リリリ…… ベッドの枕もとで、目覚まし時計が電子音を鳴り響かせている。私は、一睡もしていないためにけだるげな体を起こした。手の伸ばし、目覚まし時計のスイッチをたたいて音を止める。 「ふぁ……もう朝なんだ……」 私は、窓のない小さな個室のベッドの上にいた。ソフトライトだけが部屋を照らしている。そのため、夜が明けたことにはまったく気が付きようがなかった。 「う……あぁ……」 私の身体の下で、うめき声が聞こえた。謙一くんだ。謙一くんは全裸で、黒いランジェリーをその身にまとった私と下半身をつなげている。私は、一晩中、謙一くんのそそり立ったペニスと、濃厚な精液をむさぼっていた。私は、謙一くんの胸板を指でいじりながら、うっとりとした声でささやく。 「あぁん……やっぱり、謙一くんは最高だよ。謙一くんとなら、いつまでもセックスしていられそう……」 謙一くんのペニスを飲み込んだ膣を、キュッと締めあげてあげる。謙一くんは、可愛らしいうめき声をあげながら、射精した。私はその精液の味を堪能すると、名残惜しく、腰を浮かせた。二人がちぎりあっていた部分がゆっくりとほどけ、トロトロになった粘液が滴り落ちる。何十回と絶頂しただろうに、そのペニスはいまだ力強くそそり立ったままだ。多分、このペニスはもうずっと硬く大きくなったままだろう。そう考えると、胸の悦びが暴走しそうになる。 「ごめんね。夜になったら、また一緒に楽しもうね」 「うぁ……ぁ……」 後ろ髪をひかれる思いで、私はベッドから腰を下ろす。言葉にならない声をこぼす謙一くんを尻目に、私は自分の個室に備え付けのシャワールームに向かった。漆黒の下着を脱ぎ捨てると、体にこびりついた汗と体液を簡単に洗い流す。 「ん……」 湯の粒が、肌を跳ねるだけで喜悦の波が体の表面を駆け巡る。私は、そのまま一人で自分の秘所をいじりまわしたくなる衝動をぐっと抑えて、シャワーのコックをひねり、湯を止めた。バスタオルで体をぬぐうと、再び私の身体の一部ともいえる黒い下着を身に付け、その上に学校の制服を着込む。部屋の机の上にまとめられた手荷物を確認すると、私はベッドの上に転がったままの謙一くんを覗いた。 「それじゃ、行ってくるね」 私は、とびっきりの笑顔を謙一くんに投げかける。謙一くんの視線が私の方を向いた。謙一くんの目は、なんだか分からないけれども、悲しげだった。 「あれ……謙一くん、なんで、そんな目をしているの?」 謙一くんの返事はない。 「あ、ひょっとして……」 私はクスリとほほ笑んだ。 「私が、他の男の人とセックスすると思って嫉妬してくれているのかな?」 そう思うと、私はなんだか嬉しくなった。 「安心して、謙一くん。私の一番は、謙一くんなんだからね」 私は、もう一度、謙一くんに笑いかけると、自分の部屋を後にした。 手さげカバンを片手にビルのロビーに出ると、そこには麻衣と花梨がいた。談笑していた二人は、私に気がつくと歩み寄ってくる。 「おはよう、絵美理」 「絵美理ちゃん、おはよう」 「あ……二人とも、おはよう」 私たちは、笑いあいながら、朝のあいさつを交わす。そのまま、お互いの顔を近づけて……唇を重ねた。麻衣と花梨の柔らかい唇の感触が、生々しく私の官能を刺激する。 んちゅ、ぴちゃ…… さわやかな朝陽の差し込むロビーに、水音が響いた。私と麻衣と花梨は、三匹の蛇のように舌をからませあい、その唾液を交換し合う。淫気に満ちた唾液は、ほんのりと甘く舌にからみつき、美味だ。私たちは、堕天使同士の口内の味を堪能した。 「あ……やっぱり、絵美理ちゃんは、謙一くん一筋なのね? 他の男の人の味がしないわ」 「そういう花梨こそ、弟くんの味しかしないじゃないの?」 