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株式会社アイエヌエイチ
株式会社ウェーブマスター

2009.10.28

 
格闘ゲームの常識を覆した「カイザーナックル」のBGM
アリカ~スーパースィープを経て独立の道へ
代表作「ボーダーダウン」「旋光の輪舞」シリーズを語る!
「テクニクティクス」の曲は、「なんちゃってテクノ」だった!?
将来の展望~「GA-CORE」に望むこと
後日談(その後渡部さんからメールを頂きました)


>> 前編から読む <<



   <出席者紹介>
渡部恭久(Watanabe Yasuhisa)
1987年にタイトーへ入社。ZUNTATA草創期からの主力メンバーとして、「サイバリオン」「メタルブラック」「カイザーナックル」など数多くのサウンド制作を担当。その後アリカ、スーパースィープを経て、現在はフリーランスで活動中。代表作に「ボーダーダウン」「テクニクティクス」「旋光の輪舞」シリーズなどがある。
   

 
●対戦格闘ゲームの常識を覆した「カイザーナックル」のBGM
   
鴫原: 高難易度で有名だった、対戦格闘ゲームの「カイザーナックル」のBGMも渡部さんのご担当ですよね?
カイザーナックル
「カイザーナックル V.C.O.Mix」 対戦格闘ゲームがブームの真最中だった1994年に発売された作品。そのBGMは他の格闘ゲーム作品とは異なる独特の世界観を構成、渡部氏の真骨頂がいかんなく発揮されている。
   
渡部: ええ、全部私が作っていますね。
   
安藤: この「カイザーナックル」は特にそうだと思うんですけど、渡部さんの曲を聞いていて思うのは 聞き手が共感できるツボの抑えどころがとにかく上手だな、という印象がありますね。
   
渡部: いや~、そう言っていただけると嬉しいですね。ありがとうございます!
   
安藤: アニメとかが好きな人たちのツボを抑えているなあと。一度聞いただけで、「オッ、きたきた!」って思えるようなものって絶対あるんですよね。ベタなくすぐり方ではないんだけど、ちゃんとくすぐっちゃうみたいな。
   
渡部: そうそう、まさにそれですよ!
   
安藤: そこがまた新鮮でいいんですよね。
   
鴫原: 「カイザーナックル」のBGMを聞いていて思ったのは、それまでの対戦格闘ゲームですと、たとえば日本代表選手のステージは和風テイストの曲にするとか、音楽にも地域性みたいな演出を入れるのが普通だったと思うんですよ。でも、このゲームに関してはそんな演出がまったくなかったが逆に新鮮だった記憶がありますね。やはりこれは意図的にそういった演出を避けて作曲したのですか?
   
渡部: そうなんですよ、嬉しいなあ(笑)。確かCDのライナーにも書いたと思うんですけど、当時は「ストII」とか対戦格闘ゲームの全盛期だったわけですが、どの作品もBGMがみんな「お国柄ソング」になってたんですよね。それで、私が今までの概念を壊したい、払拭したいなとは思っていました。
   
安藤: 「カイザーナックル」自体はそれほど遊んだわけではないのですが、BGMにはいろいろと思い入れがありますね。今にして思えば、このゲームで起用した声優さんって、実はアニメ好きの渡部さんの趣味が全開してたような気がするのですが?(笑)
※ 「カイザーナックル」では矢尾一樹、島津冴子、久川綾などの声優陣を起用している。
   
渡部: ええ、もうそのとおりです。 島津さん好きでしたので、収録とか楽しかったですよ(笑)。 あと、この時期になるともう自分で思ったとおりの音が出せるようになってきたので、「サイバリオン」のときにはできなかったことでもできるようになりましたね。
   

 
●アリカ~スーパースィープを経て独立の道へ
   
鴫原: もし差し支えなければ、タイトーをお辞めになった理由は何だったのかをお聞かせいただきたいのですが?
   
渡部: 自分は元々、「ゲーム好き」という前提があってこの会社に入ったわけですが、上司が変わってからゲーム好きでないスタッフがどんどん増えてきて、「音楽とは何ぞや?」みたいな、なんだか違った方向に行き始めるようになったからですね。
   
安藤: どちらかというと、アーティスティック的な思考になっちゃったと?
   
