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「家族同然なのに…」 ワクチン接種納得できず
(2010年5月29日付)
西都市の和牛繁殖農家の50代男性は、28日までワクチン接種を拒んでいる農家の一人だ。対象農家でほぼ接種が完了する中、気持ちの片隅にその覚悟はある。ただ、何の説明もなく突然、家族同然の牛がその後に殺処分される無念さ―。それをまだ受け入れられない。その思いを伝えたくて、25日、本紙に電話を入れた。県の28日の発表によると、27日までに1006戸12万4877頭で接種を終了し、拒否している農家は12戸508頭となった。
翌25日、今度は個人的に知っている橋田和実市長から電話があった。
「市長が『どんげな感じですか』と遠回しに聞くので、『なんで私たちが犠牲に。家族同然の牛が殺されるのはたまらないことです』と。野菜だったら来年があるけど、牛は何十年もやって築き上げたもんですから」
35歳の時に父親を亡くし、70代の母と2人で今の母牛19頭、子牛10頭の規模にまで拡大させた。「ここ2カ月は収入がありません。糖尿病を20年以上患っていて、本当は透析も受けんといかん数値です。母は落胆しながらも『殺処分は仕方ない。それより自分の体を心配して』と言ってくれます。牛飼いを再開するために、十分な補償がないと病院代も出ないでしょう」
市から26、27日は連絡がなく、28日午後に橋田市長と市の幹部が直接訪ねてきた。それでも首を縦には振らなかった。27日には、それまで拒否していた近所の農家がワクチン接種に応じた。
「悪いことはしていなくても、自分が迷惑を掛けていることは十分分かっているし、このまま自分だけが免れんことも分かっていますが…」。ワクチン接種の時は刻一刻と近づいている。
【写真】牛舎にいる生まれて間もない子牛。「呼べば寄ってくるんですよ」(28日に男性が携帯電話で撮影)