ママの自室の隣の部屋は、衣装部屋だった。ひとしきり快楽を貪り合った私たちは、ママに促されて、この部屋に移動した。ママの趣味に合った品の良い服がいくつもかけてあったが、大半は、胸元が大きく開いたドレスだったり、深いスリットの入ったスカートだったりした。 私と花梨と麻衣の三人は、大きな鏡の前の椅子に座らされた。ママは、私たち三人に手際よく化粧を施し、結婚式で身につけるようなヴェールとティアラを着つけていった。ただし、ヴェールとティアラの色は、私たちが身につけているランジェリーと同じ漆黒の色だった。 「ふふふ。さあ、これでキレイになったわよ?」 仕上げにブーケを持たせられた私は、鏡に映った自分の姿を見つめた。額の上で輝くティアラ、髪の毛から肩にかけて柔らかに覆い隠すヴェール。この二つだけを見れば、その姿は清らかな花嫁姿かもしれない。だが、その色は、穢れなき純白とは正反対の漆黒。さらに、身体にはドレスもまとわず、それぞれの肉体を全裸よりもいやらしく強調する黒のランジェリーのみを身につけている。手に持ったブーケも、妖艶な闇の装束に似合うような黒い造花で作られていた。清浄なものを冒涜するかのような衣装の、淫靡な花嫁の姿が、目の前の鏡に映し出される。私は、自分の艶姿に、少しの間だけ見とれていた。 「どうしら。気にいってくれた?」 「うん……とってもきれいで、いやらしい……」 「ふふ。それは良かったわ」 いつの間にか、ママも自分の着付けを済ましていた。ママは、衣装部屋の扉の前に立つ。 「さあ、三人とも、私についてきて? これから、大事な儀式があるのよ」 私と花梨と麻衣は、そろって頷いた。私たちは、衣装部屋の扉をくぐり、ヴァージンロードを歩く新婦のように廊下を進んだ。 「……ねえ、ママ。こんな恰好をして、これから何をするの?」 「気になるのね? 絵美理」 「うん……」 「いいわ、教えてあげる。もっとも麻衣ちゃんは、うすうす気づいているでしょうけど」 ママは、エレベーターホールで立ち止まると私たちのほうを振り向いた。ママの唇が、妖艶に歪む。 「一言でいえば、結婚式よ。私たち四人が、“淫獣”様の花嫁となるためのね……」 ママは、静かに、はっきりといった。その言葉を聞いた瞬間、私の鼓動が急に早くなった。私の全身を撫でる淫気が、歓喜に震えた。 「素敵でしょう? 私、ずっとこの儀式を楽しみにしていたのよ」 麻衣が、うっとりとした声で言う。 「ああ……でも、私のこと、花嫁に認めてくれるかな……“淫獣”様にたくさん逆らっちゃったもの……」 「安心して、花梨ちゃん。花梨ちゃんが心を入れ替えてお仕えすれば、“淫獣”様も、必ず認めてくださるわ」 「本当ですか、静華さん?」 不安を漏らす花梨を、ママが優しく慰める。 「でも、ママ。“淫獣”様は、いま、どこにいらっしゃるの?」 「ふふ。これから、案内するわ」 ママは、エレベーターの扉を開いた。ママに促され、私たち四人はエレベーターに入る。ママが押し慣れないボタンを押すと、エレベーターの扉が閉じる。そのまま、私たち四人はゆっくりと地下に向かって下りていく。 「このビルの地下には、設計書にも書かれていない地下スペースがあるの。ある企業が、危険物質を無断で保管するために作ったらしいんだけど。その会社が法律違反で倒産するときに、このビルを譲ってもらったの」 「そこに、“淫獣”様がいらっしゃるの?」 「ええ。私と麻衣ちゃんと花梨ちゃんの三人で“淫獣”様と戦った時、私たちは負けてしまった。だけれども、“淫獣”様も深手を負われて、力を消耗してしまったの。消耗した力を蓄え、傷をいやす安全な場所が必要だったのよ」 「実際に“淫獣”様に移動していただいたのは、半年くらい前ですよね? 大規模な輸送を怪しまれないように市の偉い人を籠絡しましたし、花梨のような霊感が強い人に対するカモフラージュもしなくちゃいけませんでしたから」 ママと麻衣の話だと、“淫獣”様がこの街に運ばれてきた時期と、連続暴行事件が増え始めた時期が重なっている。それじゃあ、けっこう前からママはこの街に来ていたのに、私は気がつかなかったんだ…… 「うふふ、絵美理。静華さんが、この街を選んだのは、あなたがいたからなのよ? もちろん、私にとっても、花梨がいたわけだけどね」 「本当は、もっと早く、絵美理と花梨ちゃんを迎えに行きたかったんだけど、準備に時間がかかっちゃったの。