渡部: いえ、アーティスティックなのは別段問題は無いのですが、まず大前提に「ゲームに対する音付け」という意識が無いんです。本編とまったく関係ない事をやったりとか自分の趣味を押し付けるとか、自分たちはあくまでゲーム開発のためにやっているのに、何を勘違いしているのかなあって思って、それで嫌になっちゃったんです。 古川君やばびー辺りはその辺をわかってくれてたのですが…。それで、このままここにいたら自分がダメになってしまうな、と思って辞めました。
   
大野: ところで、「めがてん」細江さんと最初に会ったきっかけは?
   
渡部: 当時の同僚の仲間を介して知り合いました。お互い会社が近かった(※タイトーとナムコ)こともあって、それ以来よく会っていっしょにご飯を食べに行ったりとかしてました。ナムコの機材って充実していていいな~なんて思いながら話を聞いていたこともありましたね(笑)。やがてタイトーも、「F3システム」が出たあたりで基板の性能が向上したので、やっとこれでナムコに追いつけるぞ、なんて思ったりしてましたね、当時は……。
   
大野: もう「レイフォース」が出た頃になると、ZUNTATAはかなりの大所帯になっていたのかな?
   
渡部: そうですね。この頃になると十数名が在籍してました。
   
鴫原: タイトーを辞めると決めてから、もうすぐにスーパースィープに移ってお仕事をする計画を立てていたのですか?
   
渡部: それが、後のことはもう全然考えていなかったんですよ……。辞めてしばらくしてから、三原君(※現アリカ副社長)から「ウチに来ないか?」って声をかけてくれたんです。やべー助かる! ということで、アリカに入ってそこで1年半ぐらい働きました。
   
鴫原: 確かアリカで渡部さんが最初に担当したのは、「ストリートファイターEX」シリーズの曲ですよね?
   
渡部: はい、「ストリートファイターEX2」のアレンジ曲が最初の担当ですね。
   
大野: 職場が変わったことで、さらにまたスキルアップができたということになるのかな?
   
渡部: ええ、それまでとは違うベクトルのスキルの上げ方でしたね。ある意味エンジニア志向といいますか作曲家志向といいますか。当時タイトーを辞めてよかったなと思ったのは、アリカのスタッフがみんな「ゲーム好き」だったことですね。他のスタッフと普通にお話していても、それがすごく実感できて嬉しかったですね。でもその一方で、他のサウンドスタッフが曲を仕上げる時間がものすごく早かったのを目の当たりにして、いかに自分がそれまでぬるま湯につかっていたかということを痛感しました。こりゃあヤバイぞって、彼らのペースに追いつくのにもう必死でしたね。
   
安藤: 決められた仕事は期間内にきっちりと作り上げる職人さんみたいなイメージでしょうか?
   
渡部: ええ、そういうプロ意識みたいなものに関してすごく刺激を受けました。お陰さまで1日6曲とかダッシュで上げる時と、1曲集中みたいな詰めて上げる時の使い分けも身に付き ましたし。
   
鴫原: あと、同時期に「カスタムロボ」や「カスタムロボV2」の作曲も渡部さんがなさったそうですが?
   
渡部: そうですね、分担作業ですので全部ではありませんが、10曲少々担当してました。
   
鴫原: 「カスタムロボ」シリーズは確かノイズが開発元だったと思いますが、個人的に誰か関係者との伝手があったのですか?
   
渡部: めがやん(※細江氏のこと。以下同)からの紹介ですね。初めて会ってから、彼にはもう随分とお世話になってまして、いろんな方々と知り合う機会が出来たのも彼の人徳だと思ってます。同期ですし、何よりお互いゲーム好きって言うのが一番大きいのかな。いつもお互いに意見をぶつけ合ったりして。そのうち「やっくちんは独立しない の?」って言われて、 ああそうかなあなんて思って独立することにしたんですよ。タイトーを辞めるときには全然そんなこと考えてなかったのに、スーパースィープを辞めるときになって初めて独立を意識しました。
   
鴫原: 社長の細江さんのまさに目の前で、「独立」という言葉を出されるとは!
   
渡部: そう。本当にメチャクチャでしょ(笑)?
   
鴫原: お話が前後しましたが、スーパースィープに入ったきっかけは?
   
渡部: ちょうどめがやんが独立したがっていた時期に誘ってもらったので、じゃあ行きますってことで決めました。
   
安藤: じゃあ、渡部さんは創設当初からいらっしゃったわけですね。
   
渡部: ええ、そういうことになります。で、そして今度は私自身もということで、フリーランスになって現在に至るというわけです。
   

 
●代表作「ボーダーダウン」「旋光の輪舞」シリーズを語る!
   
