いえ。レコーディングは普通に行ないました。それをあとから、ミックスダウンするときに立体音響に変換して、2トラックにまとめるんです。これはそのクリス・カレルのスケジュールの都合で大阪でやることになって、僕1人、大阪の M Bar スタジオという所にミックスダウンに立ち会いに行ったんです。これがほんとに大変で。
あ、そういえば、のちに彼が鈴鹿で録音した車の音を収録したCDにもS.S.T.バンドの音入れましたね(『VIRTUAL AUDIO F-1 GP THE EXHAUST SOUND』)。効果音だけが入ったCDなんだけど、せっかくだからというので、オープニングにS.S.T. BANDの『BELLDEER WIND』と、エンディングに僕のソロ作品を1曲、レコーディングして収録しました。どちらもF-1の車の音を素材にして、リズムにしたりサンプリングでいろいろ音を重ねて。
考えてみたらゲーム音楽全盛期って、もうひと昔前ですよね。当時少年だった人も10年たてば20~30代ですからね。今の若い人は、ゲーム音楽にそんな時代があったことすら知らない。別の形でファミコンや8ビットの音が再評価されてますけど。で、S.S.T.BANDのアルバム全部出すのは無理だから、新たに構成したベスト盤を出すということになったんですね。(『BACK IN THE S.S.T.BAND!!~THE VERY BEST~』)。
そうそう(笑)。並木くんは来たけど、彼はもうすでにセガを退社しているから。そのときの再結成の話はちょっと大きな話すぎて結局実現しなかったんですよね。その次に、DVDが発売されます(『S.S.T.BAND LIVE HISTORY』)。考えてみたら、当時発売されたのはVHSビデオとLDディスク(笑)。今、当時のライブの映像を見る方法がないので、そういった素材を集めてこれまた映像のベスト盤的なものとして2006年に。記録用に撮影された映像が残っていて、映像のクオリティは多少低いですが、今までの発売済みの映像だけで構成するより、せっかくだから未発表の映像も入れようということで。このときも再結成ライブするか?って話になったんですが、結局これも実現しなかった。次回はいつそういう話になるかな?このインタビューがきっかけになって、S.S.T. BANDの同窓会ライブ、1回だけでもできたらいいですねえ。
POWER DRIFT & MEGA DRIVE(88.12.28)
4曲のアレンジバージョンを収録しているが、『LIKE THE WIND』以外はほとんどライブで演奏されることのない曲ばかりが収録されている。当時は作曲者に配慮して原曲を重視する傾向があったため、メロディーの一音、和声の一音たりとも変更せずにアレンジしていた。『ファンタシースター2』のアレンジが特に顕著にその苦悩がうかがえると思う。もし後期S.S.T. BANDがこれを自由にアレンジしていたとしたら、相当ディープで違った和声のバージョンになっていたはずだ。『獣王記』もS.S.T. BANDの方向性とは違った作品だが、当時はメガドライブという家庭用ゲーム機が最大の話題だったため、この曲の収録となった。オーケストラ的作品。それでも、どこかに何かを仕込みたい僕としては、中間部分でスティーブ・ライヒ的な音のズレを入れてみた。
SUPER SONIC TEAM(89.10.21)
はじめてバンド名をメインにしたアルバムタイトルにしながらも、5曲のアレンジバージョン中2曲はほかの人の手によるもので、まだバンドとして形になっていなかったことがうかがえる。特にテトリスのアレンジ『TETREMIX』はいわゆるハウス的リミックスになっており作品としてはとても素晴らしいのだが、バンドメンバーとしては、まったく無関係の音楽を収録されていたという感覚が強かった。S.S.T. BANDをセガの音楽すべてと考えれば間違いではないのだが。バンドとして確立していなかったことと、レーベル側もさまざまな可能性を探っていたという段階だったのだろう。そんな中でも『ファイナルテイクオフ』などで初の各パート生演奏の収録ができたという点では進展があったアルバムと言える。
MEGA SELECTION(89.12.15)