ごめんなさいね?」 ママと麻衣の言葉に、私と花梨は顔を赤らめながら、満面の笑みを浮かべた。少し前の私なら、狂った言い分と思っただろう。だが、今の私と花梨にとっては、精一杯の優しさだった。そうしている間にも、エレベーターは、地下に向かって滑り続ける。結構な時間がたって、ようやくエレベーターは動きを止めた。 私たちが息をのむなか、エレベーターの扉が重苦しい音を立てて開く。扉の隙間からは、粘つく水と勘違いするような淫気が流れ込んでくる。扉の向こう側は、飛行機の格納庫を思わせるような巨大なスペースだった。非常灯のわずかな明かりはあるが、それだけでは真っ暗も同然で何も見えない。ただ、その奥から巨大なものがぬめる気配が伝わってくる。 「あはぁ……」 私たち四人は、うっとりと上気した顔で、闇の空間に踏み出した。ピチャリ、と足もとから水音がする。壁や天井から滴ったと思しき粘液で、床一面が覆われていた。 ギョロリ―― 四方の闇の中で、無数の巨大な目が私たちを取り囲むように見開かれた。人外の意思をたたえた無数の視線は、舐めまわすように私たちの身体を捕らえる。壁を覆っていた何かが、一層激しくのたうつ音が聞こえる。その正体は、タコやイカのような触手だった。ただ、その太さは大人を絞殺せそうな大蛇ほどもあり、表面はごつごつとした突起に覆われ、表面は粘液にぬめっている。そんな無骨な触手が、壁と天井を覆い尽くしているのだ。私たちの姿を見て、興奮してくださったのだろうか? “淫獣”様の触手が、一層、激しく蠢いた。 私たちは、荒く息をつきながら、“淫獣”様の品定めを受けていた。もはや、恐怖やおぞましさを感じる余地なんてない。私の胸の中にあるのは、期待と歓喜だけだった。 「“淫獣”様、ご機嫌麗しゅうございます。今宵も、私どもの淫気と肉体をお捧げにあがりました」 ママは、粘液に満ちた床に膝をついた。そのまま、深々と頭を下げる。顔は、陶酔したような表情になっていた。 「そのたくましいお身体で、ご寵愛していただけると思うだけで、私は幸せな気分になりますわ……」 うっとりとしたママの言葉が響き渡った。ママの後ろから、麻衣が歩み出て、同じように膝をつく。 「今宵は、新しい二人の漆黒堕天使も連れてまいりました。私たち同様に、可愛がってください。そして、二人の純白天使を堕したこの私にも、どうぞご褒美を……」 麻衣は、丁寧な声でそう告げた。顔には、声とは裏腹に隠しきれない興奮の色が浮かんでいる。その麻衣の横には、瞳を潤ませた花梨の姿があった。 「あぁ、“淫獣”様……どうか、どうか、“淫獣”様に立てついた私の無礼をお許しください。これからは、心を入れ替え、誠心誠意、お仕えいたします……」 花梨は、震える子犬のようにすがる目で“淫獣”様を見つめると、その前にひざまずいた。“淫獣”様の無数の眼が、ママ、麻衣、花梨と順番に見降ろしていく、その視線は、最後に私のほうを射抜いた。私は、胸が高鳴るのを感じた。私は、はやる気持ちを抑えて、できるだけ、ゆっくり、はっきりと言葉を紡いだ。 「“淫獣”様、どうぞ、私たち四人をお召し上がりください。身も、心も、余すところなく“淫獣”様にお捧げいたします……」 服従の言葉を口にした瞬間、私の体に染み込んだ淫気が一斉に歓喜に震える。私は、前にいる三人と同じように、深々と頭をさげ、ひざまずいた。あとは、“淫獣”様に受け入れてさえいただけば、きっと至高の快楽が約束されるのだ…… ズルリ、ズルリと、“淫獣”様の触手が蠢き、四方から私たちの身体に近づいてくる。やがて、ゆっくりと数本の触手が伸びてきた。その触手は、私たち四人の前で、迷うかのように身をくねらす。私たち四人は、期待に満ちた荒い吐息をこぼす。やがて、最初に選ばれたのは麻衣だった。一本の野太い触手が、麻衣の顔の前に動く。麻衣は、至福の笑みを浮かべて、その触手を優しくつかんだ。 「あぁ……ありがとうございます、“淫獣”様。忠実な下僕の一人として、誠心誠意のご奉仕をいたします……」 麻衣は、凶悪な男性器を連想させる触手の先端に、軽くキスをした。麻衣は、ニコリと淫蕩な笑みを浮かべる。今度は、口を大きく開き、触手を喉まで咥えこんだ。触手も、麻衣の動きに呼応するかのように、うごめきながら、その口腔をズブズブと犯していく。 