。
   
安部: それは、小学校の授業で与えられたピアニカですか?
   
佐野: じゃないんですが、家にあったので。……で、触っているうちに、ふたつ押すとかっこいい音が出て、みっつ押すともっとかっこいい音が出て……一個飛ばし(に鍵盤を押すと)もっとかっこいい! って。
   
安部: 独学ですね(笑)。感覚的に……。
   
佐野: 気持ちいいけど、(息が)辛い。セブンス系は(笑)(※セブンス・コード。鍵盤を4つ押さえる必要があり、ピアニカでこれをやると4倍以上のスピードで息が抜けていくため、辛い)。
   
安部: ピアニカでセブンスってやったことないです(笑)
   
佐野: やってみてください! いいですよ! 非常に儚い……なんでかっていうと短くしか出ない……すっごい短いデュレーションが。……で、そのことを親に言ったら、あまりにも哀れに思ったのか、中古のオルガンを買ってきてくれて。安い、電気オルガン。電子オルガンじゃなくって、電気オルガン。
   
安藤: (当日同席していたユーブック安藤) あの……シュワーって空気送るヤツだ。
   
佐野: でも、全ポリですよ!(※全ポリフォニック……ピアノのように、全部の鍵盤を同時に発音できるもの。シンセサイザーなどでは発音数に制限があり、これを「ポリフォニック数」という)
   
安部: 4ポリから全ポリに(笑)。 足踏みじゃなくって、電動で空気を送るオルガンがあったんですか?
   
佐野: そうそう。電動で空気を送る。
   
安藤: 空気を送る「シュワー」って音がずっとしてるの(笑)。
   
佐野: そう、シュワーって。だから、先に鍵盤を押しておいて、電源を入れると、アタック・タイムがすごい長い、いいドロー系の音が出る(笑)。あとね、譜面台を立てたまま、こうやって、グッって垂直に押すと、全体的に鍵盤が押されるわけです。それで電源を消すと、フェードアウトしていって……。
   
安部: すごいテクノですね(笑)。それは音録りしたことないんですか?
   
佐野: さすがにそれはないです(笑)。ずーっとそうやって遊んでいた記憶がありますね。
   
安部: 小学校からテクノだ。
   
佐野: 苦しくなくて和音が出る機械はいいなあって。
   
安部: ところで、そのオルガンでは、何を弾いていたんですか?
それとも、音を出して遊んでいた?
   
佐野: 音を単に出してただけで……。
   
安部: 誰か特定のアーティストが好きでコピーした、とかではなく。
   
佐野: でも……YMOは小4のときには聞いていましたね。
   
安部: 佐野さんっておいくつでしたっけ?
   
佐野: 40歳ですねえ、ついに。
   
安部: 40ってことは……69年生まれですか。
   
佐野: 1月生まれ。
   
安部: 小学校高学年ぐらいでYMOですかね。
   
佐野: そうですね。小学校5年……4年の夏ぐらいに、「どうもおかしいな……」、「おかしな曲が流れているな……」と。小学校5年で認識した感じですね。
   
安部: それは、何を見て?
   
佐野: なんとなく、(世間で曲が)かかってましたよ(笑)。
   
安部: どこで?(笑)
   
佐野: 「これ、イエロー・マジック・オーケストラっていうんだ!」って思ったのは、5年生の放送室ですね。
   
安部: あー、やっぱり放送室なんだ。
   
佐野: お兄ちゃんとかがいる子がかけるんですよね。
   
安藤: 友達のお兄ちゃんが持ってる。うちもそうでした。スネークマンショーでしたけど。
   
佐野: それが確実に認識したとき。それより前も聞いていたんですよね……『RYDEEN』の最後って、ドラムが抜けるじゃないですか。当時は「ドラムが抜ける」ってのがわかんないんですよ。楽音の構成を知らないから。だけど、音の感じが変わるのが「なんでだろう?」って思っていたのはすっごい記憶にありますね。
   
