【コラム】韓国の弱点を世界に示した「天安」沈没事件(上)

 北朝鮮の核開発をめぐり、韓半島(朝鮮半島)に最初の危機が訪れた1993年。米紙ニューヨーク・タイムズは、当時の韓国政府の対北朝鮮政策について、「『断固とした対応』を口にしながら、実際には断固とした対応を取っておらず矛盾に陥っている」と報じた。これは韓国政府が、北朝鮮絡みの問題が浮上するたびに「断固とした対応」を口にするものの、実際には断固とした措置を講じる考えがないことを指摘したものだ。同紙はその例として、韓国が「北朝鮮の核開発を阻止するため、武力を行使することは絶対に容認できない」と主張している点を挙げた。

 北朝鮮の核保有を絶対に認めないというのであれば、問題解決のために、武力行使も辞さないというのが、論理的には妥当だ。だが、韓国の現実は、「武力」という言葉を口にするのも容易ではない。第1次核危機(1993-94年)当時、金泳三(キム・ヨンサム)大統領が「国民は安全保障をめぐる深刻な状況について、あまりにも知らなすぎる」と発言した直後、インスタントラーメンの買いだめ騒動が起こった。政府が最近発表した、哨戒艦「天安」沈没事件への対応措置には、武力の「武」の字も含まれていないにもかかわらず、株価や為替市場に影響を与え、「李明博(イ・ミョンバク)政権が全面戦争を引き起こそうとしている」という主張も飛び交っている。このような状況では、北朝鮮の挑発に対し、韓国が「断固とした対応」を口にしながら、実際には断固とした措置を講じないというのは、仕方のないことだ。

 ニューヨーク・タイムズは最近、韓国の東西大で教授を務めるブライアン・マイアース氏が書いたコラムを掲載した。同大は、「天安」沈没事件で犠牲となったムン・ヨンウク中士(曹長)の母校だ。マイアース教授は、「ムン中士の同級生たちが募金活動を繰り広げている一方で、キャンパス内で北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記に対し、怒りをあらわにする者が誰一人としていないことにショックを受けた。李明博大統領が打ち出した、北朝鮮に対する制裁措置が、相対的に弱い内容だったにもかかわらず、国全体が恐怖に陥ったような状態だ」と語った。その上で同教授は、「韓国人は民族意識は強いが、韓国国内での一体感は弱い。『天安』沈没事件は、南北関係の悪化が招いた悲劇だ、という認識が広がっている中、(韓国国内の空気を読まずに)米国が北朝鮮に厳罰を科そうとすれば、むしろ逆効果になりかねない」と主張した。韓国国内の空気を考慮すれば、あえて米国が北朝鮮に対する強硬論にこだわる必要はない、というわけだ。

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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