「残念」「仕方ない」 49頭処分に農家ら落胆

(2010年5月29日付)

 願いむなしく―。県家畜改良事業団(高鍋町)の種雄牛49頭のうち1頭に口蹄疫の症状が確認され、全頭殺処分が確実となった28日、県内の畜産関係者からは落胆とあきらめが入り交じった沈痛な思いが広がった。

 49頭の救済を求める署名に加わった山田町和牛生産部会の百原幸雄部会長(63)=都城市山田町=は「農家としては感染していない牛だけでもという気持ちはあるが、処分は仕方ない。本当に残念で生産農家も打撃を受けている」と力を落とす。

 再起を目指す農家の落胆も大きい。飼育していた約80頭が殺処分された繁殖農家江藤宗武さん(36)=川南町平田=は「本心では殺してほしくないし、農家の心情も顧みずにすぐに殺せという国に腹も立つ。それでも、感染してしまった以上、殺処分は仕方ない」と複雑な心境。「県外の肥育農家からは2、3年は宮崎に来ないという話も耳にした。これで種牛5頭がいなくなればもう立ち直れない」とぬぐえぬ不安を口にした。

 宮崎市佐土原町の家畜人工授精師堀川竜さん(66)は「将来に期待できる牛ばかりだった。国や県がもっと早急に手を打っていればと悔やまれて仕方がない。種雄牛は狙ってつくれるものではなく、残る5頭は宮崎の畜産の生命線。どんなことをしても守ってほしい」と話した。

【写真】県議会の全員協議会で種雄牛49頭を殺処分することを明らかにした東国原知事=28日午後1時15分、県庁・議会棟