(cache) わりと苦労性(笑)

 まだ日が昇らない早朝に起きたら目の前に眠った美少年がいました。


 ドゲシ。


 ので、蹴落としました。

「な〜、ん〜、で〜、麗予備軍共同部屋で寝てたはずのあたしが、魔導具使い様のベットにいるんやろな?」
「風花さんおクニ言葉でてますよ……」

 蹴落とされた床から起き上がりながら顔をさする小金井の指摘に、風花はゴホン、と咳払いをし。

「何故、麗予備軍の共同部屋で眠っていた私が、鋼金暗器使いの小金井くんのベットの上にいるのか説明してもらいましょうか?」
「ワザワザ言いなおさなくても……」

 言いながらヨッコラショ、とベットの上に乗りあがる小金井。

「だって今日は早く起きたかったし。風花は早起きだからオレ起こしてくれると思って。それに昨日寒かったし?」
「人を目覚まし兼、湯たんぽ代わりにすんなや〜!」

 小金井の言い分に、風花は再び関西弁で怒鳴り声を上げた。

「エアコンつけっぱなしよりこっちの方が電気代節約になるじゃん。それに―――」

 風花寒いの苦手なのにあんな隅っこで寝てるし、という言葉を飲み込んで。

「それに、ベットから連れ出した時に目を覚まさなかった風花も風花じゃん」
「うぐ……!」

 育ての親の影響でか、節約という言葉に弱く。
 また、予備軍とはいえ戦闘員のクセして呑気にグ〜スカ眠っている方が悪いと言外にいわれてしまえば反論できなくなる風花。

「納得してもらったトコロで朝ゴハンよろしく〜」

 ニッカ、と得意げに笑う小金井に風花はわかったわよ、と不承不承に頷いてベットから降りスリッパに履き替え、何がいいのと肩越しに振り向くと。

「何でも〜……ああ、いえ。オムレツとトーストよろしくお願いします(汗)」

 前に何でもいいと答えたところ、そういうのが一番困るとツッコミを入れられ。今日もまたジロリと睨まれたので小金井は慌てて言い直した。

「栄養片寄る。温サラダとスープもつけるから」
「サンキュ。ジュースもよろしく」
「身体冷えるよ……」

 呆れながらも、オレンジジュースあったっけ?と呟きながら洗面所へ向かう風花を、小金井もベットから降りてスリッパを履き追いかけた。















「オハヨーサン、風花。
 って、何でこけとるん?」

 小金井くん食堂に待たせて調理室に来たら長い金髪ツインテールにした男がいました(しかも白い毛玉のボンボン二個つきヘアゴムで)

「何でここにいんの何でここにいんの何でここにいんの〜?!!」
「何でって……このカッコみればわかるやろ?」
「そーじゃなくて!いやそれもあるけど!!」
「紅麗さんに頼まれとった件、報告しにきたんや。
 で、時間あったし愛情たっぷり込めたシチューつくてこ思うてな」
「……つまり紅麗様、寝ずに何も食べずに仕事してるってわけね」

 いくら目の前の人物でも、眠っているところを起こすほど無神経ではない。
 深夜に到着して、朝になるまで適当に部屋を借りて眠っていこうと思っていたのに目当ての部屋に明かりがついていて麗の主が 寝食忘れて仕事に励んでいたので、終わってすぐにでも食事が取れるようにと腕を振るったのだろう。
 コトコトと音を立てて煮立つシチューの食欲をそそる香りが風花の空になっている腹を刺激する。

「すぐに紅茶とクッキー出しといたんやけどなぁ。
 と、おそうなったけど、元気やったか風花」
「当然でしょ。ジョーカー」

 ポン、と白い髪に手を置いてわしゃわしゃと頭を撫でる男―――麗十神衆の一人、ジョーカーの名を風花はそっぽを向きながら呼んだ。

「ここにいる理由はわかった……でも、なぁんでツインテール!?!
 普通にひとつに纏めりゃええやんか!」
「それやと変装の意味ないやん。せっかく地毛に戻したんやし」
「違う意味で目立つわボケ〜!!」

「風花〜?どうかした〜?」


 バシ!ガッ!ゴン!


「なんでもない!いいからおとなしく待ってて!!」

 直ぐ隣の食堂から聞こえてくる声に咄嗟にジョーカーを足払いして尻もちつかせ頭掴んで床に伏せさせ調理室の出入り口から見えないように して声をあげる風花。

「い、いきなりのこととはいえ、十神衆の自分倒れさすなんて腕あげたなぁ風花」
「何いってんのよ今のジョーカーなら普通の麗の兵でもできるでしょうが。ていうか今隣に小金井くんいるのよ姿見られたらどうするのよ万が一って事もあるでしょ!」
「心配性やな風花は〜」
「麗で関西弁使うんはあたしらしかおらんやろがそれだけで悟られる可能性大やっちゅ〜ねん紅麗様にはあたしがもってくさかいとっととここから立ち去りや!」