安藤: 「ボーダーダウン」のBGMもCD化されてますよね?
ボーダーダウン サウンドトラック
2003年発売。オリジナル曲のほかに、細江、佐宗、安井の各氏によるアレンジバージョンも3曲収録されている。ちなみに「ボーダーダウン」は、第4回アルカディア大賞・ベストVGM賞の栄えある受賞作でもある。 ・「ボーダーダウン サウンドトラックVol.2」:2005年発売。前回のCDの未収録曲や、ドリームキャスト版のリミックス曲も収録されている。
   
渡部: はい。特にイメージサントラの方は、企画のマルヤマ君(※グレフ社長の丸山博幸氏のこと)の案だったんですけど、よくぞ出してくれる気になったなぁと思いつつ感謝してます。でも早々に完売しましたので、これが今、わりといい値段がついてるらしくて…。
   
安藤: 「ボーダーダウン」は以前の「カイザーナックル」のときと同じで、このゲームの曲を聞いたときにも、いかにも渡部さんらしいツボの突き方をしているなあって感じましたね。あっ、またやってるなあみたいな(笑)。
   
渡部: いやあ、そう言っていただけるとすごく嬉しいですね!
   
鴫原: 私なんかですと、2面の「Girl of Power」のBGMが、特にノリノリで好きですね。
   
渡部: そう来ましたか~(笑)。最近のコだと、絶対にそっち系の曲を支持するんですよね……。
   
鴫原: 最後の6面(※6Aと6B)のBGM「Crushing Blow」も、だんだん途中から盛り上がってくる構成になっていてカッコイイです。
   
渡部: その曲も、このアプローチなら多分若い子が喜ぶだろうな、 みたいな作り方をしているんですよ。あ、ちなみにそこのステージはニセモノの最終面で、本物の最終面はこれとは別の曲(※6Cと6Dで流れる「Rain」のこと)を用意してるんですよ。自分が本当に最終面用の曲として作ったのは、実はこっちなんですよね。ですから、「Crushing Blow」はそれっぽくはあるけれど、実はニセモノだということを意識して作ったものです。
   
鴫原: ナルホドォ!
   
安藤: こうすれば若者が喜ぶだろうとか、そういうところをちゃんと計算してるのはやっぱり渡部さんらしいですよね(笑)。
   
鴫原: 「旋光の輪舞」シリーズでは、渡部さんがシリーズ全作品のBGMを作っていらっしゃるそうですね。
   
渡部: はい。先日稼動を開始したばかりの、「旋光の輪舞DUO」 ニューバージョンの曲もすべて私が作っています。そうそう、9月30日にこのゲームのCDが発売されたばかりなんで、ぜひみなさん買ってくださいね!
旋光の輪舞DUOサウンドトラック
「旋光の輪舞DUO サウンドトラック」:できたてホヤホヤ、CD2枚組の豪華版アルバム。当サイトでもお求めいただけます!
   
鴫原: シリーズの最新作となれば、当然これまでで最も曲数が多くなっていると?
   
渡部: はい、もちろんです。
   
鴫原: と、いうことは、以前に作った曲に新曲を加えてバージョンアップをしたわけですよね?
   
渡部: いえ、1曲ずつみんな手を加えて、すべてリニューアルしてます!
   
鴫原: それはスゴイですね! そうなると、やはり第1作目から曲全般をお一人で作ったわけですから、渡部さんのコンポーザー人生の中で「旋光の輪舞」シリーズが代表作ということになるのでしょうか?
   
渡部: ええ、まあそうなんですけど、実は今でもまだ全然書き足らないなあって思っているんですよ。曲作りが全部終わったあって思ったら、もう次の瞬間には、しまったやり忘れたなあって思ったりして、毎回そんなかんじの繰り返し状態なんです。グレフ作品はいつも締め切りギリギリまで楽曲を煮詰めているせいで、めがやんからは「ギリギリ魔人」という称号を頂戴しました(笑)。普段であれば1週間前とかにサクッと終わらせるんですけど、グレフやスィープの作品とか、気合を入れてやらざるを得ないものに関しては、一旦出来上がってもどうしてもギリギリまで煮詰めちゃったり、場合によっては曲を自分から追加したりするんですよ……。あと、これは余談になりますが、めがやん自身は普段からかなりムチャなスケ ジュールで仕事をするんですけど、彼はいったいいつ寝てるんだ、とよく思い ます(笑)。
   
安藤: そのニューバージョンの曲ですが、将来「iTunes Music Store」とかで配信するとかの予定はありますか?
   
