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株式会社アイエヌエイチ
株式会社ウェーブマスター
2009.08.26
 
S.S.T.BAND…その後…
ゲーム関連の作品とライブ、リミックス
うるまでるび作品から『おしりかじり虫』誕生まで
松前公高ソロ活動
 
 

>> 1/4回から読む <<


   <出席者紹介>
松前公高
63年生まれ、大阪市出身。きどりっこ、コンスタンスタワーズなどのバンドを経て、『EXPOの万国大戦略』で山口優とのユニット・EXPOとして87年アルファレコードよりレコードデビュー。90年、S.S.T.BANDのHARRIER(Key.)として数々の作品を発表、ライブ活動を行なう。並行して東京少年、松岡英明などのライブサポート、94年にファースト・ソロアルバム『SpaceRanch』をリリース。その後はTV、映画、マルチメディア、ゲームと幅広いジャンルで作曲、編曲、アレンジを手がける。ゲームでは『KILEAK,THE BLOOD』、『サンパギータ』、『玉繭物語』、『びっくりマウス』などが代表作だが、当コーナーの読者にはG.M.O.レーベルの『タイトー・ゲーム・ミュージックVOL.2 ダライアス』におけるアレンジ、『THEKONAMICGAMEFREAKS矩形波倶楽部』における『もえろツインビー』のアレンジなどが忘れられないだろう(その後のアレンジやマニピュレートの多くも氏の手によるもの)。近年では、アーティストユニット・うるまでるびとのコラボによる『おしりかじり虫』が大ブレイク。その一方で愛機MS-20を背負い、精力的にライブ活動を行なっている。
   

 
●S.S.T.BAND…その後…
   
大野: 前回はS.S.T.BANDがレーベル移籍のために解散というところまでだったんだけど、S.S.T.BAND活動中も、ほかにいろんな仕事が組み合わさってたんでしょ?
   
松前: そうですね。東京少年というバンドのサポートメンバーをやっていました。S.S.T.BANDと重なっていたのはそれぐらいかな。
   
安部: このころ、かけもちでハイポジとかやってたんですよね。
   
松前: そうですね。ただ忙しくなる前でしたから。これはEXPOやコンスタンス・タワーズの周辺の友人関係で、手伝っていたらバンドみたいな形になって活動してたっていう感じですね。イカ天も出ましたよ(笑)。東芝EMIからデビューアルバムを出す時点で抜けて、代わりに山口優が参加しています。ベーシストのあらきなおみは今も同じ事務所に所属していますし、ギターの近藤研二は一昨年、EXPOのサポートをお願いして一緒にマルセイユにも行ったし。ずいぶん長い関係ですね。
   
安部: S.S.T.のあとにはどういった活動を?
   
松前: いわゆるゲーム音楽以外のバンドの仕事をいろいろやっていました。松岡英明くんというボーカリストのバンドメンバー、レコーディング、サウンドプロデュースも何年かやりました。彼は80年代のニューウェーブ的な要素をうまく継承してて、テクノっぽい要素を入れたサウンドで、音作りもすごく楽しかったですね。ホッピー神山さん、水谷紹くん、じゃがたらのEbbyさんとも何度か仕事しました。 スーパースランプも面白かったなあ(第3回記事参照)。
   
安部: 爆風スランプの曲とかもやってたんですか?
   
松前: やりましたよ(笑)。『無理だ!』とか『Runner』とか。打ち込みで、アナログシンセの音入れてやってたんです。あとは岡村靖幸くんともやっていましたが、彼はこのとき長く作品を出さずにいた時期で、半年ぐらい一緒にやってたんだけど、形になったのは新人アイドルの1枚だけでしたね。そういえば花*花も何枚かやったなあ。
   
大野: 野呂さんの仕事もやったんでしょ?
   