「あ……麻衣ちゃん、すごい……」 花梨は、すぐ横の麻衣の淫らなご奉仕を見つめていた。花梨の顔は惚けていて、口も半開きになっている。 「“淫獣”様……どうか、私にも、お情けを……どうか、私にもそのたくましい触手にご奉仕をさせてください……!」 花梨は、だらしない顔のまま、“淫獣”様におねだりをする。虚空から私たちを見つめる無数の眼が、花梨のほうに向く。すると、数本の触手が花梨の前に差し出された。 「あぁ……ありがとうございます……ありがとうございますッ!!」 花梨は、今にも泣き出しそうになりながら、歓喜の言葉を述べる。麻衣と同じように、触手を咥えこむと、それだけでは飽き足らず、右手と左手で一本ずつさらに触手を握りしめた。花梨の両手は、とても大切なものを撫でるように、触手を擦りあげ始める。 「じゅぷ……じゅぷ……」 「んん……あはぁ……」 二人の口からは、声とも嗚咽とも取れない、粘液が絡み合う水音が聞こえてくる。口に咥えたあまりに太い触手は、二人の呼吸を困難にしているのだろう。だが、麻衣と花梨は、そんなことは意に介さず、自分たちの行為に陶酔していた。 やがて、花梨の両手に握られていた触手が、ブルッと身を震わせる。その先端からは、人間の精液のような粘液がドプッと吐き出される。人間のものとは比べ物にならないような、濃さと量の粘液は、悦ぶ花梨の顔を真っ白に染め上げる。続いて、花梨と麻衣が口に咥えた触手が震える。 「んぷ……!」 「ん……んん!!」 二人の口の中に、粘液が放出されたのだろう。ただでさえ、巨大な触手で圧迫された口内に、さらに大量の粘液が注ぎ込まれる。それでも、二人は、歓喜の表情でそれを受け止めた。花梨と麻衣は、“淫獣”様から頂いた粘液を一滴たりともこぼさないように、喉を鳴らして飲み干していった。 「あぁ、“淫獣”様の精液……今宵も、いつものように……いいえ、いつも以上に濃くて、素晴らしいです……」 「これが、“淫獣”様の味……すごく熱くて……身体の内側から、燃え尽きてしまいそう……」 うっとりと後味を堪能する麻衣と花梨。そんな二人の周りに、さらに先ほどの倍近い数の触手が伸びる。数本の触手が、膝立ちの二人に巻きつくと、そのまま立ち上がらせる。別の触手は、黒いショーツの中に入り込み、中でうごめくと、ゆっくりとずり下ろす。麻衣と花梨は、触手になされるまま、秘所とお尻の穴をむき出しにして、腰を突き出すようなポーズをとらされる。 「あぁん……犯してくださるのですね……私、幸せです。私の全身を、“淫獣”様の欲望で染め上げてください」 「どうぞ、前の穴も後の穴も、存分に犯してください……私の身体の中に、“淫獣”様の下僕となった証を刻み込んでください……!」 麻衣と花梨のおねだりと同時に、二人の愛液にまみれてドロドロになった秘裂に向かって触手が突き刺される。二人が声を上げる間もなく、さらに別の触手が、二人のお尻の窄まりへと侵入していく。 「あはぁ、すごい……“淫獣”様の触手ペニス、何度味わってもたまりません……! あ……もっと、動いて……中をかき回してッ!!」 「あぁ、イイですッ……! “淫獣”様のモノが、内側でうごめいて、私の身体越しに、二本の触手がこすれて……あぁッ!!」 麻衣と花梨の身体を貫いた触手は、二人の身体を壊してしまうような勢いでうごめく。麻衣と花梨の表情に、苦悶の色は一切ない。二人は“淫獣”様の責め以上に激しく乱れていく。 (すごい……) 私は、ぼーっと“淫獣”様に翻弄される二人の姿を見つめていた。その時、背後から私の肩に、優しく掌が置かれた。 「緊張しているの? 絵美理」 私が振り向くと、そこにはママの姿があった。ママは、ニッコリと優しく、淫靡に微笑んだ。私も、顔を赤らめながら、微笑み返す。 「違うわ、ママ。これから“淫獣”様とすることに、期待していただけよ」 「ふふふ、絵美理はイイ子ね」 ママは、私の肩に手を置いてまま、“淫獣”様に向き直った。 「“淫獣”様……私は、身も心もお捧げしました。さらに、今宵は、我が娘、絵美理も“淫獣”様にお捧げします。いいえ、それだけでは、ありません……私たち四人の文字通りすべてを、“淫獣”様にお捧げします。私たちは、“淫獣”様の花嫁となります。“淫獣”様の一部となり、従属物となることを、誓いますわッ!!」 