渡部: ダウンロード販売は多分やらないのではないでしょうか。もしまた何か出すとしたら、新曲ばかりを収録したアルバムにして出すのではないんじゃないかと思います。自分はパッケージ派でもありますし。
   
鴫原: 「旋光の輪舞」では、具体的に曲のイメージはどうやって作っているんですか? 既存の対戦格闘ゲームとはちょっと違ったゲームシステムになっていますし、従来のようにお国柄サウンド的な手法とかも使えないですし……。
   
渡部: このゲームの場合、そういうシステム的な考え方はもう二の次ですね。もしそれを考えながら作っちゃうと、後でユーザーさんから、「以前に作った○○といっしょの手法やん!」って言われちゃいますから。このゲームでは、たとえばこのキャラのテーマは昔ながらのゲーム好きが気に入りそうなオッサンホイホイ的な曲にするとか、こっちは最近のテクノ好き向けにしよう、じゃあこっちのは女の子が好むようにしようとか、キャラの設定資料とかカットを見ながらいろいろ考えて作っているんです。こうやって各キャラクターごとに曲を作るというスタンスは、「カイザーナックル」の辺りから今にいたるまでずっとつながってきているかなあとは思います。
   
大野: 「ロンド」っていうぐらいだから、やっぱり曲のほうもロンド(円舞曲)を意識してるのかな?
   
渡部: 本来はそうなんですけど、でも文字自体が違いますからね。それとこのゲームに関しては、個人的にグラフィックに引かれて曲を作りたいとも思ったんですよ。最初見たときに、ああ、やっとゲームの中でもこんな絵が使える時代になったんだなあって感じましたからね。
   
鴫原: SEも渡部さんお一人で作っているのですか?
   
渡部: そうです。もう何から何まで、自分ひとりでみんなやらなきゃ気がすまないんですよ。とはいえ、効果音を作っているときは意外と気分転換になったりして楽しいですよ。
   
安藤: 渡部さんとしては、どんなにキャラクターとか曲数が増えても全部ひとりで作ることにこだわりたいと?
   
渡部: ええ、そうなんです。自分が特に力を入れている作品についてはそうしたいですね。
   
鴫原: シリーズ全作品の曲を担当したとなると、合計したら相当な数になりますよね?
   
渡部: 今回だと1キャラあたりで2曲ずつ、全部で35曲ぐらいのBGMを作っています。第1作目からそうやって作り始めた以上、もう今さら後には引けないですしね。開発の際にマルヤマ君からは、「今回は別にそうしなくてもいいよ」と気を使ってはくれていたのですが、 それでも今までどおりにやらせてください、って言っちゃいました。実を言いますと、いわゆる続編タイトルの作曲をやらせていただいた最初の作品がこの「旋光の輪舞」シリーズなんですよ。
   
鴫原: あ、そうなんですか! 確かに、タイトー時代に作曲をなさった「アルカノイドリターンズ」や「エレベーターアクションリターンズ」とかですと、シリーズ第1作目のほうには参加なさっていませんよね。
   
渡部: そうそう。以前からずっとシリーズ作品をやりたいなと思っていたので、この仕事がきたときはやっとついに……って思いました。
   
大野: で、続編をやるときも、以前とまったく同じものを流すことが許せない自分がいて、そのせいでいろいろと苦労しちゃうみたいな?
   
渡部: いやあ、もうそのとおりなんです(笑)! ここに来て、自分が今まで続編をやったことがなかったのがいろいろと足かせになっちゃっているんですよね、常に新作でなおかつ新しいスタンスを、ということでやってきましたので。DUOに関して言うと、そういった理由で前作みたく全部が全部「ガッチリ!」といったスタンスではなく、ちょっとライト層にも受け入れられる様に曲中のストーリー要素は少々散らした創りにしてます。ただ、今にして思えば、続編を担当してきた方々って、作るときには相当苦労していたんだろうなあって痛切に感じます。実際、自分の狙わんとした部分はある程度消化出来たのですが、本来の自分スタンスよりちょっと意識的に離してしまったので、今後は素の造り方に戻そう。とか思ってます(笑)。
   

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