松前: はい。野呂一生(カシオペア)さんは、S.S.T.BANDでの仕事を評価してもらって、『TOP SECRET』というソロアルバムを作るときに、誘っていただいたんです。このアルバムはほとんど全ての音をギターでやるという試みなんですけど、ベース、ドラムは別で。そこは打ち込みで僕がやるか、神保さんが生ドラムをたたくというもので、キーボードは一切使ってません。キーボードのパートも和声を分解して1音のフレーズにして、すべてギターで重ねていくんです。
   
安部: キーボードのパートをギターでやるとキーボードっぽくなるんですか?
   
松前: そうなんです。ギターとキーボードでは構成する和声が違ってくるんですよ。だから、ギターの音で入れてもキーボードっぽい音になるし、さらにエフェクトでシンセブラスっぽい音にしてやれば、かなりキーボードっぽい音になります。和音の構成音プラスコーラス感、厚みを出すために、何度も重ねていってすごい音になってた(笑)。
   
安部: すごいですね。
   
松前: ぜひ聴いてみてほしいアルバムです。僕は打ち込みのドラムとシンセベース、あとそのギターを重ねるための最初のガイドの演奏をマルチに入れたりしました。それと、このアルバムは日本初のCD-Extra仕様として発売されたんです。それでデータ部分にXG、GS、GMフォーマットのMIDIファイルを作って何曲か収録しました。ギターソロの細かい動きまでかなり忠実に再現しましたよ。通信カラオケのデータを作るような作業ですけど、完璧にやりました。実際にそのMIDIデータをCDの音と同時に流してチェックするんです。そうするとズレてる場所がわかるでしょ? タイミングが違えばズレるし、音程が違えば濁るし。これで確認してギターソロも再現しました。
   
安部: ほんとに音楽ジャンルとしても活動が幅広いですね。
   
松前: う~ん、そうですねえ。単に手伝いとしてやった仕事も少しありますが、あとは、自分の個性評価してもらって、そこにどう加われるか? って考えてやれたものは今でもよかったと思っていますよ。いわゆる芸能界の歌手とかグループのレコーディングにも参加したことありますけど、それはもうまったく何も自分らしさを出すことが出来なかった(笑)。まったく納得いってないし、仕事自体もおもしろくなかったし、記憶からもほとんど消えてます(笑)。
   
安部: プロフィールをみて気になったんですが、GLAYのドラムのTOSHI NAGAIさんのアルバムに参加されてますね。
   
松前: はい。GLAYのメンバーじゃなくて、サポートのドラマーなんですが、デビュー以来ずっとドラムをやっているみたいですが、東京少年のときに、NAGAIくんがドラムで、そのときからのお付き合いです。打ち込みとドラムというのは連携がとても大事なんです。打ち込みを流しながらライブで曲を演奏するためには、ドラムの人にコンピューターの演奏と同期したクリック音(メトロノームのようなガイドのリズム)を送らないとけない。つまり打ち込みって融通がきかないから、ドラムが打ち込みにあわせる必要がある。そのかわり毎回正確に間違いなく演奏出来るという利点もありますよね。で、そのクリック音をどうドラムの人が解釈して、自分の音をそれにあわせるか? どうタイミング的に絡むか? これはドラマーによってずいぶん変わってくるんです。だからすべて正確な位置にクリックを置いたからといっていい演奏になるとは限らなくて。クリックとドラムの叩くタイミングと、打ち込んだ音が実際にどう絡むかを聞きながらシフトさせて気持ちのいい位置を調整したりね。そういう作業を長年やった関係なので、信頼関係ができていく。そんな中で、NAGAIくんがソロアルバムを作ることになったときに、何曲か打ち込み、アレンジ、リミックスなどで参加しました。あとドラムの教則ビデオも出てるんですが、それにはデルジベットのギターの吉田光さんと一緒に参加してます。ベースなし。シンセベースとギターとドラムの三人組。これはおもしろいセッションでしたよ。僕の曲も使って映像も残ってます。
   