麻衣と花梨が“淫獣”様と交わる激しい水音と重なるように、ママの誓いの言葉が地下の空間に響き渡る。ママの言葉を受けて、ただでさえ大きかった“淫獣”様の目はさらに大きく見開かれ、私たちを包囲する絡み合った触手は一層激しくのたうちまわった。 次の瞬間、無数の触手が、襲いかかるようにママの身体に群がってくる。そのまま、ママは幾本もの触手に絡みつかれて、空中へとつりあげられた。 「あぁ、“淫獣”様ぁ……」 ママは、触手によって四肢を拘束され、空中で大の字に固定される。ママが甘いうめきをこぼすなか、三本の触手が伸び、漆黒のテディの中に潜り込む。そのまま、ママの口と、秘唇、さらにはお尻の穴へと、乱暴に侵入してく。その瞬間、ママは言葉にならない叫び声をあげた。ママと“淫獣”様の結合部からは、粘液が吹き出し、私の頭上へと滴り落ちる。 目の前で、四つん這いになりながら、前後の穴をえぐられている麻衣と花梨。頭上で、触手にまとわりつかれながら、三つの穴を蹂躙されているママ。私は、三人の姿を眺めながら、ゆっくりと立ち上がった。“淫獣”様の姿を仰ぎ見ながら、両手を広げる。 「“淫獣”様……私のことも、犯してください……私も、“淫獣”様の花嫁になります。私のすべてを捧げます。私自身も、ママも、親友も、捧げます。だから、だから……ッ!」 ゆっくりと、“淫獣”様の触手が、私の身体に集まってきた。触手の群れは、私の身体に巻きつくと、ママと同じように私を空中へとつりあげる。 「ひあっ……」 触手のうち、一本が黒のショーツ越しに私の女性器を刺激した。そのまま、器用にショーツを絡め取ると、私の腰からずり下ろす。むき出しになった私の二つの穴に向かって、蛇がうごめくかのように二本の触手が潜り込んでくる。ぬめる粘膜のせいか、その太さに反して抵抗はない。 「うぅん……あ、はぁ……すごい、すごいよぉ……」 ただ、膣と直腸が触手で満たされただけで、全身を震わせるような悦楽が湧き上がってきた。私の中に入り込んだ触手は、徐々にその動きを激しくしていく。それに合わせて、私にもたらされる快感もまた、増大していった。私は、半ば無意識のうちに、触手を手に取ると、慈しむように口に含み、舐めまわしていた。あらゆるものの境目が蕩けてしまったような感覚のなか、私は唯、一心不乱に“淫獣”様を貪った。しばらくすると、“淫獣”様の触手が、突き上げるような激しい動きへと変わっていった。 (あぁ……“淫獣”様、イかれるのですね? 私も、私も、同時にイキます……!) 触手が、ブルッと震える。“淫獣”様の信じられないほど大量の体液が、三つの穴から、私の体内へと注ぎこまれる。私も、同時に絶頂していた。それは、奈落の底に突き落とされるような深い絶頂だった。 「あはぁ……すごぉい……」 私の口から、触手が引き抜かれる。しかし、下半身に突き刺さった二本の触手はそのままだ。先ほどの絶頂の余韻と、下半身からもたらされる新しい快感を味わっていると、目の前のママの姿が目に入った。ママもまた、絶頂を迎えた後の蕩けた表情をしていた。私たちをつりあげている触手が、私とママの身体をゆっくりと近づける。 「ママ……とっても、きれいだよ……」 「ふふ……絵美理もきれいよ……」 私とママは、お互いの唇を重ねた。空中で体を寄せ合い、抱きしめる。私とママの乳房が、抱き合う圧力でムニュリとつぶれた。黒いランジェリーの薄いレース生地越しに、ピンと立ったお互いの乳首がこすれ合う。その感触が、心地よい。私とママの、女性器とお尻の穴に潜り込んでいた触手が、再び激しく動き始める。 「ママ、私イッちゃうよ……さっきイッたばかりなのに、またイッちゃう……」 「いいのよ、絵美理。何回でも、イッていいの……さぁ、今度は、ママと一緒にイキましょう?」 「あぁ、うん、ママ……あ、あぁ、イク! 私、イクぅぅぅ!!」 私とママは、同時に身体を震わせる。下半身の肉穴には、ドロドロの粘液が、あふれんばかりに注ぎ込まれる。私は、ぎゅっと、ママの体を抱きしめた。 「あぁ、イイよぉ。すごく、イイ……」 ママが、私の髪を優しく撫でる。私は、自分の子宮に、何かが宿るのを感じていた。そして、“淫獣”様がもたらす、さらなる快楽の闇の中へと耽溺していった。
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