それまでにたった3枚、しかも各アルバムにアレンジバージョンは4~5曲しか収録されていなかったのに発売されたベスト盤。このベストのために1曲だけ新たにレコーディングされたのが、『ファンタジーゾーン』の『OPAOPA』。ただしS.S.T. BANDの雰囲気ではないので、ほとんどを松前公高が一人で打ち込みで制作した。サンバホイッスルのみTHUNDERさんが演奏している。当時、サンプリングによるドラムの打ち込みを研究中だったため、ドラムのパターンは凝りまくっている。導入部の雰囲気は、チックコリアの『Samba L.A.』という曲へのオマージュ。89年12月15日発売ということもあって、S.S.T. BANDの80年代をしめくくる作品。いよいよ90年代にS.S.T. BANDは本格的にライブバンドとして活動することになる。
AFTER BURNER(90.6.21)
ベースの脱退により、新たなベーシスト探しをしていた時期に制作されたシングル。1STに収録された『アフターバーナー』はドラムとベースを生演奏に差し替えた。このときのベーシストはJACO渡辺。彼はこのシングル1曲だけの参加となってしまった。『アフターバーナー』にはぴったりの図太いベースを演奏するプレイヤーだったが、メンバーとして参加することはなかった。もう1曲の『MAXIMUM POWER~RED OUT』はバンドメンバーだけでアレンジを行った。ベースラインがまさにJACOを思わせるもので、明らかに前任の小森、後任になる齋藤とは違った味を出している。JIVEスタジオでレコーディング。
S.S.T. BAND LIVE(90.10.31)
1990年8月25日、東京、日本青年館で行なわれたゲームミュージックフェスティバル'90でのライブ演奏を収録したライブ盤。S.S.T. BANDのライブは毎回新アレンジを入れることが多かった。特にゲーム単位で短い曲を盛り込んでメドレーにする手法は大好きだった。このライブでも『アフターバーナー』、『ギャラクシーフォース』、『パワードリフト』の3曲が新アレンジ部分を含んだメドレーになっている。残念ながらCD には、伝説のTURBO君スラップベースソロは収録されていない。これはLDとVHSビデオのみに映像と共に収録されている。他にもZUNTATAとのジョイントアルバムという形で『GAME MUSIC FESTIVAL』のビデオ、LDなども発売されている。
GAME MUSIC FESTIVAL '90 (VHS VIDEIO)(90.11.21)
タイトーのサウンドチームZUNTATAとのジョイントコンサートとなったこのイベント。2つのバンドをまとめて収録したフェスティバル全体のビデオも発売された。こちらの収録曲は『アフターバーナーメドレー』、『ヴァーミリオン』、『エアバトル(G-LOC)』、『スプリンター』、『アフターバーナー』、『新たなる旅へ』。 「ZUNTATA vs S.S.T.BAND 1990.8.25日本青年館で激突!その熱狂と感動のステージが今よみがえる」・・・そうです。
From Ula (91.4.24)
91年5月2日の中野サンプラザでのライブを前に、4月24日に渋谷TAKE OFF7で行なわれたプライベートライブのときのみ60本限定で500円で販売した完全自主制作のカセットテープ。タイトルはFORMULA発売後で、RとOを入れ替えるだけで「From Ula」とうまい具合に「裏テープ」の意味になった。このライブおよび自主制作カセットはセガサウンドチームではなく、吸って吸ってチューバンド(S.S.T. BAND)という名のまったく別のバンドが行ったもので、我々とは一切関係がない。吸って吸ってチューバンドでS.S.T. BAND と名乗るとは大変迷惑な話だ(笑)。当然廃盤。オークションでも売っているのを見たことがない。今回、ジャケット写真を入手するためにメンバーに連絡をしてみたが、メンバーも持っていないことが判明。内容はラジオドラマ仕立ての劇や、ふざけた演奏、各楽器講座など。レコーディングは当時、上落合にあった松前の自宅で行なわれた。この日のライブはインタビューにもあるように、急遽、熊ちゃんがドラマーとして参加した日。メンバーが楽器を全部持ち替えて演奏するヘタクソバージョン、好きな曲を1曲づつカバーするコーナーなど、普段できないこと、メンバー自身が楽しめることをやったまったくプライベートなイベントだった。松前のカバー曲リクエストはテリーライリーの『In C』。短めにして演奏した。
MEGA SELECTION 2(91.12.15)