安部: ドラムと打ち込みの兼ね合い。おもしろいですね。
   
松前: 高校時代、ドラムをやっていたこともあるんですが、音楽をドラム中心に聴くことがすごく多いです。打ち込みでドラムを作るときも細部までリアルにするときはこだわるし、ドラマーとの競演はとても好きですね。もう1人、僕の大好きなドラマーで、P-MODELにいた上領亘くんがいます。彼は打ち込みとの連携がバツグンの人で、イベントを一緒にやったりしました。一緒にやって刺激を受けるミュージシャンです。EXPOを手伝ってもらった外山明、S.S.T.BANDの熊ちゃん、ほかにもたくさん好きなドラマーいますが、みんなスタイルが違って、すごくおもしろいです。やっぱりドラマー好き!(笑)。シンセとか打ち込みとかやってますけど、生演奏が大好きだから。
   
安部: リミックスもやっておられますね。
   
松前: はい。ゲーム関係を入れるといろいろありますね。TELEXのリミックスはおもしろかったですね。TELEXはクラフトワークみたいな感じで70年代に出たベルギーのテクノポップのバンドですが、僕も高校時代にファンで聴いていました。『Is Release a Humour?』というリミックスのアルバムで、小西康陽、砂原良徳、戸田誠司、ヤン富田、松前公高という日本の5人のアーティストがリミックスするというものです。
   
大野: それにしてもすごいメンバーだね?
   
安部: これはどういういきさつで?
   
松前: 以前、テクノポップの月刊誌『TECHii』の編集をやってた、田中くんという…後に『電子音楽 in Japan』を書いた…。
   
安部: 田中雄二さん。
   
松前: そうです。彼が僕を気に入ってくれてて、TELEXのリミックスを依頼してきたの。ほかは豪華な顔ぶれで恐縮だけど。ジャケットは江口寿史だし。
Is Release a Humour? / Telex
松前氏をはじめ、小西康陽、砂原良徳、戸田誠司、ヤン冨田という豪華メンバーによるTELEXのトリビュート・アルバム。廃盤かつ15年前のモノなのでどこでも見かけるものではないが、TELEXを知っていればオススメ。インタビューでも語られているが、松前氏によるTELEX最大のヒット曲『MOSKOW DISKOW』のリミックス2曲は氏のアレンジにしては原曲に忠実な仕上がり。「原曲があまりに好きなので、基本的には同じ形で構築しなおし、松前得意のシンセによるパーカッションなどを加えた」(松前氏)とのこと。エンジニアはYMOのレコーディングも行った元アルファレコードの寺田康彦氏、ジャケット・イラストは江口寿史氏。
   
大野: トリビュートアルバムなの?
   
松前: いや、これは完全にマルチテープの素材をもらってリミックスですね。当時はあまりにリミックスで曲調が変わりすぎるなっていう気持ちがあったので、原曲を忠実に再現しようと思って、別のシンセで同じことを再現したり、いくつかリズムを変えたりして、とにかく原曲が大好きだから、原曲を生かす、よりよいものにしたい、自分がTELEXに参加したらって気持ちで作りました。リミックス系の作品としては、あとは、ムーンライダーズのシングルCDにリミックスを入れたり、クラフトワークのトリビュートアルバムにも1曲参加していますね。
   
安部: 砂原良徳さんのアルバムにも名前がありましたが?
   
松前: あ、あれは無限音階のサウンドを作った話で、砂原くんが興味を持って、ソロアルバムに収録したいっていうので、そのサウンドが彼のソロアルバムにはいってるんです。無限音階っていうのは、音がドレミファソラシドレミファ…と上昇していくんだけど、それが無限に続く、つまり、いくら昇ってもずっと昇る、いつのまにか元の位置に戻ってるっていうもので、エッシャーのだまし絵の階段がずっと登る形になったやつね。あれをシンセで再現したようなものと言えばわかりやすいかな?
   
安部: ほかに参加された作品など……もう全部教えてください!
   