安部: 天然で音に興味を持ちたがるお子さんだったのですね。
   
佐野: 言われてみればそうですね……。で、そのオルガンで、当時の音楽雑誌に載ってるYMOの楽譜を見て、ポチポチ押しつつ。全然上手には弾けなかったですけど。メロディを追っかけるぐらいで。
   
安部: 何小節かずつ……。
   
佐野: あと、池袋の西武デパートに、なぜかシンセが売ってたんですよ。誰も触ってないんで、ずっとそこにいて。
   
安部: 79年から80年ぐらいの話ですね。シンセが家庭用価格になったころですか。
   
佐野: まさにKORG MS-10とか、あの時代です。
   
安部: 西武で売ってたんですか? MS-10が?(笑)
   
佐野: 売ってるんです(笑)。誰もシンセだとわかってない(笑)。
   
安部: それは楽器コーナー?
   
佐野: ホームキーボード系と一緒に置いてたんです。
   
安部: すごいな、KORGの営業……。
   
佐野: KORGだけじゃなかったですね……。
   
安藤: シンセが世の中に出始めて、買える値段で普及しつつあるころですね。
   
佐野: わかんなくていれちゃったんですかね……。
   
安部: MS-10って定価いくらですか?
   
佐野: 5万ぐらいですね(※53,500円でした→コルグミュージアム)。
   
安部: それを、いじりに行ったり。
   
佐野: 家族で買い物に行くと、集合時間を決めておいて、それまでずーっといじり続けた。ボコーダーがやりたかったんだけど、電源入れてくれないんですよ。確かに、今考えると、小学生が来て、店員もボコーダーの電源入れようとは思わない(笑)。
   
安部: 僕が店員でも入れないでしょうね(笑)。
   

 
●お小遣いは貸しレコード屋に全部!
   
安部: 初めて買ったレコード的なものは?
   
佐野: 『RYDEEN』です(笑)。シングルのほう。うちの親は音楽とか全然わからなかった人だけど、買ってもらいましたね。まさに、すり切れるまで。買ってもらってから、夜寝るまでずーーーっと聴いてましたね。あれ、何でしょうね……。シングルのレコードですから、『RYDEEN』、裏返して→『COSMIC SURFIN'』→『RYDEEN』→『COSMIC SURFIN'』、『COSMIC SURFIN'』→『RYDEEN』……みたいな(笑)。
『ライディーン』 YMO
佐野少年がすり切れるまで聴いた、初めて買ってもらったEP盤。「何が起こってるかわからなかった」というコメントのとおり、キラキラした音色、独特のグルーブ感、そのすべてが未来派であり、今も色褪せることはない。B面はこれまたキラキラシュワシュワ未来を感じる細野晴臣作曲の『COSMIC SURFIN'』。
   
安藤: 2回聴くんだ(笑)。
   
佐野: 聴けば聴くほど不思議で……何が起こってるかわかんないじゃないですか。あと、それまで自宅でステレオ再生したことがなかった、って事にもビックリしましたけど(笑)。
   
安部: ステレオセットはあったんですね。
   
佐野: あったんですけど、うちの親はまったく興味がないから、AMラジオしか聴いていない。ステレオっていう概念を知ったのもそこでした。
   
安部: 当時はでっかいステレオですよね。
   
佐野: そう……モジュラー・ステレオ?(※アンプとプレイヤー部分が一体となった、60~70年代に普及したステレオ)4チャンネルのサラウンド。
   
安部: ほかの歌謡曲とかって……『ザ・ベストテン』全盛期だと思うんですけど、その辺の番組は全然見なかった?
   
