メタンハイドレート−次世代の巨大な天然ガス資源 −

図1 メタンハイドレート分子構造

タンハイドレートは、水分子がつくる籠の中にメタン分子がとり込まれて火をつけると燃焼する氷状物質(図1、写真)であり、資源小国日本の周辺海域にも分布するため、未来エネルギー資源として期待されている。

 メタンハイドレートが存在するには低温・高圧の条件が必要で、例えば、0℃で26気圧、10℃で76気圧以上の圧力が必要である。すなわち、海底温度が0℃の場合は260m以上の水深が、10℃の場合は760m以上の水深が必要であるため、その分布は極地の永久凍土地帯と大陸近くの大水深海域に限られる。
 また、メタンハイドレートの生成には、地下における大量のメタンの存在が必要である。このような地下での大量メタン発生のメカニズムは、海底下の微生物発酵で発生するメタンを起源とする微生物起源と、生物遺骸が埋没し地温・圧力の増加により続成作用を受けて発生するメタンを起源とする熱分解起源があり、この成因の差で探査指針が異なる。
 米国地質調査所とエネルギー省及び地質調査所(現産総研)は、世界のメタンハイドレート資源量試算を実施し、陸域では概ね数十兆m3、海域で数千兆m3のオーダーの結果が得られた。これは世界の天然ガス確認埋蔵量(145兆m3)の数十倍以上に相当する。

 
写真 燃えるメタンハイドレート   図2 わが国周辺海域におけるメタンハイドレートの分布予測図

 日本周辺海域でも、米国エネルギー省が南海トラフ北側に4200億〜4兆2000億m3の資源量を試算した。また、地質調査所(現産総研)の調査では、南海トラフや北海道周辺海域等に分布が予想(図2)され、日本周辺海域の資源量を約6兆m3と試算した。この資源量は、日本の天然ガス年間使用量の約百倍程度に相当する。
 海域のメタンハイドレートの存在は、昨年国の基礎試錐でも確認されており、水深2000m以上の大水深域にも多くの資源分布が予想される。その開発利用には、商業的鉱床を発見する大水深探査・掘削技術や生産技術の開発が必要である。地下に眠るすべての資源の開発には100年以上かかるため、メタンハイドレートは、次世代天然ガス資源とも言えよう。
(2001年)

■関連情報 ■

  • 地質調査所月報, Vol. 49, No.10(1998)=天然ガスハイドレート特集号
  • 地質ニュース, 510 (1997) =メタンハイドレート特集号
  • Okuda, Y (1996) Research on gas hydrates for resources assessments in relation to the national drilling program in Japan.Proc. 2nd Int. Conf. On Natural Gas Hydrates, 633-639.
  • 佐藤幹夫、前川竜男、奥田義久 (1996)天然ガスハイドレートのメタン量と資源量の推定、地質学雑誌、Vol. 102, No.11, 959-971.
  • 松本良、奥田義久、青木豊 (1994)メタンハイドレート、日経サイエンス社刊、253p.

 

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