松前: う~ん、全部?(笑)。CDなどの作品になっているものとしては、あと、モダンチョキチョキズのアレンジとか、花代ちゃんという女性のシングルでシンセをバリバリ入れた宇宙サウンドもののアレンジしたのとか。あ、あと千葉大学のサウンドクリエイト研究会の後輩でもある茂木淳一くんのやっている千葉レーダのアルバムでも、そういったアレンジを1曲やってますね。これはプログレ的なアレンジでシンセミュージックになっててすごくいい感じで出来ました。ほかにも思い出してないのがあるかもしれないけど。
   
安部: DJもいろいろやられているんですよね?
   
松前: これはいわゆるクラブ系のDJじゃないですよ。単にバーとかでレコードをかけるだけのDJ。ビートもつなぎも厳密じゃないし(笑)。音楽ファンとして音楽を聴いてもらうようなね。これは高円寺にうちの事務所がレコード屋を出して、そこで、週末、マニュエラカフェというお店をやってたんです。それでやってたり、あとは、元アップビートの広石武彦くんと、ロック系のDJイベントを何年か一緒にやってました。これは面白かったですね。マルコシアス・バンプの秋間さんとか、元アンセムのドラムのマッド大内とか、元プリプリの中山加奈子ちゃんとか、いろんな人がDJ初体験で一緒にパーティーっぽくDJしながら飲んで(笑)。今は大阪の小さなバーで、毎月月末の土曜日にDJやってますよ(笑)。
   
安部: どんな曲をかけておられるんですか?
   
松前: ほんとに自分が好きな音楽を人に聴いてほしいって気持ちだけでDJしています。iPodに入れてある曲とさほど変わらないなあ。ええと、今iPodに入れてるの。言いましょうか?(iPodを取り出して)AB'S、エアプレイ、アランホールズワース、アンブロージア、アンソニーフィリップス、アシュラ、アトール、アジムス、ビルブラッフォード、ビルチャンプリン、ボビーコールドウェル、ブランドX、ブレッカーブラザーズ、ブルースヒバード、キャメル、シカゴ、ホール&オーツ、ELO、イングランド、エリックタグ、フォーカス、フランクザッパ、ジェネシス、ジノヴェネリ、ゴング、ハロルドバッド、ホークウィンド、JaR、ジェイグレイドン、ジャンリュックポンティ、ジョンスコフィールド、カイパ、カヤック、ケストレル、クラトゥー、ラーセンフェイトンバンド、マークジョーダン、マイクオールドフィールド、ネクター、ニールセンピアソン、ニコライカプースチン、ナイトフライト、パットメセニー、ペッカポーヨラ、パイロット、リチャードシンクレア、ローバートワイアット、ロビーデューク、ロジャーニコルス、ロジャーパウエル、ロイネストルト、ロキシーミュージック、Shi-Shonen、ソフトマシーン、スペースサーカス、スパイロジャイラ、スティーリーダン、スティーブハケット、スティーブヒレッジ、スティーブキプナー、シュガーベイブ、トッドラングレン、トリアンヴィラート、チューブス、UK、ユートピア、イエス、チューリップ、荒井由美、山下達郎、種ともこ、小川美潮、10cc(笑)。ほとんど70~80年代のものですね(笑)。
   
安部: テクノ系が少ないですね?
   
松前: そう(笑)。聴くのはプログレ、AOR、フュージョン、そしてちょっとひねくれたポップス系。ジャーマンものとかテクノは、あまり移動中に聴きたいと思わないから(笑)、そういうのは家でじっくり。AORについては、ものすごく語りたいんですが、やめときましょう。とんでもなく長くなるから(笑)。
   
大野: ボズ・スキャッグスとか…
   
松前: そうそう。ジェイグレイドンが一番好きで…
(以下、大野&松前さんのAOR話が5分ほど続く。AORについてはWikipediaを参照してください)
   

 
●ゲーム関連の作品とライブ、リミックス
   
安部: S.S.T.BANDの活動が終了して、アーティストのサポートもしつつ…というのは92~95年ぐらいですか? その一方で、ゲーム音楽の仕事もいくつか手がける時期ですね。
   
松前: そうですね。今話したさまざまなバンドは90年代が多いですね。
   
大野: ゲームへの曲提供はやったりしてたの?
   
