|
きょうの社説 2010年6月20日
◎民主の新幹線対応 推進意思が見えないのは残念
民主党の参院選マニフェスト(政権公約)に整備新幹線への言及が一切なく、政権党と
しての姿勢が見えてこないのは極めて残念である。自民党はマニフェストで、既着工区間の早期完成や、北陸新幹線の金沢以西を含む未着工区間の今年中の認可・着工を明記し、高速道路無料化の是非も含め、交通政策では両党の違いが際立つかたちとなった。民主党は昨年の衆院選マニフェストでも新幹線を盛り込まず、党代表だった鳩山由紀夫 前首相は選挙期間中、金沢での街頭演説で「新幹線が来なくなるような話はない。安心してほしい」と語っていた。参院選でも同じような言及があるのかもしれないが、党の交通政策で環境にやさしい交通体系実現を掲げながら、新幹線が位置づけられていない理由がよく分からない。菅直人首相もできる限り、具体的な考え方を示してほしい。 民主党の従来の政策集では、新幹線について「国全体の総合交通体系を確立し、その中 で新幹線整備のあり方を位置づけた上、国民の理解を得ながら整備を進める」としていた。推進か慎重か分からないあいまいな記述だが、参院選マニフェストでは新幹線の言葉さえ盛り込まれなかった。 民主党マニフェストの交通政策は、高速道路の段階的な無料化や、「交通基本法」を制 定し、総合的な交通体系を構築することが柱である。だが、基本法制定へ向けた中間整理でも、大都市圏を結ぶリニアに触れていても、整備新幹線の具体的な言及は見当たらない。 政府がまとめた新成長戦略では、地球環境の負荷を軽減する日本の技術の強みとして新 幹線を挙げ、アジアなどに積極的に輸出する戦略を打ち出している。にもかかわらず、国内の交通ビジョンのなかで同様の評価がなされていないのはどうしてか。 民主党の細野豪志幹事長代理は公約に記載しない理由を「特定の地域に限定した項目」 と説明したが、延伸を含めた新幹線の着実な整備は、歴史的にみても国全体の高速交通ネットワークを充実させる大きなテーマである。党内で新幹線を過小評価する考えが今もあるとすれば早急に改めてほしい。
◎角界の信頼回復 身内中心ではもはや無理
野球賭博問題で、日本相撲協会が文部科学省や警視庁から尻を叩かれ、右往左往してい
るさまは、この組織に統治能力や危機管理が備わっていないことを示したも同然である。野球賭博は暴力団が関与するケースが多く、資金源にもなっている。大関琴光喜に端を 発した問題は、親方や他の力士らにも及び、角界と暴力団との関係の広がりを印象づけている。賭け事の蔓延は、土俵の勝負さえもその対象になっているのではないかという疑念を抱かせる点で極めて深刻である。 過去の不祥事でも指摘されてきたことだが、この際、相撲協会は力士出身を中心とする 運営体制を抜本的に改め、外部役員を前面に立てて一から出直しを図る必要がある。土俵際まで追い詰められた協会の信頼を回復するには、身内の力ではもはや限界である。 暴力団関係者に口止め料として300万円を脅し取られた琴光喜の事件が象徴するよう に、野球賭博は組員との接触が生じやすい。弱みにつけ込まれると要求がエスカレートし、簡単に手玉に取られてしまう。角界は昔から賭け事に甘い土壌があるが、自分たちの常識がいつまでも世間の非常識であっていいはずがない。社会の物差しに照らし、悪しき体質や因習を改善していくのは当然である。 相撲協会は当初、賭博経験を自主申告すれば、厳重注意で済ます方針だった。仲間うち のマージャンや花札も含めて調べたが、範囲を広げすぎ、暴力団の関与が疑われる野球賭博に特別の危機感を抱く様子はなかった。自主申告で幕引きが図れると思っていたとすれば認識が甘すぎる。具体名の公表を避けたことで、報道で実名が次々に明らかになり、その都度、対応に追われるお粗末さである。 特別席の入場券が暴力団に渡っていた問題では、処分された親方が暴力団と交際してい た事実を認めた。暴力団追放が社会的なテーマにもかかわらず、角界が関係を断ち切れないようでは公の組織とはいえない。文部科学省は問題解明を外部調査チームに委ねたが、これを機に協会の運営そのものを外部の力で変えねばならない。
|