佐野: 見てましたよ。当時は面白い話ひとつするにしても全部ソースがテレビでしたし。情報源としては欠かせない。
   
安部: じゃあ、2枚目はアイドルかなんかのレコードを買ったりして。
   
佐野: 2枚目は何だろう………………『テクノポリス』かな(笑)。
『テクノポリス』 YMO
「T・E・C・H・N・O・P・O・L・I・S」のヴォコーダー・ボイスに痺れたであろう佐野少年が2枚目に手に入れた、やはりYMOのシングル。こちらが実はファースト・シングル。とはいえ、YMOはアルバムのほうが先に出ていたアーティストで、ファースト・アルバムから1年後に初シングルが発売されている。B面は『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』。
   
  (一同笑)
   
佐野: で、その頃に貸しレコード屋ができたんですよ。田無に「アビーロード」っていう。僕は「アビーロード」って単語、そのレンタル屋で知りましたから(笑)。
   
安部: ビートルズでなく(笑)。
   
佐野: 「ビートルズって貸しレコード屋と一緒なんだ!」って(笑)。「逆、逆!」(笑)。保谷から田無なんで、自転車で15分、往復30分かかるんですけど、当日返却したい。お金がないから。で、一日の限界、一体どれくらい借りられるんだろうって挑戦してて。一度計算間違えて当日に返せないことが発覚して……ダビングする時間の計算を間違えて。
   
安部: 当時の貸しレコード屋なんか、閉まるの早いですよね。
   
佐野: そうですね、18時~19時には。
   
安部: しかも、小学校終わってからですよね。
   
安藤: 小学生で、もう貸しレコード屋?
   
佐野: 行ってましたね。小遣い全部……テープ代とレンタル代。テープもいろいろあるんですよね。この音源はとっときたいから、AHFで録りたい(※ソニーのテープのグレード名)。いや、だけど、金がないからBHFか。CHFは許せない、って(笑)。あれはもう記録用だ! と。
   
安藤: 基本ソニーなんですか。
   
佐野: ソニーですね。
   
安藤: 僕はマクセル派でした。
   
佐野: マクセル僕も行きましたよ、少し。
   
安藤: あとTDK派もいましたね。
   
安部: そんなにYMO好きなのに、富士には行かなかったんですか?(※当時YMOがCMをしていたカセットテープのブランド)
   
佐野: 富士カセット? 富士は……買いませんでしたね。AXiAになってからちょっとよかったですけど。あれでしょ、『磁世紀』とかでしょ? うーん……やっぱりソニーっ子でしたね。
   
安部: その頃はおうちのさっきのコンポじゃないですよね。テープにこだわってるということは……。
   
佐野: デッキは別にありましたね。小学生ながらに……そのデッキが故障しはじめて、ハイ(高音域)が落ち始めたんです。なんだろうと。で、いろいろな文献を調べているうちに、アジマスがずれてることを突き止めて。
   
安部: そんなのわかるんだ(笑)
   
佐野: 小6でアジマス調整しました! スゴイでしょ!?(笑)
   
安藤: 理論じゃなくて感覚でわかったんだ(笑)
   
佐野: ヘッドのネジをいじってたら、裏面の音が聴こえはじめたんです。「あれ!?」と。図書館に行って調べたら、「アジマス角」というものの存在を知って、「これだーっ!」って。全然友達に言っても通じないの(笑)
   
安部: 図書館で調べるんですね。当時は修理の本とか置いてましたよね。
   
佐野: ありましたねー『ラジカセ入門』。入門しなくちゃいけないのか(笑)
   
安部: なんで入門(笑)
   
佐野: 入門しましたねー、すごい入門しました。いい本だったなー、何度も読みました。ワニブックスですよ、「ラジカセ入門」。再販されたら買うなー(笑)。だって、すごいですもん。「本棚をエンクロージャーとして……」とか書いてあって。本棚にラジカセを置けというお話。
   
安部: あー、当時の発想ですね……。20代の読者、ついてこれてますかね?
   
佐野: 当時、本に書いてあることに実際には怪しい事があるって、誰も思ってなかったですよね。信じるしかない。いい時代だったなぁ。
   
安部: ライターとしてはうらやましい時代です。
   
佐野: 結局、お小遣いはレンタル代と、ダビングに関係するもの。テ ープまわりのヘッドクリーナーとかに全部使ってましたね。
   

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