松前: サイトロンでいろいろアレンジの仕事をさせていただいてたころはそれほどやっていなかったですね。
   
安部: 一番最初にゲームの曲を付けたのは?
   
松前: 最初かどうか忘れましたが、最初のころ『サンタクロースの宝箱』ってのをやりましたね。ディスクシステムの。
   
安部: 知らないですね。データーイーストですって。クリスマスカードを作れたり、ルーレット、スロットマシン、ポーカー、ダイスで遊べるパーティゲーム…デコっぽくない!
   
松前: これは87年ぐらいでしたよ。EXPOのころです。まだなんかパソコンのディスプレイが緑色で、CP/MっていうOSで、音符を数字で打ち込んで作ってましたねえ(笑)。
   
大野: 結局、S.S.T.BANDのあとからゲームの仕事が増えてきた感じかな?
   
松前: そうですね、プレステが出てきてからが多いです。
   
大野: 『KILEAK,THE BLOOD』とか。
   
松前: そうですね、EXPOの2人でもいろいろ。
KILEAK,THE BLOOD SOUNDTRACKS & Remix / 松前公高
プレイステーション版『KILEAK,THE BLOOD』のサントラにして、セカンドソロアルバム。松前氏のゲーム関連ではほかにも『サンパギータ』、『玉繭物語』、『2』、『Option TUNING CAR BATTLE Spec-R』などがサントラCDとして発売されているが、それらとは違い、あくまでも個人の作品としての音楽を展開している。ドラムにToshi Nagaiが参加しており、NEU!やTony Conrad WITH FAUSTのような反復ビートを演奏している。
   
大野: EXPOでもやったの?
   
安部: 『ダムダム・ストンプランド』ですね。
   
松前: そう。ソニー・ミュージックから出ています。
   
大野: ソニー・コンピュータじゃなくて、ソニー・ミュージックがゲーム出してたんだ。でも『KILEAK,THE BLOOD』って、結構当時話題のソフトだったよね?
   
松前: そうですね、プレステで3Dのソフトでは最初のほうで。『酔う』とか言われて。
   
安藤: 『KILEAK,THE BLOOD2』というのは…?
   
松前: 『2』も僕がやりました。
   
大野: 『KILEAK,THE BLOOD』ではゲームの音楽を担当するけど、サントラも松前くんが制作したの?
   
松前: そうです。ゲームの音楽もやって、アルバムではゲームの音楽そのままじゃなくてアレンジを加えて、ダークなテクノ系のソロアルバムみたいにしました。
   
大野: それはアンティノス・レコードの清水さんつながり?
   
松前: 清水さんとは、やるドラシリーズの『サンパギータ』でお世話になりましたね。『KILEAK,THE BLOOD』はソニー・ミュージック発売で開発は元気ですね。元気とはそのあと、『玉繭物語』の1、2をやらせていただきました。これもまたおもしろかったですね。
玉繭物語 / 松前公高
『魔女の宅急便』、『崖の上のポニョ』などで知られる近藤勝也氏をアートに迎えたPS用RPG。松前氏の得意とするテクノ、プログレとは縁遠いファンタジーの世界観で、一聴すると普段では味わえない牧歌的、民族音楽系かと思わせるが、よく聴くとやはり松前氏のサウンドであることが確認できる。現在、『1』のゲーム本編はPSP/PS3の「ゲームアーカイブス」でも配信中。
   
大野: S.S.T.BANDをやってたことでゲームの仕事につながったってのは無かったの?
   
松前: あ、それはすごくありましたね。『ファンでした~』って人が実際のゲーム業界に就職されて、ゲームを企画されていたりするわけですよ。とてもありがたい話です。
   
安部: ゲーム音楽はいろいろやられてますよね?
   