「麻衣の方は、ずいぶん無節操にいろんな人を楽しんだみたいね」 「うふふ、選り好みしないって言ってほしいわ」 私たちは、お互いの身体にしみ込んだ昨夜の情交の残り香を味わい、寸評しあう。三人の目が合うと、また笑った。私の笑いは本心からのものだし、たぶん花梨もそうだろう。私と花梨は、もはやランジェリーサキュバスとしての衝動を何の躊躇もなく、楽しめるようになった。 「おはよう、三人とも。なんだか、とっても楽しそうね」 「あ、ママ!」 「静華さん、おはようございます」 私のママも、ロビーに来ていた。闇色のテディで締めあげられた豊満な肉体に、研究用の白い白衣をまとっただけの格好だった。 ピクン…… そのとき、私の下腹部で、何かがうごめいた。それは、ママにしても同じようで一瞬動きを止める。胎内のわずかな振動は、それでいて深い悦楽の波紋を全身に投げかける。私とママの様子を見つめる麻衣と花梨は、どことなくうらやましそうだった。 「……結局、“淫獣”様の精が着床したのは、絵美理と静華さんだけでしたよね」 麻衣は、少しだけ不満げな様子で言った。彼女の言う通り、“淫獣”様にすべてをささげた儀式の日、私とママは子宮に“淫獣”様の仔を宿していたのだ。私たちのおなかは、よく見ても分からないほどにしか膨らんではいない。それでも謙一くんとセックスするたび、少しずつ確実に胎内の淫気が強くなっていくのを感じている。愛する謙一くんと私の共同作業で“淫獣”様の仔を育てている……その感覚は、私にたまらない充足感を与え、陶酔の世界へと引きずり込む。 「絵美理ちゃんも、静華さんも、うらやましいわ。私と麻衣ちゃんだって、“淫獣”様に孕ましていただきたかったのに……」 花梨の心底残念そうな声で私は我に返った。隣にいる麻衣も、少しへそを曲げたような顔をしている。ママは、そんな二人にやさしく微笑みかけた。 「大丈夫よ、二人とも。今度の新月の夜に、また儀式をするわ。その時に、孕ましていただけば良いのよ」 「本当ですか!?」 麻衣と花梨がぱっと明るくなり、歓喜の声で返事をする。ママは、私たちにゆったりと頷く。 「その前に、いろいろと計画を進めていきましょう? この街を、“淫獣”様の都に相応しく作り変えるために……そして、いずれ世界を淫気で満たすために……」 「あぁ……はい……」 私たち三人は、うっとりとママの言葉を聞いていた。私たち、漆黒堕天使ランジェリーサキュバスは、ただ淫気を集めるだけではなく、さまざまな計画を少しずつ進めていた。この街の警察や、市議会、財界人を籠絡し、少しずつ淫気の支配下に置いてきていたのだ。今日は、うちの学校の先生をまとめてセックス奴隷にしてしまおうと考えている。そのまま、学校を淫気奴隷の養成機関に作り変えてしまうのだ。 (うふ……待っていてね……) 私は、無意識のうちに自分の下腹部を愛おしくさすっていた。再び、ピクンと私の子宮が反応する。“淫獣”様も、その仔も、もっとたくさんの淫気を欲している。“淫獣”様の花嫁として、その使命を果たさねばならない。快楽への衝動と、強い責任感が、私の心を突き動かす。 「さあ、行ってらっしゃい。麻衣ちゃん、花梨ちゃん、それに、絵美理。今日も、がんばってね?」 ママが、私たちを促す。 「はい! 行ってきます!!」 私たち三人は、カバンを手に取ると、満面の笑みを浮かべて返事をした。そして、“淫獣”様の支配するステキな世界に思いをはせながら、目を覚ましたばかりの街へと駆け出して行った。
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