オリジナルアルバムを作りたい、という要望は91年、『FORMULA』で『BELLDEER WIND』を作曲したころから強くなっていき、91年後半にそれが具体的になっていく。実際のレコーディングは92年の頭になるが、そのつなぎ、というわけではないが、半年発売するものがなかったこともあり、再びベスト盤が発売になる。ここでは『FORMULA』で納得がいかなかった『G-L.O.C.(R360)』のミックスをやりなおす。せっかくなので、新加入したスプラッシュ熊ちゃんのドラムによるバージョンにした。厳密にはベースギターも録音しなおしている。『S.S.T. BAND LIVE』には収録されなかった『VERMILION』もライブバージョンで収録。さらに『ボナンザブラザーズ』を一発録りで収録。かなり楽しい雰囲気で録音している。
VIRTUAL AUDIO F-1 GP THE EXHAUST SOUND (92.1.21)
91年の鈴鹿でのF-1グランプリの音をクリスカレルが立体音響 VAPSというシステムでレコーディングしたというもの。 1曲目に「Belldeer Wind With SE / S.S.T.BAND」13曲目に「Ride On Pleasure / 松前公高」が収録されている。帯には 「最先端の立体音響テクノロジー”ヴァーチャルオーディオ”により、大迫力のF-1エグゾーストサウンドがあなたの頭の中を駆け抜ける! ’91鈴鹿GPの興奮を疑似体験できる、驚異の70分。各コーナー解説、全車種収録データ入り」とあります。2曲以外はレースの音が収録された効果音CD。
GAME MUSIC FESTIVAL '92(92.10.21)
この年のゲームミュージックフェスティバルは2日間連続で、GAMADELIC、ZUNTATA、ALFH LYRA、S.S.T.BAND、矩形波倶楽部、J.D.K.BANDの6バンド が出演した。レコード会社の関係で、矩形波倶楽部、J.D.K.BANDを除く4バンドのライブをCDにしたもの。S.S.T.BANDは、『S.D.I.メドレー』、『ハイパーシティ』、『I can Survive』の3曲を収録している。特に『S.D.I メドレー』はスタジオ盤はまったく録音していないが、ファンからの要望が多かったので、ライブ用にアレンジしてこの日演奏した記憶がある。こちらは後に発売されたS.S.T.BAND LIVE HISTORY(DVD)のほうで映像も見ることができる。今聴き直してみると、『S.D.I.メドレー」も『ハイパーシティ』もエンディングは7拍子のアレンジになっている(笑)。
VIRTUAL AUDIO F-1 GP THE EXHAUST SOUND '92(93.1.21)
VIRTUAL AUDIO F-1 GP THE EXHAUST SOUNDの続編。92年のF-1GPでも収録、発売されたもの。こちらはすでにS.S.T.BANDが『BLIND SPOT』を発売していたこともあって、その中からリカルド・パトレーゼのテーマ『I can Survive』と、ゲルハルト・ベルガーのテーマ『Tachyon』が収録されている。オープニングの 『Tachyon』には、なんとあの川井一仁の解説の声がかぶせられ、音楽は完全にトークのBGMとなっている(笑)。それ以外はすべて、レースの効果音CD。
BACK IN THE S.S.T. BAND!!~THE VERY BEST~(03.11.19)
解散から約10年。2003年に突然発売されたベスト盤。すべておまかせしたので詳細はわからない。選曲も問題なし。久々にメンバーが集まり座談会が文字になって収録されている。再結成ライブをやろうということで盛りあがったが結局実現しなかった。ほかのアルバムがすべて廃盤(?)、入手困難な状態なので、現在唯一手に入るCD。活動していたのは約20年前のことだから、それを知らないゲームファン、ゲーム音楽ファンの方に聴いてもらいたい、という気持ちでいっぱいです。
S.S.T.BAND LIVE HISTORY(DVD) (06.09.20)
90~92年のゲームミュージックフェスティバルでの演奏を集めたDVD。90年は当時ビデオとLDで発売されたものから抜粋したもの。91年はビデオカメラで撮影したもので音もマイク録音だが、 未公開だった映像を公開したってことで許してくださいませ。91年はフェスティバルが2日間あって、その両日に出演している。すっかり忘れていたのだが、『AIR BATTLE』から『RUSH A DIFFICULTY』に入れ替わってまた『AIR BATTLE』に戻るなんていうメドレーもやっている。92年は『S.D.I.』の曲をやったりしています。今考えるとフェスティバルは全部マルチでレコーディングしておけばよかったなあ。