エキサイトブログ|検索

釣魚食善 『千魚一話』 by魚畑耕海
其の八拾 メバル、メバル、カサゴ、メバルの巻…三崎(福長丸) 




其の八拾 メバル、メバル、メバル、カサゴの巻…三崎(福長丸)

「なにを釣りたい!」かは、もちろんある。ただし、「何が釣れたか?」は、あくまでも結果でしかない。なによりも大事なのは、「なにが釣りたかった?」よりも、やはり「何が釣れたか!」である。
 

 たとえ〈プロ〉だろうが、休日ごとの〈太公望〉だろうが〈にわか釣り師〉だろうが、場所が〈浜〉だろうが〈防波堤〉だろうが〈磯〉だろうが〈船〉だろうが、釣り方が〈投げ〉だろうが〈ウキ仕掛け〉だろうが〈ミャク〉だろうが……釣行の際の気持ちは、ベテランであれ初心者であれ、〈本命〉と〈大漁〉しか考えないところが、釣りをする人間の浅はかさというか、当たり前のことなのである。
 そこで、とある春先の釣りのときだった。
「ほうっほう、いきなりメバルだねぇ!」
 大きさといえば十五センチ程度の、刺身には小さくて、煮付けにしても骨が邪魔になる…と、なんとも微妙なサイズなのだが、「とりあえず、これでボーズは免れたわけだ!」と、バケツに入れて、すかさずエサを付け替えた仕掛けを投入したのだった。
「おいおい。立て続けってことは、つまり入れ食いというわけではないかよ!?」
 こうなると、まさに千才一隅のチャンスとばかりに〈手返し〉が早くなったりするから、「だからやめられないんだよ、釣りは!」などと悦に入ったりするのだ。
 やがて三匹、四匹と、似たり寄ったりの大きさのメバルをバケツからクーラーへと移しながら、「ぼちぼち、ほかのやつが掛かってもいいんじゃないの?」と本音をメバルに告げたりするのだ。
「いやいや。おまえたちが気に入らないとか、そういうことじゃないんだけど。ただ、ちょっと贅沢を言わせてもらうと……っと、きた! しかもカサゴだよ、やっと」
 とはいうものの、型はメバルに比べてもかなり小さめだが、薄い茶色にちょっと濃い目の〈アクセント〉が入ったことは素直に喜ばしいわけである。



(続きを読む・・・
 ↓

 そして、次がメバルだった。大きさ的には、カサゴより大きい。
 さらに、また次も、またまたその次もメバルで、そしてこれまたカサゴだった。「おいおい。今日は、ほかに誰もいないのかね?」
 と、冗談でもなんでもなく。マジに海に向かって言いたい気分を味わったことは……何度、何十回どころか、それこそ山ほどもあるのだが「ボチボチ場所を変えないかね、船頭さん?」
 すると、船頭は握り飯をぱくつきながら、ジッと魚群探知機と睨めっこだった。
 まぁ。船頭は船頭で、客に釣らせるのが仕事だから、魚探の反応と過去の実績と勘を頼りに魚の群れを探してるわけだ。
 これで船頭が競馬放送でも聴いていたひには、一介の釣り客としても怒るわけだが、仕事に精を出してるわけだから、客としてはまさに船頭に任せるしかないわけである。
 そうこうしながらも、あいかわらずメバル、メバル、メバル、そしてカサゴのペースは変わらないのだから、「やっぱり今日は、そういう日なのかもしれない」と思うしかないのだ。
 ボーズじゃないから、まだいいか……とは言うものの、だんだん腹が立ってくる。
 それをいち早く察知したか、浜野太陽氏が「しょうがないよ、こういう日もあるのが釣りなんだからさ」と鷹揚に構えているから、「どうですか、そっちの調子は?」
 訊くと、「メバル、メバル、メバルで……そして、ほら。また、メバルだもの!?」だった。
 そこで「どこもかしこも、メバルばっかだしなぁ」と、船頭だった。
 つまり船頭は、他の船と無線で連絡を取ったりもしてるらしいのだが、どうやらほかの場所でもメバルの〈てんこ盛り〉らしい。
 そういえば、その昔池谷という同年輩のデザイナーなどと飲んだときに、♪とんで とんで とんで とんで とんで とんで とんで…と歌うものだから、「おいおい。そんなに飛んでばかりだと、いったいどこまで飛んでけば気が済むんだよ?」と言ってやったら、♪……まわって まわって まわるうぅぅと、オチがついた。
 そのとき、池谷は「そう言うけどね。円広志が歌ったこの『夢想花』って曲は、魚ちゃんが好きな〈浜田良美〉とおんなじ世界歌謡祭どころか、ヤマハのポプコンでもグランプリを取ったんだからね!」と言うから、「だけど、おまえさんが歌ってるせいか…途中から、デトン デトン デトンて聞こえるぜ!」と言い返してやったのだ……が、それはさておき。
 ふーん、なるほど。つまり浜野氏やほかの釣り連中と比べたら、まだマシってことかな……メバルに〈カサゴ〉が混じってるだけ?


●円広志
『夢想歌』は、〈第十六回ヤマハポピュラーソングコンテスト(ポプコン)〉および、〈第九回世界歌謡祭〉でグランプリを獲得。さらに本名の篠田義彦の名前で作曲した、♪ヒュルリ ヒュルリララ ききわけのない女です……と、一九八三年に森昌子が歌った『越冬つばめ』で知られている。
(出典=HP「青春音楽官」より抜粋)
●浜田よしみ
一九七四年の〈第五回世界歌謡祭〉で、エレン・ニコライセンの『夢みる心地』とグランプリを同時受賞した『いつのまにか君は』という曲は、当時デザイナーの駆け出しで、しかも十代最後の歳を迎えていた店主にとって、かつて某コピーライターがつくった「記憶は消える、記録は活きる。ライオンファイル」のコピー同様、まさに人生の〈ターニングポイント〉でもあった。
※というわけで、この項は出典なし。



by :

photo :
title design :
blog design :
adviser :
ブログ協力 :
その他 :
店主 魚畑耕海
(青山漁業狂動組合・横浜支部 調理長※)
アンソレ・アダムス・スガッチ
♪メンソーレ・ゴヤ・エイジ
negi4
シングル・モルト・キタカタ フユカツ
yuukorinn
「単なる飲み仲間」と称する外野一同


  ※店主は、未だ調理師免許がないために〈料理長〉とは名乗れません。



by mitsu-akiw
(2008/03/05 23:32)
本編<釣魚食善>
トラックバック0件

(*)前へ  次へ(#)

リンクする
釣魚食善 『千魚一話』 by魚畑耕海
ログイン
エキサイトブログトップ
エキサイトモバイル

ヘルプ

上へ

(C)Excite Japan