 そういいながらも心境は小金井くんがいなけりゃもっと構ってもらえたのに!である。

「その必要は無いぞ」

 と、そこに静かな。そしてどこと無く愉快気な色が含まれた声が振ってきた。

「紅麗様!」
「紅麗さん」
「随分と、面白い構図だな」

 ククク、楽しげに笑う紅麗にジョーカーの上に乗っていた風花は慌てて降りて、

「言ってくだされば、仕事の手伝いしましたのに」
「なに、私1人でも充分こなせる程度だったのでな」
「でも徹夜しとったんやろ?あんま無理しすぎるとお肌に悪いで」
「音だって心配しますよ、もちろん私達も」
「せやせや、紅麗さん1人でがんばりすぎやで〜」
「わかった。次からは気をつけよう」

 矢継ぎ早に言われ苦笑を禁じえない紅麗。

「それで、必要ないってどういう意味ですか?」
「私もそこの食堂で朝食をとる、という意味だ」
「いえいえいえいえちょっと待ってください紅麗様?!
 麗の頭領が下の兵と一緒に食事だ何て示しつきませんよ音にだって怒られますって!」
「まだ殆どの者が寝静まっているだろう、問題は無い」
「そやなぁ」
「そーゆー問題ち〜が〜う〜……」

 真正ボケと似非ボケを前に涙流しながら項垂れるツッコミ属性の風花だった。

「かざはな〜、なんかさっきから話し声ばっかで……って、紅麗?おっはよ〜」
「ああ、おはよう」
「なんだ紅麗と話してたんだ―――って、風花?なんで固まってんの?」
「いやいやいやいや!なんでもあらへんよ?!」

 項垂れていたらいきなり小金井が飛び込んできたので思わず硬直してしまった風花だったが、気配を察していたジョーカーはとっくに 小金井の視界から消えていました。

「って、アレ?シチュー??すっげぇ風花、あんな短時間でシチュー作ったのか!?」
「そんなわけないでしょうが。これは仕事熱心なコックさんが作ってったのよ」

 感心する小金井に呆れた眼差しを向けると同時にチーンという音が響いた。
 シチューの匂いが強いのと、なによりジョーカーの存在に意識がいっていたため気づかなかったがオーブンではロールパンが焼かれていた。

「うっわ、こっちもうまそう!早くゴハンにしようよ。あ、紅麗もいっしょに食べよ」
「いわれなくてもそのつもりだ。小金井、先に行ってテーブルに鍋敷きを敷いておけ」
「ちょ、紅麗様?!」

 火を止めて手近にあった布巾二枚で鍋の取っ手を掴み、持ち上げる紅麗に慌てた声を上げる風花。

「いちいちおかわりをよそいに行くより鍋を向こうに運んだ方が手っ取り早いだろう?
 小金井、それが終わったら食器を持っていけ。風花はパンの方を頼む」

 それに紅麗は言い聞かせるようにいってさっさと鍋を持ち上げ、指示を出す。

「だったら私が鍋を持ちます〜!」
「お前ではこの大鍋は無理だろう」

 業務用のでっかい鍋にたっぷり入ったシチューを軽々と運び、風花の叫びを無視してさっさと食堂にいく紅麗。

「お〜と〜に〜お〜こ〜ら〜れ〜る〜……」

 シクシクと泣きながらいわれたとおりにかごの中に焼きたてのパンを入れていく風花を見て、食器を取りに着た小金井は不思議そうに 首を傾げたのだった。





「ところでその仕事熱心なコックって風花の“とーさま”?」
「んな……?!」
「あ、やっぱり?どうりで挙動不審だったわけだ」
「よくわかったな」
「味付けもそうなんだけど。にんじん花や星の形にして、周りの部分勿体無いってみじん切りにしてるトコ前に風花に作ってもらったシチューと同じだし」















 シチューが朝食で何か問題でも?私は平気です。というか、金持ちの朝食って想像つかない。だったらなんで書いたんだっていうとぶっちゃけ金髪ツインテールのジョーカーさん書きたかっただけ(←オイ)
 という訳でウチのJさん、コロコロ変装して麗の館出入りしてました。原作で雷覇さん始めて見た発言してますけど、変装姿は何度も見てます。薄々感づいては いたみたいですが。音遠さんは気づいてなかったので新参者扱いしてますが、一応ここでは原作開始から約2年ぐらい前?に入ってます(というか前回での裏武闘回想シーンのシルエットって Jさんじゃ……?そうなると3,4年前?う〜ん……)
 んでもって小金井くんと紅麗様、初書き。ウチの紅麗様、どうやら天然さんだったみたいです書いてて初めて気がつきました(←オイ)
 風花はツッコミの時とかキレた時とかは関西弁になっちゃいます。
 我が家のシチュー(カレー)はいちょう切り。普通は乱切りみたいっすね。みじん切りにしたにんじん入れたらちょっと黄色くなりそう?めんどいんで試す気ないけど。
 ジョーカーさんは料理上手です。この後、食べすぎで動けなくなった3人、音遠さんに見つかれば年少組がしかられ雷覇さんに 見られれば自分も誘ってくれればいいのにぃとすねられます(笑)
 08・2・28