松前: そんなにビッグタイトルはないですよ。その『KILEAK,THE BLOOD』、『玉繭物語』、『サンパギータ』と、PCエンジンで『ダウンロード2』、『パチ夫くん。』スーファミだと『オセロ』、『ラスベガスドリーム』、プレステだと『ムチッ子大作戦』、『ナイトヘッド』、『えんがちょ』、『牧場物語3(PS2 )』、『OPTION SPEC R』。あとXboxで『PHANTOM CRASH』などですね。ちょっとめずらしいものならパイオニアのレーザーアクティブで、『スペースバーサーカー』っていうのを作ったなあ。
   
安部: レーザーアクティブ! それは知らなかった。
   
松前: あとビートマニアで何曲か曲を提供しています。最新作はバンダイナムコゲームスのPS3『塊魂トリビュート』に1曲収録しています。これは今までの塊魂の曲をトリビュートするというもので、オーケストラの曲をMS-20を使ってシンセサイザーオーケストラって感じでバカっぽく再現しています(笑)。
   
大野: そういえば昔、パズル系好きなら面白いからやってみてって、HAL研究所の『エッガーランド』を勧めたけど、そのあと、続編のゲームの曲作ってたでしょ。『ロロの大冒険』。
   
安部: 『アドベンチャーズ・オブ・ロロ』ですね。
   
大野: 『エッガーランド』はハマったって言ってたから、そのあとしっかり仕事になったんだ! って思ってたんだけど。
   
松前: いや~LOLO はハマりまくりましたよ。厳密には、音楽を担当したのは女房で(奥さんは元カプコン、松前真奈美さん。代表作は『ロックマン』、『エリア88』、『ダービースタリオン』シリーズ、『ドラゴンクエスト・ソード』)、それを見たり話しているときに、『エッガーランド』全面クリアして『もっと難しい面はないのか?』みたいな話から、面を作る仕事が僕にも来たんですよ(笑)。キャラの動きとか、全て把握してたから、むちゃくちゃ難しい面作りましたよ。あとにも先にも音以外でゲームの開発でギャラをもらったのはこれだけです(笑)。
   
大野: 開発はHAL研究所だよね。
   
松前: そうそう。岩田さんと。
   
安部: パソコンソフト系は?
   
松前: マッキントッシュのソフトで中ザワヒデキの『KIDS BOX』、『デジタルネンド』。『バーチャルバラエティーショー』、『ワールドエンジンファンタジオン』というのもありますね。
   
大野: そのあとの2つはサイトロン制作だね。
   
松前: そうです。サイトロンの井口さんたちと一緒にやりましたね。それより昔の話で、ゲームじゃないんだけど『MUSIC PRO 68K』っていう。X68000の音楽制作ソフトがあるんだけど。音符をマウスで置いていくっていう、今考えると、とてつもなく大変なソフト。それを作ってる会社が知り合いで、デモ曲を作る仕事をしました。楽譜に音符で顔書いたりとか。めちゃくちゃな楽譜にするとどんなことになるかっていう実験を…。
   
安藤: あった! あれ、松前さんが作ったんですか?
   
松前: そう(笑)。プログラムの開発じゃなくて、それに最初に収録したデモ曲ですね。バカっぽい現代音楽ということで。当時からずっと一貫してるのは、現代音楽的なことは好きなんだけど、むずかしいことは嫌い。もっと楽しく現代音楽を! って思想だったんです。なので、自由に楽譜に音符を置けるソフトで、楽譜というルールの実験的な試みはやりたいけど、それで聴感上おもしろくない理論だけのことはやりたくない。へんなことをやりたいけどデタラメもいやだし、聴感上も面白いもの。自分はそんな教育も受けてないし、ユーモアを入れたり、ちょっと現代音楽への批判も込めて、でもそういう型破りなこと、前衛、実験への純粋な喜びを表現したい。楽しくね! これは10代から現在まで、一貫していることですね。
   
安部: ゲームのイベントにもいろいろ出演されてますね?
   
