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補償決まらず焦り 10〜20キロ圏内の対象農家
(2010年5月30日付)
「今年は子牛の相場が上がってきて経営も順調だったのに…。口蹄疫で駄目になりました。6人の従業員の中には畜産のベテランもいて、子牛の体調管理や餌の配合の仕方などを、素人だった自分に熱心に教えてくれた。経営が厳しくなっても、従業員を辞めさせるわけにはいかない」
農場は、福岡市の派遣会社が異業種参入で2009年4月に設立。加藤さんは川南町出身で、派遣会社の宮崎営業所に勤務していた。農業経験はなかったが、畜産を営む妻の実家を手伝った経験があり、農場管理を任されることに。その後、後継者のいなかった大規模農家から施設と牛を買い上げ、飼育頭数は170頭まで増えた。
「感染を広げないという国の方針は仕方ないと思います。ただ、早期出荷したとしても、補償額がいくらになるのか分からない。飼料だけでも月70万円掛かるし、早く出荷したいのに、食肉処理場は閉鎖されている。一方で、今でも子牛が生まれている。自分たちの雇用が気になるはずなのに、従業員は今まで通り熱心に働いてくれています」
100頭いる雌牛をすべて出荷してしまえば、再開しても次の子牛を本格的に出荷できるまで2年以上かかる。「まず雌牛を購入することから始めないといけない。これに1頭約37万円。その雌牛が子牛を生むまでに15カ月。生まれた子牛を出荷するまでさらに10カ月掛かり、30万から35万円の経費がかかる。この間の収入はゼロです」
先行きが見えない毎日に焦りだけが膨らむ。「高齢農家の中には『潮時だ』とこれを機会に廃業する人もいるが、自分のように若い農家はもう一度頑張りたいと思っています。でも、国の補償の中身が分からず、何もできません。早く事業を再開してやり直したいのに。子牛を出荷できるようになるまでの餌代や、従業員の給料まで補償してくれるのか。どうすれば自分たちの思いを国に届けられるのか」
【写真】昨年12月に出荷された5頭の子牛。「別れはつらかったが、この牛たちは家畜としてまっとうな最後を迎えることができる。これからは生まれて1カ月で食肉処理される子牛も出てくる。こんな結果になって悲しい」(加藤さんのブログより転載)