憲法9条への思いが込められた、井上さんの代表作「吉里吉里人」が朗読された=19日午後2時56分、東京都千代田区
発足から6年を超えた「九条の会」の講演会が19日、東京都千代田区の日比谷公会堂でひらかれた。呼びかけ人の一人で4月に亡くなった作家井上ひさしさんの志を受け継ごうと集まった聴衆で、公会堂は満席になった。
作家の大江健三郎さんと憲法学者の奥平康弘さんの講演に続き、井上さんの妻ユリさんが登場した。「井上は、言葉を道具に働く作家として、どうしたら憲法9条を多くの人に伝えられるか苦心してきました」。その思いが込められている作品として、代表作「吉里吉里人」の一節が、スポットライトを浴びた秋田市在住の演出家、佐藤修三さんによって朗読された。
《軍備の『ぐ』の字(づ)も無し(なす)で国ば作(つぐ)ってみせ(しぇ)る。軍備抜ぎで、小さ(ちゃっこ)いながらも一個の国家ば持ち(づ)こだえてみせ(しぇ)る》
2004年の発足から小田実、加藤周一、井上ひさしという3人の呼びかけ人が他界した。作家の澤地久枝さんは「3人の人生を引き継いで意味のあるものにするのが、生きている者に課せられた役割だ」と語った。