松前: そうですね。まず、2002年に『LEGEND』っていうゲーム音楽のクラブイベントを麻布のクラブでやりましたね。めがてんや、古代くんなども参加したイベントで、ものすごいお客さんでびっくりしましたよ。僕はこういう場所ではとても微妙な立場で、別に有名なゲーム音楽を担当したわけでもない。ただS.S.T.BANDをやっていた、サイトロンでいろいろCDの手伝いをしていただけで、ゲーム音楽作曲家としては認めてもらえてないわけですよ。ゲーム音楽自体で認められた人とは全然、立場が違う。なので、2セットあったんですが、自分の曲をDJでやるのは不可能で、1回はS.S.T.BANDを中心にしたリミックスを。もう1回は単にファミコンファンとしてのリミックスをやりました。
   
安部: これはDJだったんですよね?
   
松前: そうです。シンセとかは使ってません。AbletonのLiveという最高に素晴らしいソフトが発売されたあとだったので、これを使ってリアルタイムでミックスしました。『がんばれゴエモン』の曲を流したら、ものすごい盛り上がりなのを感じて、その部分を長くしたり、そういう自由度があって、ちゃんとリアルタイムに客の反応をみながらミックス出来て面白かったですね。
   
安部: それから、2007年に『EXTRA』にも参加されました。
   
松前: これもH.や、田中宏和さん、古川さん、めがてん、伊藤賢治くん、古代くん、植松さんとかもうすごいメンツでしたが、僕は何者? ってかんじでしたよね(笑)。もう、ゲーム音楽では太刀打ち出来ない人ばかりだから(笑)、僕はまったくゲーム音楽と関係のない自分のソロの曲やりましたよ。不評だったのか、次の年は呼んでもらえなかったけど(泣)。
   
 
HYPER GAME MUSIC EVENT 2007 EXTRA - THE LIVE ALBUM vol.1
2007年にSTUDIO COASTで開催されたゲーム・ミュージック・イベント「EXTRA」のライブ/DJを収録したアルバム。最近の松前氏のライブのスタイル、MS-20の生演奏(+生ツマミ回し)を堪能できる貴重な音源だ。
MOTHER 1+2 サウンドトラック
「オリジナル」と銘打っておきながらアレンジアルバムだったり、曲名間違いなど、商品の成り立ちとして致命的な欠点はあるものの、松前氏による『Eight Melodies』のアレンジでは、太いアナログ・シンセの音が大変心地よい。「GAMEBOY ADVANCEの音質の問題もあり、ゲームの音を収録せずに全曲、アレンジを施した」とのこと。アレンジャーは松前氏のほかに近藤研二氏、片岡知子氏が参加。『MOTHER』シリーズ未聴の方にこそオススメしたい。
   
安部: 田中宏和さんといえば、MOTHERのCDもやられてますよね?
   
松前: あ、あれは、『MOTHER1+2』というのが出たときに、サントラを作ろうということで、おまかせでアレンジさせていただいたんです。以前から知り合いだった(鈴木)慶一さん(ムーンライダーズ)と田中宏和さん、あと、金ちゃん(金津宏)の曲だったから。『MOTHER』のゲーム自体の音楽は担当していません。これは何度か話している元ハイポジで、現、栗コーダーカルテットの近藤研二くんと、同じ事務所で『MOTHER』ファンだったインスタントシトロンの片岡知子さんにもお願いして、アレンジアルバムを作ったんです。
   
安部: ほかにもゲームのアレンジ、リミックスアルバムもいろいろ?
   
松前: そうですねえ。ファミコン20周年のリミックスとか『グラディウストリビュート』とか、ほんといろいろなアルバムで1曲づつリミックスなどで参加させていただきました。なんだかんだとゲーム音楽には今でも関わらせていただいてますね。そういえば去年は、京都のレトロゲームバーcafe la siestaでトークイベントさせてもらったり、大阪のNPO法人アーツアポリアの企画で、テクノポップについて田中雄二さんと、ゲーム音楽について古川もとあきさんとトークイベントしたりしました。

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